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さよなら世界、また来た異世界  作者: 苺の彼方
第一章「繋がる」
7/8

一話

 あれから半年が過ぎた。半年となるとこの世界の生活にも慣れてくる。ニーロやセシリアのおかげである程度戦い方を身に着け、二人の依頼の同行もしていた。ただ、元の世界に帰る為の情報は何も得ることはなかった。ただ、どの本などの情報でも、『竜』は世界を救うヒーローと言うような記載がされていた。俺達を襲ったのも竜を模した鎧だった。何か関係があるのかと思っている。ちなみに教会等の場所でも『竜』が崇められている。そして今、日課の朝の運動としてニーロと庭で槍と剣の組み手を行っている。ニーロが剣で俺が槍だ。


「オラオラどうしたー!スピードが落ちてるぞー!」


 ニーロに俺は必死に何度も先が布で覆われた槍を突き、最後に薙ぎ払う。だが当たる事はない。だが諦めない。今日は絶対に当ててやると毎日胸の奥で心を燃やしているからだ。


「ほいっと」


 俺の槍は簡単に弾かれ、二ーロの布で覆われた剣が俺の頭を軽く叩く。つまり、今日も俺の負けと言う事だ。俺はその場に大の字で倒れ込む。


「だんだん様になってきたが、まだまだだな。型にハメ過ぎだ。もっと自由に体と槍を動かせ」


 呼吸が一つも乱れても無いニーロが呼吸が荒れた俺に言う。多少悔しくなり俺は状態を起こし持っていた槍をニーロに投げた。だが、いともたやすく槍を手で掴まれた。


「まだまだだな!冬香!千秋に水かけてやってくれー!」


 ニーロは俺の頭を荒く撫でると俺の槍を持って行った。二階から見ていた冬香は「はーい!」と返事をすると、いつも通りに俺の上に丸い水が降ってきた。冬香もある程度魔法の使い方を覚えたようで初心者用の杖ではなく、自分の背丈ほどの杖を持っていた。


 ***


 俺達は朝食をとった後、馬車を使い討伐依頼の依頼場所へと向かう。討伐依頼は危険だが通常の依頼より報酬が多い。任務の難易度は、ブロンズ、シルバー、ゴールド、マスターと四段階に分けられており、それぞれブロンズは誰でも受けられる簡単な任務だが、シルバーからは身の危険に及ぶものが多く高くなるにつれ報酬も多くなる。しかし受けるにはある一定の数任務をクリアしているか等が必要だ。ゴールドは村一個破壊されるくらいのもの。マスターは国が一個滅ぼされるような相手らしい。マスターに関してはそんなものを一冒険者に委ねるな。と言いたいが、昔、マスターは殆ど飾りになっているらしい。ちなみに今回行くのはシルバーだ。何やら森に猛獣が住み着いてしまったらしく、近くに住む村の人らが困っているらしい。


 俺達は村に着いた後、村長から案内してもらい討伐する。最初は動物を殺す事に躊躇したが、そんな事言ってられない。何故なら相手の魔物もこちらを殺す気で来ているからだ。ただこういう風に思えるのは、一度、オオカミ型の魔物に騙され死にかけた事があったからだ。近くにニーロが居なかったらおそらく死んで居ただろう。その時は普段怒らないニーロに大声を上げられ怒られた。


 討伐が終わると馬車で戻ると夕日が沈んでいくくらいの時間だ。俺達はギルドに報告すると、ギルドから出ると、俺は他の三人とは違う道を進む。投影屋に向かう為だ。俺は家が二つ程建つような大きさの前店に着く。これが投影屋だ。俺は扉を開ける。すると中から「いらっしゃい」と女性の声がした。店の中は投影ボックスがガラスケースの中に大量に置かれていたり、中に入れると冷やせる特別な箱や、逆に温める事が出来る箱、そして、ギルドにあった巨大な機械が何台も置かれている。


 そして、ダルそうに床でうなだれている白衣を来た女性、この店の店主の『ミラ』だ。


「今日はどうしたんですか?」


「ちょっと飲み過ぎた」


「そうですか。水持ってきましょうか?」


「頼む~」


 俺はカウンターの裏にある扉を開け裏に入る。裏は床や机には大量の本や設計図が散らばっていたり、大きなものから小さなものまでのまだ試作途中の機会が大量にあった。俺は机からコップを取り、機械の間を潜り抜け、冷えた鉄の箱の中から水が入った鍋くらいの大きさの中から水をすくう。それをミラへと持って行った。


「ありがと。あーそれと店を閉めてくれもう今日はおしまいだ」


 ミラはそれを一気に飲み干すと、「あぁ゛ーー」と汚い声を出す。俺は店の前にある看板を店の中に入れ、店を鍵を閉める。


「それにしてもすごいですね。あんなにも機械を作れるなんて」


「殆どが失敗作だがな。それにドワーフならもっと上手くできる」


 ミラは地面に座り、水のお代わりを要求してきた。俺はまた機械を潜り抜け水をすくって渡す。


「人使い荒いですね」


「助手なら当然だろう」


「いつから助手になったんですか」


「最初からだ」


 ミラは水を一口飲む。


「それで充電はどうなりました?」


「あぁ、それの事なんだがな」


 ミラはカウンターの下から、青く光る機械が取り付けられたスマホが二つ取り出された。ミラはスマホの電源ボタンを押す。すると、電源が付き、ホーム画面が映し出された。


「成功したんですね!」


「あぁ、色々と骨が折れたがな」


 俺はスマホを受け取り、操作する。充電は100%だ。


「ありがとうございます!」


「いやいや、異世界の道具を触れてこっちも楽しかったよ」


 何も不具合無く動く。データも消えていないようでそれが何よりうれしかった。


「これはどうやって充電してるんです?」


「魔力で充電できるようになってる。試しにその機械に魔力を流してみるといい」


 俺は機械に魔力を流す。すると、右上にある残量を示すアイコンに雷のマークが出た。


「すごい......」


「だろ?」


「えぇ!」


「もっと褒めたまえ!!」


「すっごーい!!」


「ははぁーん!!」


 ミラはその場でくるりと一回転する。俺はそれに拍手した。そして急に動かなくなったかと思うとその場で倒れた。


「ミラさん!?」


 俺は駆け寄ると鼻に提灯が出来ていた。どうやら寝ているらしい。俺はミラをおぶり、裏にあるベットに運んでいく。そして、ベットに寝かせ立ち上がろうとしたときに、腕を首に掛けられミラからベットに引き込まれた。


「ちょ、ミラさん!」


「何処に行くんだね助手、まだ実験は......」


 寝言だ。まだ寝ているらしい。あぁ、実験を思い出すと何だか寒気がしてくる。だが首を結構強い力で占められているので息が出来なくなっていく。


「ちょっとミラさん!首!首!!」


「あ......?助手じゃないか、ベットに引き連れて何しようとしてたのかな?」


「別に何もしようとしてませんよ。俺は帰りますね」


「冗談だって。夜だから気を付けて帰るんだよ。気が向いたらまたおいで」


「分かりました」


 俺は裏口から出ると、ミラが見えなくなるまでドアから見てくれていた。


「そういう所は尊敬できるんだけどな」


 俺はぼそっと言いながら家へと向かう。その道中、誰もいない路地で水晶玉を机に置き、座っている一人の老婆と出会った。見た目からして占い師だろう。俺はそれをスルーしようとすると、声を掛けらえた。


「そこのボウヤ。面白い目をしているね」


 俺は無視すればいいっていうのに何故か答えてしまう。


「何のことですか?」


「おや、自覚が無いのかい」


 いかにも怪しい。


「おばさんも夜は危ないから早く帰るといいよ。俺もついていこうか?」


 その言葉に老婆は笑う。


「優しいねぇ。でも大丈夫さ、儂はここが家なのさ」


「そっ、ならよかった」


 俺はその場を去ろうとすると、老婆がまた話かけてくる。


「儂は少しの未来が見えてね。どうだい、今回はお代はいらないから見てやろうか」


「いやいいよ。それじゃ商売にならないでしょ」


「これは優しいボウヤへの親切心さ、さ、こっちへお座り」


「分かりましたよ」


 俺は水晶の目の前にあった椅子へと座る。すると老婆は手の平を水晶の周りで力を込めるように回し始める。


「おお。おお!」


 老婆は何か見たかのように驚きの声を上げた。


「ボウヤ、ここに来て正解だったよ」


「何が見えたんですか?」


「今日の夜に光る板を凝視してみるといい」


「光る板......これの事ですか?」


 俺はスマホを見せた。すると老婆は何度もうなずく。


「何があるんですか」


「それは見てからのお楽しみじゃ」


「何ですかそれ。それでは俺はこれで」


「あぁ、気を付けて帰るんじゃぞぉ」


「ありがとうございます」


 俺は早歩きでその場を去った。それからは何事も無く家へと着いた。


「ただいま~」


「おっ、遅かったじゃないか、どうしたんだ?」


 おそらくシャワーを浴びたてであろうニーロが俺に気づく。見た所晩御飯は食べた後のようだ。


「ちょっと色々あって......」


「そうか。まあ、お前も年ごろだからなぁ......」


「そういうのじゃないって」


 俺はニーロの言葉に笑う。


「冬香は何処に?」


「冬香なら上にいるぞ」


「ありがとう。ちょっと行ってくるよ」


「おう。飯の残りとってるから冷蔵箱の中から勝手に取れよ」


「了解」


 俺は返事をすると二階に走る。そして冬香の部屋の扉をノックした。すると冬香の返事が聞こえ、俺は扉を開ける。部屋の中には冬香が寝転んでいた。冬香は俺の姿を見ると上半身を起こした。


「どうしたのー?」


「これ」


 俺はスマホを冬香に渡す。すると冬香の目は輝いた。


「おー!遂に!」


 冬香はスマホの電源を付け操作する。そして歓喜の声をあげた。


「久しぶりのスマホ......これってどうやって充電するの?」


「魔力を流し込んだら出来るぞ」


「えっ、そしたらスマホ使い放題って事......!?」


 冬香は驚いた顔で聞いてきた。


「魔力が尽きるまではそうだな。でもネット回線無いぞ」


「た、確かに!!」


 冬香は見るからに肩を落とす。


「でもまあ良かったなスマホ使えるようになって」


「そうだね。写真も撮り放題!」


 冬香は試しに何度も写真を撮る。


「んじゃ、俺はこれで」


「うん!」


 俺は冬香の部屋を出ると、一階へ向かう。俺にとっても久しぶりのスマホ......。スマホ世代からすればこれは生活必需品だ。俺はスマホを操作しながら棚の上に置いてある冷蔵箱から今日の晩御飯を取り、加熱箱へと移す。この二つはいわば冷蔵庫と電子レンジだ。


「千秋君、下向きながらだと危ないぞー」


「あっ、ごめんなさい」


 目の前にはシャワーから上がったばかりのセシリアが居た。


「よろしい。すまほ?だっけ、戻ってきたんだ」


「そうなんですよー!」


「私にも見せてもらってもいい?」


「勿論!」


 加熱箱からシチューを取り出し、机に運ぶ。それを食べながらセシリアとスマホの事を話した。


「これが俺らが出会った時のやつですね」


「おっ懐かしいね」


「なんだー?降りてきたら何か楽しそうだな」


 ニーロが俺達の騒ぎに気付いて二階から降りて来た。


「スマホが戻ったからね」


「おー!それは良かったな!どれどれ......うわ、懐かしいな!」


「そうだ。また皆で写真撮らない?」


 セシリアがそういうと俺達は頷く。


「だったら冬香呼んで......」


 俺がそう言おうとすると、ニヤリと顔をした冬香が階段から頭を覗かせていた。


「皆楽しそうでずるいねぇ、私も混ぜてよ!」


 俺達はタイマー機能を使い、また写真を撮った。その写真は家族写真のようで、なんだか笑いが込み上げてきた。スマホを使い、遊んでいた俺達に一通の通知が入った。


「あっ、通知だ」


 俺は何の疑問もなく、それを開く。すると、次から次へと友人から通知が入ってくる。その内容は。


『千秋大丈夫か!?』


『既読しろよ!』


『不在着信』


『不在着信』


『不在着信』


『どうなってんだよ!』


『ごめん、千秋』


『俺、死ぬわ』


 そして一つの動画が送られてきている。それはあの時の続きの出来事で、いつもとは違う商店街が映し出されていた。皆が皆逃げ回り、叫び、殺されていく。空から降る大量の竜が建物を破壊しており、撮影者の千秋の友人は竜に建物を破壊され、上から降るコンクリートに巻き込まれていた。そこで映像は終わっている。俺はその場で崩れ落ちた。

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