【ゆいこのトライアングルレッスン】〜卒業式〜
無事に就職活動を終えた私、ゆいこは、この春、大学を卒業する。
照れ隠しで「別に来なくてもいいよー」と言ったけれど、子どもの頃、塾に迎えに来てくれたように父兄に混じって、たくみと、ひろしは卒業式に来てくれた。
本当は二人に晴れ姿を見せたい気持ちもあったからパイプ椅子に並んで座る姿を見かけたときは泣くほど嬉しかった。
卒業式が終わり、友達同士が集まって写真を撮っている。
たくみは私を見つけ、駆け寄ると珍しそうにしげしげと眺めてから「卒業おめでとう!しかし馬子にも衣装って感じだな」と意地悪に言ってくる。
「何よもう!せっかく、たくみが好きそうな色の生地を選んでレンタルしたのに!可愛いって言ってくれないの?」
「へーへーかわいい、かわいいよ、特にその花の柄が」
「ふふっそうでしょう?この白ツツジ可愛いよねぇ、私のセンスもなかなかのものじゃない?」と自慢げにくるくると着物をたくみに見せびらかす。
「なんか子どもみたいだな」と笑われてしまう。
すると遅れてひろしも近づいてくる。「おい、たくみ、失礼だぞ」
「悪い悪い、あまりにもガキっぽかったからよ」
「ゆいこ、卒業おめでとう。似合ってる」
「ありがとう。卒業できたのも勉強を教えてくれた、ひろしのおかげだね、また3人でどこかに行きたいなぁ、どこがいいかな、ねっ卒業旅行とか行っちゃう?」
ゆいことたくみとの会話を思い出して、ゆいこの言葉が頭に入ってこない。
(聞き間違えでなければ、ゆいこは、たくみの好きな色の着物を選んだと言っていた。ゆいこはたくみのことが好き、なのだろうか。)
ふと初めて自分の気持ちに気づき、もやもやとしてしまう。
(今、いっそのこと伝えてしまおうか、いや、まだこの淡い想いは内に秘めておくべきか…)
「ねー聞いてる?おーい、ひろし?」
いつまでも返事をしない俺に怪訝な表情でゆいこは、尋ねてくる。
「社会人でも勉強は必要だからな、いつでも教えてやるよ」
もっともらしいことを言って自分の気持ちに蓋をした。




