オーパーツを持込む
世界設定を行う際、まずもって困るのが文明レベル。
この辺いい加減にすると様々な破綻が生まれてしまいます。
例えばうっかりビニール製品を登場させてしまったとしましょう。
これが作られるには、石油とその精製技術、そして当たり前に使うにはそれなりの工業力が必要になります。
これはもういわゆるオーパーツという奴でよく見ればこれが無いとあれが無いとおかしい、といった連鎖破綻を生み出す代物になってしまいます
では、その予防作はどうか?
まずは、モデルになる世界の時代、区域をある程度決めておく事がやはり基本的な話になります。
前述した「時代劇時代」もそうですが、一般的なのはご存知「ナーロッパ」世界。
あれは中世ヨーロッパを(いうても範囲広いですが)ゲームや作劇に合うようにもろもろカスタムされたものです。
つまり、その空気感を大事にしたければ、その辺の資料を持って来ればいいんですね。
他でもこのやり方は使えます。
例えば、SFの出発点は西部劇のパロだったという話や「スターウォーズ」は「隠し砦の三悪人」のオマージュという話があります。
「銀河英雄伝説」では18世紀くらいの貴族社会の中のナポレオンのような英雄がアメリカ軍みたいな国と孫子の兵法をもとに宇宙戦争をやっているw
星間国家ができた結果、治安レベルや社会秩序がなんやが昔に戻っていることにしているんですねぇ
歴史にヒントにすると、人間関係、文明レベルなどがリアルになっていきます。
なんか言われたら、その辺の資料調べれば良いわけですからねw
とはいえ、ここに囚われると、まんま歴史の再生になってしまいます。
魔法とか、魔王とか、物理法則や社会を捻じ曲げる存在もあるわけですしw
この辺から、どう自然にアレンジを加えるかが腕の見せ所となるわけです。
では、オーパツをどうやってもちこむか?
やはり、一番よく使うのは魔法。
魔法の力でビニール作ったことにすりゃ良いわけです。
便利ですなぁ、魔法
でも、この際気をつけてなければならないのは魔法の普及率です。
初歩の魔法でビニールが作れ、なおかつそのレベルの魔法使いが、街に一人くらいいた場合。
ビニールは売り物として売られ、普及し、ウミガメが間違って食べるの事が社会問題になってしまいますw
なんかイメージ変わりますよね?
この場合、魔法使いがそんなに居ないとか、術の代償か凄いとかそういう割に合わない理由をつけておかないと、おかしな事になります。
他の事を、魔法で解決した時も同様。
波及効果が意外な所に及び、気がついたら凄い矛盾が生じてしまう場合があるのでご注意下さい。
まぁ、開き直って、どんな社会になるのかを考えみるのもアリでしょうがw
私はそういうの好きですw
もう一つはなんかそんな世界法則や植物、鉱物がある事にする
たとえばビニーと呼ばれる植物の種子を包む膜がビニールにそっくりな材質にしてしまうという手。
これは他でも応用できます。
熱帯じゃなくても育つゴムの木やコショウの取れる植物を作っても良いし、なんだかジャガイモにそっくりな植物があっても別に良いわけです。
この上で、
「なんでジャガイモって名前なんだ」
と言われたら
「この植物は現地語で言うとコナミタサという芋なのですが、作劇上わかりにくいので「ジャガイモ」と書きました、英語のポテトを訳するようなものです」
とでも言っておけばオッケーw
まぁ、後付けでわざとらしくしなければなんとでもなると思います。
ただ、これもあまり安易にハードルを下げると世界観に影響が出ます。
ビニールの取れる植物を採取するのは危険とか、なかなか膜を生成しないとか、なんらかの希少性を持たせる必要があります。
特に石油など、文明レベルに大きな影響を与えるとのは安易に出さない方が賢明です。
ベースの歴史を調べて、これが文明に影響を与えるに至った経緯を参考にしてみてください
石油の場合はそれに伴う掘削技術や精製技術が必要で庭先に石油が沸いていても、ジェット機を飛ばすような事はできないとわかると思います。
なんとか警察の人はこう言う所をついてきますw
次に、古の言い伝え,もしくは偶然見つける方法
手塚治虫の「火の鳥」で苔で作った薬を与えるシーンがあります。
お薬に詳しい方ならピンときたと思いますが、実はこれ、今ではポピュラーなお薬、抗生物質の原始的な作り方なんですよね。
さすが、医師の資格をもつ手塚先生ならでわのやり方です。
さすがに先生の立場では、傷口に馬糞を塗るような治療は書けなかったとは思いますがw
ポイントととしては、
なんかわからんけど効果ある
という事。
基礎理論がわかってない状況では再現性が低いし、秘伝とかにしておけば普及もしませんw
最悪なんか矛盾が出てきたらそういう世界とすればオッケーw
「ターンエーガンダム」では、モビルスーツが古代兵器として登場します。
これもなんだかわからないものが動いていますよねw
当然複製できないがら他から探してくるしかないw
これならヒーロー性、特別感を出しながら世界観は壊せないという事になります。
ここで現代社会でも「再生産が難しい」
例を挙げておきます
玉鋼
刀剣の原料として使われる優秀な素材である玉鋼ですが、これは昔のタタラ製鉄でしか生み出せないものです。
数日側かけて鉄を溶かしていかないといけないらしく、おおよその基礎理論はわかっていますが採算が取れないのと、技術の継承がほぼ出来なくなっています。
戦前は工場の製鉄中になんらかな偶然で見つかる、なんて事もあったとか、鑑定するテレビ番組で昔の釘に高額な査定が付いた例があります
陸奥鉄
沈没した戦艦「陸奥」から引き揚げられた鉄材のことです。
これは、核兵器が使われる前に水中に沈んだことて現代の鉄と異なり放射性コバルト(コバルト60)を含んでいないため、放射線測定に必要な遮蔽材として利用されています。
さて、ここで閃いた人で
異世界に現代人が行き、科学知識で無双する話はどうだろう?
と思った人がいると思います。
良いですねえ、私も書いてみたいです。
でも、この手の話はツッコミをくらいやすく、逆に資料を読み漁る必要が出る事は申し上げておきます。
と、いうのも、この手のお話、あとで矛盾が発覚すると言い訳しづらいんですよw
下手するとプロットやお話のコンセプトそのものが崩壊する事態に陥ります。
一昔前の蘊蓄を語る漫画や、偏った思想の人が語る世界観で書いたお話が、見るに耐え無くなっているのもこれに当たります。
これならもう、「今学会で異端になってるなんとか説を大真面目に実現した世界」とか開き直った方が、コメディとして見れますよねw
映画「メンインブラック」はアメリカの都市伝説を全部宇宙人のせいにしてますし、同じ手法を拙著「ごっどぶれすゆー」でも使ってますw
なにしろ、物事はなんでも奥深く、次から次へと新説が出てきます。
価値観や政治的な意識も、結構あっさりひっくり返りますので、あらかじめ頭を柔らかくしておかないと作品自体が黒歴史化してしまう事があるので注意しましょう
また、工業製品一つ作るのにも恐ろしい数の技術と職人技の積み重ねがあるので、アイデアだけで解決させようとすると思わぬ所で足をすくわれる恐れがあります
缶詰を作るとしましょう。
原理はアイデアか偶然だけでどうにかなります。
ですが缶の生産はどうでしょう?
瓶で代用出来るでしょうか?
密封はどうするか?
それは大量に作れるのか?
コストはわりにあうのか?
何年か考えてますが、いまだに結論が出ませんw
おそらく本一冊程度の知識では、なんとか警察の人の良い餌になるでしょう。
警察側からするとそういうの見つけると嬉しくなるんですよw
必ず反証が可能かの検証を行なって下さい
では、これをエンタメで乗り切っている例を
まず有名なのが「宇宙戦艦ヤマト」
これはSF的にはかなり荒唐無稽な映像なのはその筋では有名な話ですw
これが許されているのは、「大和特攻」を題材にした太平洋戦争のパロディだからなんですね。
「艦これ」や「ウマ娘」にも同じ事が言えます。
元ネタに寄せるために、あらゆる不条理を無視していますw
これは、パロディ元の下調べとアレンジの仕方が全てなので許されていますが、ここでいっちょかみの知識でパロディをやると、別方向からナントカ警察の人に包囲され、細かいズレで袋叩きになる可能性があるのでご注意下さい。
むしろこれは、元ネタを売りにしている分強烈になってしまうので、なんとエンタメ成分を増す事で許してもらうという形を取る必要が出てきます。
さらに極端な例が、
小学生の考えた「さいきょうのおとこ」を劇画で描いてる「刃牙」シリーズ
よく読むと、小学生でも突っ込めそうな矛盾やおかしな物理法則の解説をしている「キン肉マン」シリーズ
「民明書房」という、ホラ吹き蘊蓄がもはや名物となっている「男塾」シリーズなどが挙げられます。
これはもう分かりやすくて、ようは
「どっちが強いか」
「どれだけ根性だしたか」
がエンタメ性の九割くらいの要素のため、細かい描写は、読んだそばから忘れてもお話が楽しめるからですw
これはこれで凄い。
と、いうか昔のお話はかなり大雑把なんですよねぇw
なんであんまり真面目に考察ぶち込むのも面白い話を書く上では邪魔になる、という事を書き添えておきたいと思います
こんな感じで、時には屁理屈をこね、時には勢いで押し切るという方法で、オーパーツを世界に持込む事が出来るというお話でした。
要はエンタメ性、次に整合性、この辺の初期設定やバランスが、悪いと凄く違和感が出てしまうという事になるでしょうか




