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空想物語  作者: さきら響
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8.5話ー泡沫の夢ー

ここは…?夢?


光のない海を漂うように、奏の意識は安定していない。


あたしは…なんでこんなところに…?


何してるんだろう、戻らなきゃ…。


戻るってどこへ?


誰のところへ?


あれ…?誰のところへ戻るんだっけ…?


急に目の前が光に包まれて、風景が浮かんだ。


そこは、来たことのない広い草原だった。


奏は、今までに着たことのない真っ白なノースリーブのワンピースを着て裸足で立っていた。


その手には、


「…フルート?」


そりゃあ、吹奏楽をやっていたし楽器ももちろん自分の物がある。


よく見ると、それは見間違うはずもなく、自分のフルートだった。


「どうしてここに…?」


あぁ、でも久しぶりだな。


部活を引退してからというもの、楽器にさえ手をつけていない。


メンテナンスだって怠っていた。


音出るかなぁ。


そっと口を当て、息を吹き込んでみる。


気持ちいいほど綺麗に出たその音は、草原に吸い込まれていくようだった。


あぁ、思い出した。


部活をしていた時に憧れの場所を話していた時があった。


ここは、あたしが憧れた場所だ…。


広い草原に蒼い空。


心地よく吹く風に真っ白なワンピースを着て、風に靡かせてそこで吹けたら幸せだなぁ。


凄い、夢だけど憧れた場所にいる…。


ここで吹きたかった曲がある。


『ケルト民謡による組曲第2楽章』の冒頭。


ソロは逃したけど、大好きで思い出のある曲。


構えて息を吹き込む。


曲は何百回と練習した。


何百回と曲を聞いた。


そのおかげか、指と呼吸と体が覚えている。


一通り吹き終えて、楽器を口から離す。


1人だけどすごく楽しい。


「…楽しい?」


後ろから聞きなれた声がした。


そこには、慧が真っ白なスーツに身を包んで立っていた。


手には、バラの花束を持っている。


「いつ聞いても綺麗な音だね。惚れ惚れするよ」


そう言いながら、奏に花束を渡した。


やだなぁ、やめてよ。


そんなの思ってもないクセに。


「思ってるよ。…綺麗だ」


ありがとう…。嬉しい。


「また聞かせてよ…。現実の世界でも…」


え…?


そこで奏の夢は途絶えた。

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