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第零章-ある探偵の後悔
私、五十嵐吾郎52歳はこの年になって知ってはいけないことを知ってしまったのかもしれない。
いや、かもしれないとは曖昧な表現だが、自分の踏み込んでしまった領域にまだ思考が追い付いていないのだ。
そこまで考えられる時点で頭はまだ回っているのだが、どうしてもその先を考えることができない。
どうすればよかったのだろうか。どこで間違えてしまったのだろうか。
過去ばかりを、振り返ってしまう。
もし過去に戻れるなら、分岐点に戻り正しい選択をしたい。
もちろん過去になんて戻れないし、人生にやり直しなんてきかないことはよくわかっている。
いや、そうじゃない。自分の思考が嫌になる。
あんなことを目の当たりにして、よく過去に戻れないといったものだ。
今までの常識が頭から離れない。私の分岐点にあったものは、非常識の塊だったと言うのに。
私は思考する。
この先どう生きていくかを考えなければならない。
いったん状況の整理から始めよう。
私の転落物語の始まりは、死体の腐臭が漂う、平凡な初夏のことだった。
更新速度は早くないです。気軽に、暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。