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精霊王の愛し子



平民の娘、アグネスが子を産んだ時

産婆は確かに見たという


黄金色にたゆたう豊かな髪と透き通るような水色の瞳を持つ

荘厳な佇まいの妖精を


妖精は産まれた子に向かって笑みを浮かべ

口付けを落とし、消えた


この話は、疲労困憊の産婆が見た白昼夢として片づけられたが

これが私の人生を狂わせた最初のトリガーなのだ






精霊王の寵愛ー遠慮させていただきますー









私はノエル。平民だから、ただのノエル。

今は男爵家の洗濯メイドとして働いている


幼い頃に母が流行病で亡くなり、その後は私を取り上げてくれた産婆のドリス婆ちゃんが面倒をみてくれていた。しかし、ドリス婆ちゃんももう良い年だ。ここまで育ててくれた恩を返すためにも、私はせっせと男爵家の山のような洗濯物を洗っている。


「ねぇ、ノエル。聞いた?お坊ちゃまの話」

「聞きたくないんだけど」

「なんでも、給仕メイドのアンが手を出されたそうよ。幸い、奥様に見つかって止められたそうだから未遂のようだけど、アンはクビになりそうなんだって」

「だから、聞きたくないってば」


おしゃべりな同僚に大きなため息を吐いて、ノエルは新しい石鹸を水に溶かしていった


ノエルの職場は領地の男爵家。先代が商いで家を大きくし爵位を賜った所謂「成り上がり」だ

現当主は素行も悪く商いの才もない

このままだとゆくゆくは取り潰しになるだろう、と誰もが囁いている


「あのクソ息子。去勢されてしまえばいいのに」

「口が悪いし、手を動かしてよ」


職場環境は良くない

けれど、このあたりで一番のお金持ちに代わりはないし

ここで働くのがノエルにとって一番の収入に繋がる


「今日は私、ドリス婆ちゃんの薬を買いに街に出るから、仕事残っても手伝えないからね」

「え!!そんな~~~!!」


自分の洗濯物を洗い終えると、私は大きな桶を持ち上げて移動した


特に、恵まれているという訳ではないけれど

不幸というほどでもない毎日


嫌な事もあるけど

楽しい事もある


嫌いな人もいるけど

親しい人もいる


私の日々は、そんな平々凡々としたものだ。


「きっと、この村のなかで終わる人生なんだろうな」


真っ青な空につぶやいて、少し胸がチクリとした





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