資料で遊ぼう!
今回は資料読むって面白いし、ヒントになるよ。というお話。
まず、一つ目。
自分のアイデアの問題点と、アレンジが必要な点が、わかる、という事。
歴史は長いので、どんなアホな事でも、大抵前例があります。
では、凄く優しい王様がいて借金を全部チャラにする命令を出すとしましょう。
そんな事例があるのか?
あります。室町時代に幕府が「徳政令」を出しました。
では、結果は?
借金か無くなって、民衆は救われました。
ですが、お金を貸していた側は破産を回避するため、権力者に賄賂を送ったり、徳政令を警戒して貸し渋りが起きたりと、とにかく徳政令がちゃんと行われませんでした。
要はあまりに無茶な話だったので、不利益を被る側は何だかんだと命令に従わなかったわけですね。
結果、幕府の権威は失墜し、これに不満を感じた民衆が暴動を行い、各地で独立勢力が生まれ、戦国時代に繋がる乱世の土台となってしまいました。
まぁ、王様が気軽に借金チャラにしたらとんでもない事になる、というお話。
似たような話は、禁酒法でもありました。
お酒を禁止した結果。誰も法律を守らなくなり、ギャングが潤い、治安が悪化するという現象も起こりました。
ソ連では、農地を作ろうと砂漠に水を引いた結果、巨大な湖が干上がり、同じくらいか面積の砂漠ができた、なんて話もあります。
このように、思いついたアイデアが歴史上どういう結果をもたらしたか調べてみれば、足りない技術は何で、どの辺をオーパーツで解決するのか、どのような問題点や波及効果が出るかがよくわかります。
また、結構実は史実通りの方が面白い。
という例もあります。
基本我々の知ってるお芝居や、時代劇はある程度エンタメ用に事実がねじ曲がっています。
これを一部でもあえて史実通りすると、マニアを唸らせつつ、結構なスパイスになります。
残念ながら絶筆になりましたがみなもと太郎氏「風雲児たち」はこの視点で、江戸時代から幕末をギャグマンガとして、描いてしまっています。
三谷幸喜氏もこれに刺激を受け、大河などはこれと同じ図式でかいています。
「真田丸」での話。
本能寺の変で大混乱になる信州で、のちにこの混乱で智謀を発揮して勢力拡大までした智将真田昌幸。
本能寺の変の第一報をうけ、散々思案を巡らせた上でこんなセリフ。
「まったくわからん!」
そうだよねw
もう、遠く離れた場所の情報、他の勢力がどれだけ情報を掴んでいて何をするかわからない。
そもそもこの情報が本当なのかすらわからん。
間違ってない。しかも面白い!
そして、この時、堺から危険地帯をわずかな人数で逃げなきゃ行けなかったのは徳川家康。
彼はこのドラマで半泣きになりながら野山を走っていますw
これもぐうの音も出ないw
家康三大危機なんて言われる出来事だし、爪を噛んだり、死にかけて脱糞したなんて逸話もある人が、取り乱した方がよほどリアルなわけで、これも面白い、しかもリアル。
事実は小説よりも奇なり
とは言いますが、調べてみたら、自分のキャラデザよりよほどキャラ立ってる人が多いんですよね。
なので、私は困ったら歴史上の人物をモデルにしています。
これで結構、深みがでますし、キャラ名がちがってても作者の心の中で「信長と義経がコンビを組んだら」
みたいなifシュミレーションをやりながら話を進めたりもできるわけです
また、「プラネテス」では殆どのSFが無視する物理法則をあえて書くことで、宇宙の過酷さを表現しています。
例えば、中世ヨーロッパで現代人が普通に100キロほど移動するだけでも、細かい違いに気づいたらすごい冒険になるかもしれません。
あと、歴史イフなどで良くありますが資料の隙間を探す。
といった遊びがあります。
資料には大雑把に言いますと
当事者が書いたものを一次資料、本人からの伝聞を、二次資料さらに又聞きが三次資料‥‥とまぁ資料の等級があります。
要はこれをあえて疑ってかかかる、という話。
これはファンタジーでも「伝説の真実」みたいな使い方で使えます
三次資料くらいになると、あった事もない人が、100年後に書いたものなので、もう全部嘘かもしれない。書いた時の価値がやら別の人の手柄がくっついていて実はそんな人いなかった、なんて話も良くあります。
甲陽軍鑑という本があります。
これは武田氏の歴史を描いた本なのですが、高坂弾正の証言をまとめた二次資料とされています。
で、どうなっているかというと、
高坂弾正が大活躍。
うーん、なんかお察しですなぁ
で、武田氏を滅ぼす事になった勝頼(というよりその近臣)はボロクソです。
悔しかったんでしょうなぁw
こんな感じで、割と描いた人や時代で、かなりフィルターがかかるので、この辺を引いたり足したりしないと真実は見えないわけです。
まぁ、本当のところはとうがは学者さんにお任せしてw
創作やる側としてはこの辺に創作や歴史イフが入る隙間やヒントがある、と考えるわけです
戦争体験の証言を見ているとわかると思いますが、特に昔は戦況全体を把握している兵士など殆どいません。
書かれた事が100%真実とは限らないわけです。
そんなの例をもう一つ。
本能寺の変の際の一次資料ははっきり言って混乱しまくっています。
足利義昭は「自分が指示した」と吹いた書状をばら撒いてますし、秀吉は「信長様を保護した」という撹乱情報を流しています。
本能寺に押し入った武士が「家康を倒す為だと思っていた」という手紙もあります。
ぶっちゃけ、明智光秀が正気だったかも怪しいものです。
この辺が議論が尽きない原因なのですが.エンタメとしてはここでイフをぶち込む楽しみがあります
また、お話の中で、大事件が起きた時、人々がどのような状態になるのか、非常に貴重なモデルにもなるわけです
この辺を応用すれば生々しい異世界が描写できるのではないでしょうか?
ではここで最後に頭の体操。
豊臣秀吉が朝鮮出兵の際、母親に宛てた手紙があり、学者さんが頭を痛めています。
そこには、「利休の茶などを飲み、私は元気にやっています」のような文面があるのですが、
ここで一つ問題が
この時期、もう千利休はその秀吉に切腹させられてこの世に居ないんです。
さて、あたなはこの資料をもとにどんな話を考えますか?
色々考えてみてください
一応、参考までに、わたしが実はこうだったんじゃ無いか?って考えた可能性を幾つか
一、秀吉が痴呆になっていた、あるいは北政所が痴呆になっていた
二、北政所(母)に利休を処刑した事を隠していた
三、利休は実は生きていた
四、この書状が偽書、記載、伝聞に誤りがある
可能性は、色々です。
どの説を取ると一番面白い話ができるか考えるだけで面白いですね。




