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半人前の工廠

少女からの修理依頼の連絡は、運悪く少年が一番知られたくない人物の耳に入ってしまった。


何時もは滅多にいない工房の更衣室に、少年の父が偶然居合わせたのだ。


「しかし、またこんなすぐに壊れるとは思ってなかったぞ」


工房の親方である父に、少年は説教を受けていた。


「けどよ、ナットからモーターのシリンダーまで全部新品に変えたんだぜ」


いかにも自分が正しいという風に、少年は言葉を述べる。


「ナットを新品に変えたのはわかる。だが、新品のシリンダーを使えなどと俺は言ったか?」


父のその質問に答えるために、少年は急いでその答えを思い出そうとする。


「え、でも親父が俺に新品のシリンダーを持たせてくれたんじゃんか。ならそれを修理に使えってことでしょ」


少年が仕事をまだ完璧に覚えていないことは、焦って何かを思い出そうとするその表情からも伺える。


「すぐ人のせいにするんじゃない。いつになったらお前はその癖が治るんだ?」


父がそう少年に怒鳴ると、工房の中が幾分静かになる。


「まあ親方、これから他の依頼先に出向かなければならないですから。その辺になさって、仕度をしてください」


見かねた工房の職人の1人が父にそう告げて、さりげなく少年のフォローに入る。


「もうそんな時間か。お前に何時までも構っている暇はない。アドレア、その仕事ちゃんと昼までに片付けておけよ」


少年、アドレアは目配せでその職人にお礼を述べると、モーターの基本要項をメモした手帳を読み直し始めた。


(人のせいにしては前にはいけない。それはわかってるさ…)


工房の親方の息子として生まれ、将来を期待されているものの、要領が悪く細かなミスばかりするアドレアは今日も黙って歯を食いしばる。


「若、シリンダーは内容されたカーボンが薄利している中古のものの方が、モーターによく馴染みます」


他の職人の1人がアドレアにそう答えを促すと、遠くから「そいつを甘やかすんじゃない」と父が怒鳴る声が聞こえる。


「ありがとう、サージ。親父め、今に見てろよ」


アレアレアはそう言いながら工具を手にし、着ているシャツの裾を正した。


「さて、あのじゃじゃ馬娘の所まで出かけるとするか」

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