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はじまりの物語②


 ここ“オルサ”は、古代ローマに似ている。服装もそうだけど、街の中も石やレンガ造の建物が並び、まるで映画の撮影現場に迷いこんだみたい。まぁ、あながち間違ってはいない。実際、私は異世界に迷いこんだのだから……。

 そして、私たちは“オルサ”を化け物から守らなければならないらしい。自信はないし、街をどうやって守ればいいのか全くアイディアが思いつかない。


 オルサの人口は、約二万人。

 この街の一番の特徴は、アークトゥルスの襲撃に備えた要塞都市であるということ。街は厳重な三重の城塞に囲まれており、城壁内は身分によって住む場所が決められている。私と夏目が暮らすのは、おばあちゃんたち貴族と同じ最深部。そして、市民の生活の中心になっているのが二つ目の城壁部分。オルサの人々が生活の基盤であり、面積も最深部の十倍とかなり広い。真ん中には大きな広場があり、この広場を中心に沢山の店が並び、賑やかに人々が行きかっている。


 ――この街を守って欲しい。


 でも、どうやって? 何度言われても、どうしていいのか分からない。化け物と戦えと言われても平和な日本で生まれ育った私たちは、はっきり言って戦力外。ハードな宿題に連日追われ……運動らしい運動をしたのは、いつだろう? 思い出すことすらできない。剣を持ったところで、確実に殺される。数分で絶命するだろう……。


 ――さて、どうすればいい?


 打開策を見つけたきっかけは、ただの雑談からだった。「異世界といえば、魔法だよね。使えたら、簡単なのに」って笑って話して試しにやってみたら……魔法使えたんだよね、私たち。結構簡単に、すんなりと。


 さすが、『ステラ救世主・マリス


 私も魔法使えるから、『ステラ救世主・マリス』じゃん! なんかカッコいい名前が付いたなと思ったら、おばあちゃんが私を『ステラ・ルクス』と呼んだ。


 ……だから、おばあちゃん。

 顔で、決めているよね?


 私が童顔だから? 確かに、年よりも幼く見えるとは思う。地味に気にしているのに。身長は、百六十超えているのに「セーラは、小動物みたい」と言われる私って…… 一体、何が原因なの? 


 話が逸れたけど、魔法が使えるとなってからは、あっという間だった。どんな化け物だって、魔法があれば勝てるでしょ? と、私たちは魔法作りに没頭した。


 まず考えたのが、「木」「火」「土」「金」「水」の五つ。よく出てくる魔法要素だからと提案したら、あっけなく却下された。


「なんで?」

「高校一年の夏休み、僕たちは何をしていた?」


 忘れもしない高校一年の夏休み。私たちは、液状化現象に青春を捧げた。液状化現象とは、地震の振動によって地面が液状になってしまうこと。


「……そうね。この世界の地盤が、どうなっているのか、わからないもんね。うん、『土』はやめておこう」


 それで、シンプルに「火」「地」「風」「水」の四つの要素を魔法の基盤にすることに決めた。ちなみに、私たちがつくった要素の「地」は地面の"地"ではなく、地球の"地"である。「星魔法」ってこと。

 そうして、基本魔法が完成させると、今度は補助的魔法を次々と考えていく。

 

・牡羊座……明かり魔法。

 やっぱり明かりは、必要よね。簡単に明るくなるのは便利だし、暗闇なんて怖すぎる。この世界、全体的に暗いのよ! だって、電気がないんだから……夜でも明るい日本が恋しい。


・牡牛座……鑑定魔法。

 色々なものが魔法ですぐにわかるなんて、便利でしょう? ちょっと、夏目! 私を鑑定してどうするのよ?!


・双子座……魅了魔法。

 魅了って名前だけど『敵を魅了し従える』なんて、魔法ではない。これは、R18魔法。ねぇ、夏目。なんで、こんな魔法を作っているの? この魔法を、いつ使うつもりなの? 私たちが魔法を編み出している理由を、ちゃんと理解している? えぇ? 運命の相手に出会うかもしれない?? 本当……夏目は、どんな時も夏目だよね。


・蟹座……痛み緩和魔法。

 ……なんだろう? 魅力魔法のせいか、これもR18じゃないのかと疑いを抱いてしまうのは、私の発想がおかしいのかな? 「これは便利だよ」と夏目がゴリ押ししくるから、余計に疑わしく思ってしまう。はぁ〜〜。夏目のせいで、なんかおかしな方向に向かっている気がしてならない。夏目、やる気はあるの? ううん、そっちのやる気じゃないからっ!!



 ――軌道修正して、真面目に行くわよ!!



・獅子座……具現化魔法。

 化け物と戦うなら、剣とか防具とか作れた方がいいと思う。よし! 軌道修正は完璧! さすが、私!!


・乙女座……快適魔法。

 この世界に冷暖房がないのよ! 私、寒いが苦手だから、絶対使えるようになりたい。……え? 戦いに必要ない? 休戦だってあるでしょ? その時に、快適に過ごしたいと思うに決まっている!


・天秤座……肉体強化魔法。

 戦うなら、必要だよね。でもさ、本当に戦う? ……私、平和主義なんだけど。どうにか平和的に、解決できないかな?


・蠍座……回復魔法。

 これは、絶対必須魔法!! 迷わずに決めたわ!


・射手座……状態異常回復魔法。

 毒とかもあるかもしれないからね。


・山羊座……読解・翻訳魔法。

 文字が読めないと困るし、やっぱり平和的解決を諦めきれない! そのためには、会話が大事でしょ? ただ、化け物に会話という概念があればだけど……。


・水瓶座……魔力感知魔法。

 他の人にも魔法を教えてあげたい! それには、魔法を使うことができるのかを判断できないといけないからね。


・魚座……浄化魔法。

 簡単にキレイになるって、素晴らしいと思わない?


 星座を当てはめているのは夏目の趣味で、深い意味はない。ただ夏目がはまっている恋愛ゲーム『What’s your sign?(あなたの星座は、何ですか?)』からきている。番号の方が分かりやすいのにと思うけど……反対するのも面倒くさいから、何でもいい。


 科学の実験のような魔法の構築作業に私たちは夢中になり、四つの要素魔法と十二補助魔法を完成させるまでに要した日数は、わずか二週間だった。


 すごくない、私たち?



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