人生相談の内容
「へー、君が隅風君か」
こちらを見るなり、茶髪の女子はこちらを値踏みするような発言をする。
「あ、ごめんごめん。だからそんな困った顔しないで。私の事は住吉君から聞いてる?」
困惑していた僕に、茶髪の女子は軽く笑いながら謝罪をする。
「何も聞いてないかな・・・・・・」
住吉から何も聞いていなかいら、正直に答える。まあ、この発言か佐多利鮎莉らある程度察することは出来る。
「私は、葵ちゃんの親友で佐多利鮎莉といいます」
そう言ってこちらに手を伸ばしてくる。その手を取るべきか分からず、中途半端に手を出したらそれをすぐにつかんでくる。
「これからよろしくお願いします!」
「えーと、よろしく?」
近すぎる距離感に、僕はどうすればいいのか困る。こういった人には住吉に対応させることが一番だが、現在進行形で手を握られているので、そんな状態で住吉を呼ぶほど行動力がある訳ではない。
「それぐらいにしてあげて、隅風君も困ってるでしょ?」
そこに桜木が助け舟を出してくれる。
桜木さま、マジでありがとうございます。
「ごめんごめん」といいながら、佐多利は手を放してくれる。
「女性経験がない、駿人ではあれはきつかったか」
駿人がこちらを馬鹿にしながら、近寄ってくる。
僕たち友達だよなと僕は思うがそれを口に出さない。どうせ、いい感じに反撃された終わるのが目に見えているからだ。
「はぁ、とにかくあそこに座ってください。そこで相談を聞きます」
そう言って、僕は椅子がある方へと向かおうとしたら。
「私、遊びスペースみたいな所でしたいんだけど、こんな堅苦しい所であまりやりたくない」
「は?」
佐多利の発言に僕はかなり動揺する。
どうして佐多利は、遊びスペースの存在を知っているだ?あそこはこの部活の中でも最高機密になっている所。バレたら一発アウトのものが多いので、そこが決して漏洩しないように何重もの対策をしてきた。僕か住吉が喋らない限りバレるはずがない。
つまり、そういう事だろう。
僕は心底から蔑んだような目で住吉を見る。
「おまえ、誰に、どれぐらい喋った?」
「佐多利にしか喋ってねえよ、言ったのはつい最近だ。それにあそこの存在がバレて不味いのは俺も一緒だろう。そう簡単に言わないって」
僕の質問の意味を理解したのか、住吉は急いで弁明をする。その様子から見てどうやら本当のようだ。
まあ、どうして住吉は口は堅い方だ。そうでなければ長い間友達としてやっていけない。考えもなしにこういったことはあいつは言わない。彼なりの考えがあって喋ったのかも知れない。
「はぁ、今後こう言ったことはやめてくれ。知っている人は出来るだけいない方が安心だからな」
「ごめん、これからは気を付ける」
住吉もそう言って謝る。これでこの話は終わりだ。そう思った時だった。一人だけこの会話についていけない人がいた。
「すいません、その遊びスペースとは何ですか?」
それは桜木だった。
僕は住吉の方を見るが、俺は知らんと言った感じで明後日の方を見ていた。
いやいや、元々の原因は住吉だ。お前が責任を取れよと言いたいところだが。こいつに任せたらどうなるか分からない。というか、これが秘密の事だと佐多利も理解していたはずだ。
桜木の方を見ているとこの状況を楽しそうに見ている。あれは確信犯だ。間違いない。現状を理解した僕は桜木を見る。
桜木はきょとんとした感じで、僕からの言葉を待っていた。
さて、どうしたものかな。出来れば桜木には知ってほしくなかった。桜木はかなり真面目だ。性格上、頼んだら言わないくれるとは思うが。様々なことを考えるとするならば、桜木には悪影響を与える可能性が高い。
ここで、適当に誤魔化してもいいのだが、桜木はみんなと遊びたいと考えている。今回の人生相談が、どういった内容なのかは分からないが、関係しているのは間違いない。
すると、ここで桜木だけ仲間外れというのは桜木の事を考えるとダメだろう。まあ、そこまで大きな影響はない。あったとしても僕のイメージがダウンするだけだ。
「実際に見た方が早いでしょう。桜木さん、佐多利さん、ついてきてください。」
僕はそう言って作業スペースの方のドアを開けて入っていく。二人はその後ろについていく。
作業スペースには、端にPCと机があり、次に縦長机と椅子が置いてあり。左右には大量の本や資料が入っている。
PCのある所から、反対にはホワイトボードが置かれている。
「なんか、会議室というかしっかりとした作業場?みたいなところだね」
「ここは、基本的に勉強や、部活関係の資料など真面目なことをするときに使うからね」
部屋の印象を述べた佐多利に僕はどう言ったことに使われるか説明する。
「確かにこういって所だったら、とても勉強しやすそうですね。10人ぐらいが勉強できるスペースがありますし、広々と使えていいと思います。」
桜木も気に入ったのか色んな所を見ている。
そのまま僕は、荷物置き場と書かれたドアを開ける。
「桜木さん、佐多利さん、こちらです」
そう言って二人は遊びスペースに入る。
遊びスペースにはPCにゲーム機、ジュースにお菓子、漫画、ボーダーゲームと言ったものが置いてあり、さらには寝転ぶ用の簡易マットがあるのだ。
ある種の秘密基地だ。それを高校生が学校の中に作っているのだ。バレたら、どうなることやら考えたくもない。
遊びスペースを見た二人は、それぞれの反応をする。
「おーーー!」
佐多利は面白そうな光景に目を輝かせている。
「これは・・・・・・すごいですね」
それに対して、桜木は若干引いていた。こんなものがあってもいいのかと言った感じだ。
「これは聞いていたもの以上だよ!」
佐多利は興奮しながら、遊びスペースを堪能し始めた。
「元々はここまでするつもりはなかったんだが、その住吉と色々していたら気分が乗ってしまって、ここまでした感じだ」
「そうなんですね・・・・・・」
あまりに非現実的な光景に動けなくなっていた桜木に苦し紛れの言い訳をする。
「すごいけど、こんなの見つかったら大変なことになるんじゃないの?」
人通り楽しんだ、佐多利が聞いてくる。
「確かにバレたら大変なことになるかもだが、そこら辺の対策はしてある。元々ここは荷物置き場としてほとんど使われてなかった所だから、滅多に人が来ることはない。それに、ここを管理している先生には話は付けてある。また、ここには元々、今はない他の部活とかがお別れ会とかに使った遊び道具などが置かれていた。漫画やゲームと言ったものは無理だが、それ以外ならいつでも遊べるようにおいていない限りは、怪しまれないようになっている。そのほかにも色々と対策をしている。」
「す・・・・・すごいですね」
「見た目に反して、結構やるんだね」
「こういって、悪事に関しては駿人の右に出る者はいないからな」
この場所を知られてしまっては、もうどうにも出来ないので素直に喋ったら、桜木さんからは引かれ、佐多利さんと住吉からは自分がまるで極悪人と言った感じで見られる。
自分がやっていることを自覚しているので何も言えないが、別にここまで言わなくてもいいじゃないかと思った。
「それで相談ないようは何ですか?」
かなり話がズレていたので、僕はそう言って今回の本題を聞く。
「そうだった。予想以上に遊びスペースが楽しくて忘れてた」
「おいおい」
佐多利の発言に少し呆れる。
「本来ならここで、相談したいと思ってたけど予想以上に楽しくてそのまま遊んじゃいそうだから、内容だけ軽く言って、後はさっきの作業スペースやろ」
いつの間にか、佐多利が指図する側になっている。
「まあ、今回の相談内容なんだけど、簡単に言えば成績を下げないで遊べる時間を増やすためにはどうすればいいかな?」
それが今回の相談内容だった。