7月31日
氷の入ったオレンジジュースを飲みながら、ぼく達はしゃべったりしながら退屈な日曜日を過ごしていた。
その頃、ぼく達は暇になると、3人の家の誰かの家に集まった。
集まっては、他愛もない話をして過ごした。
その話の他愛のなさと言ったら、本当に、高校の休み時間に、後ろの席の友達とするような、そんな類いの他愛のなさだった。
「何見てんの?」
さっきから、話に入って来ない彼女に気がついて、ちえちゃんが聞いた。
「雲。結構、大きい雲だったんだけど…。」彼女は窓の外を指差した。
「少しずつ、小さくなって…ほら!無くなった。今から快晴だ。」
彼女はまるで、それが自分の手柄のように言った。
ぼくらはしばらく窓から外を見た。
こんな風に空なんか見たの、どれくらいぶりだろう…と、ぼくは考えた。
「あの鳥、雰囲気いいね。」
ちえちゃんの言葉につられてみると、羽根を広げたまま、ゆっくり飛んでいる鳥がいる。確かにいい感じだった。
ぼくはなんだか、すごく穏やかな気持ちになった。
天気のいい日曜の午後、氷の入ったオレンジジュースを飲みながら空を眺める。
きっと老人は縁側で、こういう気分を味わっているのだろうと、しみじみ思ったりした。
「鳥ってさ、」ぼくの平和を打ち壊すように彼女は言った。「私達から見れば空にいるみたいに見えるけど、鳥が上を見ると、きっと上に空があるんだよね。空って、どこにあるんだろ。」
ぼくは空を見るのをやめて、彼女を見た。
哲学的なことを言っているのか、見たままを素直に言っているのか、時々彼女は解らない。
彼女は、空を見たまま呟いた。
「消えた雲は、どこへいったんだろ。」
そんな風に、ぼくらの毎日は過ぎて行った。




