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第一回、作戦会議


「結婚の問題をどうにかしたい。私は、王子たちと結婚するつもりはないの。……どうしたら、回避できると思う?」


 もうこの問題を一人で、どうにかできる気がしない。今日のジェミナイの様子からも、夏目スマイルの限界を感じていた。さすがに、笑顔だけで逃げ切れるとは思えない。


 すがるような目で、二人を見つめた。


「お前な……」

 苛ついたように頭をかき、キャプリコーンはため息をつくように言った。


「お兄様全員とスコーピオが、エリースに結婚を申し込むつもりでいるって知っている?」

 リブラは呆れたように、質問を返してきた。


「だから、それをどうにかしたいのよっ!」

 一瞬、言葉に詰まったが、すぐに言い返す。


「どうにかって……全員と付き合っているんだろ? そのお前が、言うセリフか?」

「来るもの拒まず、毎日次から次へと……」


 私を抱きしめていたヴィーの手が強張ったのを感じ、すぐにヴィーの腕に手を置く。そして「待ってよ! それは、私じゃないから! 王子たちと一緒にいたのは、私じゃなくて”身代わりくん”!」と二人に投げつけるよう言った。


「知っているよ」

「私たちは知っているけど、お兄様もスコーピオも本物のエリースだと思っているってことよ。しかも、全員が真剣にエリースを愛している」


「だって、仕方ないじゃない! 誘いを断ったら、早送り機能が働くかもしれないんだから! 他に、どうすれば良かったの? 過ぎたことを言っても仕方ないんだから、気持ちを切り替えないと。大事なのは、未来だよ! これから、どうすればいいと思う? お願いだから、助けてよぉ」


「助けを求めるなら、もっと前に言え! こんな状態になってから、助言を求めてくるなよ!」

「そうそう。今まで内緒にしていたのは、誰?」


「悪いと思っている。本当に、ごめんなさい。この通り謝るから過去は忘れて、未来を見よう! ね? 気分を新たにして、これから第一回の作戦会議を始めよう。今日の議題は『どうしたら、結婚問題をスルーできるか』 さぁ、案を出し合って!」


「……『案を出し合って』って。お前、少しは自分で考えろよ」

「私もたくさん考えたよ! だけど、良い案が思いつかなかったの! 私が出した最善策は、曖昧な笑顔で必死に逃げる。でも、もうそれも限界にきているの!」

「なぁ、人形は? お前じゃなくて、人形は好きとか言ってないのか?」


 あ〜、そこね。たしかに、初期は何も考えてなかったから、相手が想像するエリース像を完璧に作りあげていたわ……。だって、早く帰ってほしかったんだから、仕方ないよね! それに、結婚問題に発展するなんて思ってなかったのよ! そうでしょ? ゲームでは、そんな話なかったんだもん!!


「言っている……かも、しれない。でも、最初だけだよ! ここ、二年は『何も言わないように』って言ってあるから!」

「すげーな。そんなことも、できるのか?」

「簡単な指示くらいだけどね。だから、今は誤解されるようなことは言ってないと思うけど……人形だからね」

「エリース、とりあえず”身代わりくん”を使うのをやめましょう」


 リブラの提案に、顔をしかめる。

 ”身代わりくん”を使わないという選択肢は、一度も考えたことはなかった。


「リブラ、それは無理。私は……」

「勘違いしないで。エリースが相手をするって、意味じゃないわよ。一度断ってみて、早送り機能が発動されるかを試してみましようってこと」

「簡単に言うけど……もし、発動したら? 早送り機能が働く時は、私の意思は反映されないの。勝手に話が進むのよ。それを試すのは、得策とは思えない」

「エリースの気持ちはわかるけど、試してみる価値はあると思う。さっきの話だと、一番初めの早送りは数時間だったのよね?」

「うん。その後、数回試したから、半年過ぎたの」

「だんだんと時間が長くなった?」

「うん、そう」

「それなら、今回も一気に卒業までってことにはならないと思う」

「だけど、今回が前回の続きってカウントされたら? 最後に早送り機能が発動した時は、一回で三か月も経っていたのよ」

「確かに、その可能性はあると思う。でも、きちんと断らないと結果は同じよ。トーラスお兄様、ジェミナイお兄様、リオお兄様、ヴァーゴお兄様、スコーピオ……それに、お兄様たちだけじゃないでしょ? その数を笑顔だけで逃げられると、本気で思っているの? トーラスお兄様は、次期オルサ国王よ。エリースは、その意味をわかっている?」

「それは……」


 ――私も……そう、思っている。

 

 だから、リブラに反論することができず、その先の言葉は飲みこまれたかのように消えていった。


「エリース。とりあえず、どうなるか試してみましょう。私たちが、全力でサポートするから」


「…………うん、……わかった。じゃあ、キャプリコーンを好きだって言えばいいかな?」

「おい! 俺を巻き込むなよ! 俺はお前と違って、伯爵家だぞ。俺の家を潰す気か?!」


「じゃあ、リブラを……」

「兄妹関係を壊そうと思っているの?」


「……じゃあ、なんて言えばいいの?」

「簡単よ。ただ、自分の気持ちをちゃんと考えたいって言えばいいの。十八歳が近づいてきて、色々考えたいって。そう言えば、お兄様たちもリブラも必ず待ってくれる。自分が選ばれるって、全員が思っているからね。きっと自分だけのエリースになるって、喜んで待ってくれるはずよ。私もお兄様とリブラに、エリースが悩んでいることをさりげなく伝えておくから。とりあえず、それで様子をみましょう。それで、早送り機能が発動しなければ、本格的にお兄様たちに諦めてもらう作戦を立てる。これで、どう?」

「さすが、リブラ!」

「褒めてくれて、ありがとう。でも、もっと前に私たちに話して欲しかったわ」

「……ごめん」

「許してあげる代わりに、さっき使った魔法のことを教えて。私たちが習っている魔法とは、全然ちがうわよね? どういうことなの? エリースは、その魔法をどこで習ったの?」

「習ったわけじゃなくて、ある魔法書を読んだの。魔法は……私たちが習っている魔法は、本当の魔法じゃない」


「待て、どういうことだよ?」

「……その魔法書を見せて」


 異空間ペンダントから『黄道十二星座』を取り出して、リブラに渡す。キャプリコーンもリブラの横から覗きこむようにして、二人は『黄道十二星座』をペラペラとめくる。


「……エリース、この魔法書を借りてもいい?」

「いいけど……」

「安心して。誰にも言わないと、約束するから。それに、今日の話は私たち三人だけの秘密。それで、いい?」

「三人じゃない、四人よ」


「お前……マジで、言ってる?」

「エリース……」



 ――何よ、二人とも!

 私は、本気だからね!!

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