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19. 使用人とプレゼント

 19. 使用人とプレゼント




 オレは今日の仕事を終えて一度部屋に戻り考える。オレはマリアさんに何かしてしまったのか。思い当たる節はない……。


 アストンには『あまり見栄はるなよ』とか言われる始末。オレは本当にマリアさんと仲良く話せてるぞ!いや、逆にマリアさんと気軽に話せていることがおかしいのか?


 そんな事を考えながら机の上の紙袋を見る。それはマリアさんにお返しするハンカチが入っている。


「……これは渡したいよな。よし!謝ろう!マリアさんは優しいから許してくれるはずだ!」


 そうしてオレは待ち合わせの中庭に向かった。中庭に着くとすでにマリアさんがいた。


「マリアさん!遅くなりました!」


「女の子を待たせるのは良くないなぁ?」


「すいません……」


 ヤバい……更に印象悪くなってしまったか?ここは先手必勝だ!


「あ、あのこれ……」


「はい。カイル君にプレゼント」


 オレが持っていた紙袋を差し出す前に、マリアさんはオレにあるものを渡してくる。


「え?ハンカチ?」


「うん。この前、指を怪我した時、カイル君気に入ってたみたいだから、同じものプレゼントしてあげようと思って」


 いや……あれはマリアさんの手の温もりとか残り香とかを楽しんでいただけなんですけどね……。でもそれを正直に言うわけにもいかないし……。


「今朝そのハンカチを探してたら少し遅刻しちゃった。私遅刻なんて初めてだからドキドキしちゃったよ」


 そうオレに笑顔で話すマリアさん。オレにプレゼントするために?そこまでしてオレにプレゼントしようとしてくれたんだ……。うおおおおおおお!なんか嬉しい!めっちゃ嬉しい!今すぐ走り出したいぜ!


「ありがとうございます!一生大切にします!!」


「良かった〜。喜んでもらえて。ところでその紙袋は何かな?もしかして私にプレゼントだったり?」


「あっはい!これ、この前のお礼に……」


 はっ!?待て待て!この紙袋の中にはハンカチが入ってる。オレはハンカチをもらってハンカチを渡すことになる。これじゃただの物々交換じゃねぇか!


「ふーん。何が入ってるのかな〜」


 そう言ってマリアさんはオレが持っている紙袋の中を見る。するとそこには、さっきオレにプレゼントした物と同じハンカチが入っていた。


「これってこの前の私のハンカチかな?」


「はい……いや同じものを新しく買って……」


 もうダメだ……。完全にアウトだ……。空気が読めないにもほどがあるぞ。というかこんな偶然引き寄せるオレって……。


「……綺麗な柄だね?この紙袋」


「え?」


「うんうん。ピンクとゴールドのチェック模様。可愛くていいよね?それにこれならいつでも持ち歩けるし。貰ってもいいの?」


 紙袋?……そうかマリアさんはオレに気を遣って、そんなあり得ない無理矢理な解釈をして……。なんて優しいんだ……。やっぱり好きになるしかないじゃないか!


「はい!是非受け取ってください!」


「ありがとう。大切にするね!」


 ああ……。なんか幸せな気分だ……。そうだ。今度アストンに自慢しよう。そしてアストンに『お前は幸せ者だな』と言われよう。オレが幸せに浸っているとマリアさんがあることを聞いてくる。


「あのさカイル君……その……カイル君ってミーアと付き合ってるの?」


「え?ミーアさん?いやいや!そんなわけないじゃないですか!」


「そうなの?……そっか」


 マリアさんはそう言うとホッとした顔をしている。え?これは……マリアさん?もしかしてオレのことが好きなのか!?もしそうだとしたら……最高すぎる展開なんだけど!!


「あの……それってどういう意味ですか?」


「え?ううん。なんでもないよ。気にしないで」


 いかんいかん。ここは冷静に考えなければ。落ち着けオレ。相手はあのマリアさんだぞ。そんな簡単に惚れてくれるはずがないだろ?きっと勘違いだ。まぁそれでもいい。とりあえず今は少しでも距離を縮めることが大切だ。


「あの……今度休みが合ったら一緒に出かけませんか?そのマリアさんが良ければですけど……」


 オレがそう言うとマリアさんは少し上目遣いになりながらこう答えた。


「うん。もちろん。楽しみにしてるね?」


「は、はい!!」


 こうしてオレのプレゼント作戦はマリアさんの優しさにより、無事成功した。しかもデートのお誘いも出来たし!ダメだ。テンション上がりすぎて今日は眠れないぜ!

『面白い!』

『続きが気になるな』


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