表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の裏側  作者: 鯉々結び
探偵さん篇
18/30

第十六章-あるあっけない一段落

「じゃあ、冴島、私たちちょっと行ってくるから。」


あざみはそう言う。ある団体、真犯人とでも呼ぶべきそれを見つけたのだろうか。


「ああ、気を付けて。何度も言うようだが、そちらは生け捕りだ。コトハはそう言っていたからね。理由は知らないが。」

「大丈夫、私たちならよゆー。」


そう言ってあざみと鱗花は私たちから背を向ける。そういえば、今のあざみには翼が無い。収納可能なのは知っていたがどういう原理なのだろう。そして、翼があれば飛べるのだろうか。そんなことを考えていると、あざみの笑い声が聞こえる。それに呼応するように彼女の背中、肩甲骨のあたりが白く輝く。


「別に飛ぶための羽じゃないんだけど、ね。私が飛ぶためには必要なんだけど。じゃーねー。」

「いってらっしゃい。」


冴島警部がそう言って見送る。

そして、彼女は自らの手を前に突き出し…そこから、黒い何かが現れた。


黒い何か、それはすぐに人のサイズよりも大きくなった。


「そー言えば探偵さん、認識が甘いよ?魔術は、何でもできるんだって。私の得意なのは…まあ、瞬間移動みたいなの。」


そう言い残して、彼女らはその中に足を踏み入れていく。二人が入り切った直後、その黒い何かは跡形もなく消えてしまった。彼女らと共に。


「冴島警部…今のは?」

「まあ、空間転移と言ったところかな?いつも使っているのとは違うようだったが、視覚的にわかりやすくするためだろう。なかなかあざみに好かれているようで何より。」


冴島警部は何でもないことのように言ってくる。普段から見ているからだろう。


空間転移、魔術としてはよくある物のように聞こえる。しかし、それは私の思っていたものとは大きく違っていた。私は魔術を「ちょっと便利な身体強化」ぐらいに思っていた。その認識をあざみは覗いていたのだろう。


魔術は、何でもできる


その言葉が急に恐ろしくなってくる。

私の認識が甘かったのは確かだ。認めざるを得ない。それは犯人が手を触れずに物を動かしていた時点で分かっていたことではあるが…

しかし…何でもとはどういう事なのだろう。


考えたくはない、が知っておきたい。

私は冴島警部に尋ねる。


「冴島警部、あなたはどんな魔術を?」

「ん?ああ、そういうことか。魔術は何でもできるってところに引っかかったということだね。何でもできる、とは理論上の話だ。人には得手不得手がある。例えば第四位のあざみでも大まかに二種類の魔術しか実践レベルで使うことができない。一つは今の空間転移。これはコトハが教えたものらしいが、それをあの子は神格を受け取るまでに磨いた。もう一つは…まあこれは言わない方が良いのか。こんな感じにね。私に至っては結界を張ること。それしかできない。」


なるほど、万能というわけではないのか。一人で、何でもできるわけではない。

しかし、それよりも気になることがある。シンカクとはなんだ?


「少し待ってください。…シンカクとは何でしょう?」

「神の格、と書いて神格。意味は言葉の通り、魔術を極めたものが持つ称号みたいなものと思ってもらっていい。彼ら四人のうち三人は神格を持っている。…そして敬語は要らないよ?私も敬語は苦手でね。それにコトハに敬語を使わないのならコトハよりも下の私に使う必要はないと思うのだが。」

「ああ、はい、注意します。」


そう答え、そしてその回答に驚く。彼らは神と同格ということなのだろうか。少なくともただの人だと思っていた私の認識はここでも甘かったということか。


私の表情があからさまに曇ったのだろうか。冴島さんは真剣な顔でいう。


「少なくとも、彼ら四人は子供だと思うよ。ただの人間でね。私の意見だが。だからあなた、探偵さんにもそう考えてほしいものだ。」

「そうですね。少なくともあの子たちはただの子供に見える。いくら魔術が使えたとしてもね。」

「そう思ってもらえてたなんて嬉しいな。少なくとも魔術が使えたとしても人のまま。そういう意識はずっと持ておいてほしいよ。」


コトハ、彼がいつの間にか私の横にいた。というか、さっきまでの戦闘はどうなった?


彼をよく見るとすぐそばに先ほどの男が転がっている。鎖で巻かれて身動きができない状況だ。

またも、魔術なのだろう。これを見ても驚かなくなている。すると冴島警部は彼に問う。


「結局、教育の余地なし、という事か?」

「うん、そうだね。うるさかったから黙らせといた。そんでもって、向こうも大詰めみたいだよ。」

「そろそろ、なんで生け捕りなのか、教えてもらおうか。」

「簡単な話、そっちの方が僕の得になるから。たぶんあの中には面白い人物がいる。」


先ほどのことを聞いているのだろう。真犯人を生け捕りにする意味。確かにわざわざそれを言わなければならないほど今までに人を殺したのなら、真犯人を生かす意味とは何なのだろう。情報を引き出すためだろうか。


そして、彼らの手にかかっていとも簡単に事件が解決してしまったことも私の頭を悩ませる。私が今までにやってきたことは何だったのだろう、そんなことを考えてしまう。すると…



「まだ事件は終わってないよ。動機、それがまだ解決していない。まあ大体は予想つくけど。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ