能力の代償は喫煙時の記憶だった 〜完璧な未来のために、私は思い出を灰にする〜
※本作品を読み進める前に必ずご確認ください
本作品はフィクションであり、実在の人物、団体、場所、および現行の法律等とは一切関係ありません。
作中において喫煙や特定の物質(大麻等)の使用に関する描写が含まれますが、これらはキャラクターの造形および物語の演出を目的としたものであり、現実世界における薬物使用や喫煙、法に触れる行為を助長・推奨する意図は一切ございません。
日本国内において大麻の所持・譲受・栽培等は法律で厳しく禁じられています。
また、喫煙は健康を損なう恐れがあり、ニコチンには強い依存性があります。
読者の皆様におかれましては、本作品をあくまでエンターテインメントとしてお楽しみいただき、現実の法規範および健康管理を遵守していただきますようお願い申し上げます。
まだ微睡の重みが瞼に張り付いたまま、男は手探りで枕元の箱を引き寄せた。
カーテンの隙間から差し込む冷ややかな光が、舞い上がる埃を白く照らしている。カチリ、と硬質な音を立てて灯った火が、意識の端を鋭く突き刺した。
肺の奥深くまで、一気に熱い塊を流し込む。
それは、眠りという死に近い静寂から、無理やり現実へと引きずり戻させるための儀式だ。肺胞を焦がすような乾いた刺激と、脳を直撃する強烈な一撃が瞳をこじ開ける。
吐き出した煙は重たく、淀んだ空気の中で白く渦を巻く。その一吹きのたびに、霧がかかっていた思考の輪郭が、少しずつ、だが確実に研ぎ澄まされていく。舌の付け根に残る渋みと、喉を通り過ぎる確かな重力感。それが、今日という一日が始まったことを身体の芯に刻みつける。
「……ふう」
短く息を吐くと、指先に残るわずかな震えが止まった。視界が急速に鮮明さを増し、冷え切った部屋の空気が肺の中で熱に変わる。
吸い殻を押し付け、立ち上がる。
口の中に残る、焦げたような苦い余韻。それが、戦場のような日常へと踏み出すための、男にとっての唯一の武装だった。
昼休みの後のラストスパートをかけるために喫煙所で同僚達とタバコを吸っていた時に気になることを言われた、
「この前言っていた件がやっぱりバラしになったんだって」
周りの同僚もあーあの件かという顔をしていた、喫煙している時の集中状態で聞いた会話はそうそう忘れるはずもないのにと俺は疑問に思った、恥を忍んで尋ねてみたら去年から上がっていた案件がまとまらずにまた何人か契約が終わる人が出るみたいだ
昼での会話を気にかけつつ業務を終了して自宅に帰って換気扇の下でいつもの一服をする、今日の疲れやストレスも吐き出すように紫煙を吐き出し、煙が換気扇に吸われていく、高速道路で加速するような感覚と共に換気扇の音が鮮明に聞こえてくる、記憶を思い返してみるとある期間から記憶が虫食いになっていることに気がついた、具体的には初めて喫煙した中学生の卒業式の日、あの時なぜ吸ったのか思い出せない、大学に入ってから成人式の日に飲み会する前にコンビニに寄って酒とライターを買ったのは思い出せるのだがタバコの銘柄を思い出せない、今吸っているのと同じだっただろうか、そうして思い返してみるとここ最近までの喫煙時の記憶だけが煙にかかったように思い出し辛くなっていることに気づいた、喫煙時に過集中になるため脳がオーバーヒートして喫煙時の記憶の処理がなされているようだ
幸か不幸か、世界的にウィルスが蔓延して世間の目を気にする当社も在宅ワークに切り替えになった、喫煙所での件もあり会話のボロが出ないようにとの不安から業務中に吸うタバコの量も増えた、起床時に目覚めの一本、朝の会議の前に一本、作業時に一本、一息ついたら一本、業務終了時に一本、過集中状態のまま風呂に入りアイデアが湧くとパソコンに書き留め、一息つくために一本、そんなことをしていれば睡眠時間が削れていくのは明白で在宅ワークなのに寝坊をすることが多くなってきた、しかし、成果を出して残業もしていないため上司も同僚も何も言ってこない。
そんな生活がいつまでも続くはずもなく、世間がウイルスについて騒がなくなるとフレックスタイムを導入し当社もまた出社するようになった、きちんと起床時間に起きれるか不安だったが杞憂だった、重い身体を無理矢理動かして目覚めの一本を吸い、脳を無理くり覚醒させて行く、つい最近のプロジェクトの概要が記号のシャワーのように身体から滑り落ちる、必死に忘れないようにしても後から後から手のひらに砂を盛るように指先から記憶が漏れていく、俺はその朝に禁煙を決意した
禁煙は地獄だった、肺はピンク色に戻り、朝の目覚めは羽のように軽い、作業スピードは遅く、残業が増えたために貯金も増えた。だが、脳は常に沸騰していた、タバコを吸っている時の記憶がないのに喫煙所の場所と好みの銘柄だけは覚えている、ふとした時に匂いを明確に思い出す、そんな時は決まってストレスが溜まった時だ、かつてタバコを吸えば数分で片付いた作業が、今は八時間かけても終わらない。ついに苛立ちは暴力に形を変え、むしゃくしゃした俺はオフィスのゴミ箱を蹴り飛ばした。
重厚な和太鼓でも叩いたような、場違いに乾いた音がオフィスに響いた。
蹴り飛ばされたプラスチックのゴミ箱は、中身をぶちまける勢いすらなく、情けなく数回転して横倒しになった。
――ただ、それだけだった。
静止したゴミ箱を、同僚たちが息を呑んで見つめている。
そんな俺の肩に上司の手が置かれた
「お前もう休め」
車両を切り離すような瞳で優しくそう告げられた
俺はそんな日本から逃げ出そうとしたかったのかもしれない、もしくは高く遥かな宙に近づけばいるかもしれない神様に祈りが届くかもと一縷の望みをかけたのか
タイ北部、チェンライの夜明け前。
俺は大枚を叩いて、一機の熱気球をプライベート・チャーターした。パイロットには厚い札束を握らせ、高度の限界に挑むよう命じてある。
バーナーが咆哮を上げ、バスケットは雲海を突き抜けた。
下界にはチェンライの山々が、まるで眠れる龍の背中のように連なっている。さらに高度を上げると、空の青は濃度を増し、ついには宇宙の入り口である「漆黒」へと変貌した。
氷点下の冷気が肺を刺す。俺はポケットから、鈍い銀色に光るヴェポライザーを取り出した。
中に入っているのは、2022年、解禁直後のバンコクで手に入れた「究極の緑」だ。
ボタンを押し、加熱を待つ。
紫色のLEDが静かに明滅する。それはまるで、俺の脳内に眠る「過集中」の回路が再起動する合図のようだった。
吸い口を咥え、深く、長く吸い込む。
シュウ、という電子的な吸気音。
火は使わない。爆発の危険もない。ただ、純粋な成分だけが肺胞を通じて、宇宙へと繋がる神経網に直接書き込まれていく。
吐き出した白いミストが、成層圏の無風状態の中で、曼荼羅のような幾何学模様を描いた。
禁煙で濁っていた視界が、一瞬で4K、8Kの解像度を超えていく。
宙を見上げると星々の輝きが遠くなったり近くなったりするような、新幹線の車内で速度を感じるような感覚と共に宇宙の真理を感じ取った
「僕は宇宙で宇宙は僕なの、そうなの、理解したの」
眼下のタイの国境線が消え、地球という巨大なサーバーのソースコードが、星々の輝きとなって網膜に投影されたの。
「宇宙の平穏」と一体になると全ての記憶も思い出の匂いも味も昨日のように鮮明に思い出すことができるの、もう誰も僕を止めることは出来ないの!
北の大地。メイプルリーフが舞う、カナダなの。
ここでは、僕が吸い出す「究極の緑」から出る白い煙を、誰も「悪」とは呼ばないし呼ばせないの。
今僕はトロントの高級コンドミニアムにいるの。
窓の外にはオンタリオ湖。
左手には、かつての残業代など端金に思えるほどの資産。
右手には、法に守られ、太陽の光を浴びて育った最高級の「雌花」。
禁煙して血走っていたあの頃の僕はもういないの。
今の僕は、かつての過集中を遥かに凌駕する「宇宙の平穏」の中にいるの。
そうなの
大枚叩いて、タイで大麻を巻いた話なの。
完璧な今があるのは思い出でハイになったからなの。
——めでたし、めでたしなの。
喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなり、心筋梗塞・脳卒中のリスクを高める要因にもなるの。
疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が、非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなるの。
喫煙は、周りの人の健康にも悪影響を及ぼすの。肺がん、脳卒中、虚血性心疾患、呼吸器疾患、それに乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを高めるの。
未成年者の喫煙は、健康に対する悪影響やたばこへの依存をより強めるの。周りの人から勧められても、決して吸ってはいけないの。
妊娠中の喫煙は、胎児の発育不全や早産のリスクを高めるの。
ニコチンには依存性があるの。
大麻は、脳に悪影響を及ぼし、学習能力を低下させるの。
大麻の使用は、記憶障害や幻覚、妄想といった精神症状を引き起こす恐れがあるの。
たった一度の使用でも、薬物乱用になるの。自分自身の未来を、一瞬で壊してしまうの。
大麻には依存性があるの。一度使い始めると、自分の意志ではやめられなくなるの。
大麻の所持や譲り渡しは、法律で厳しく罰せられるの。
誘われても、はっきりと断る勇気を持ってほしいの。
鳥の餌に含まれている麻の実は、発芽しないように熱処理されているの。
発芽能力がある麻の実は、栽培に使用される恐れがあるから、輸入や所持が厳しく制限されているの。
勝手に植えたり育てたりすることは、大麻取締法で固く禁じられているの。
もし発芽するものを見つけても、決して育ててはいけないの。
許可なく栽培することは、重い罰則の対象になるの。
知らなかったでは済まされないの。だから、気をつけてほしいの。
大麻も煙草も百害あって一理無しなの。




