友達がいたとしても問題が解決したわけでない
次の日、しっかりと休んだおかげで熱も下がり、完全復活を果たすことができた。
授業関連の問題も昨日、桜木が持ってきてくれたまともノートによって問題はない。文武両道と言われることもあって、授業の要点を正確に捉え、分かりやすいようにまとめられており、すぐに後れを取り戻すことができた。
「体調はもういいのか?」
「しっかりと休んだからね、完全復活することができたよ」
登校中の僕に話しかけてきたのは住吉だった。
「しかしまあ、倒れるとしたらあっちだと思ったんだが、お前の方が倒れるなんてな!鍛え方が足らないんじゃないか」
予想した通り、住吉は僕が倒れて事に関して弄ってくる。僕の肩をバンバン叩きながら大笑いだ。しかも、地味に痛いのでやめてほしい。
「そんなことはありませんよ、私の為にあの大雨の中、数時間も歩き回っていましたから、相当疲れるはずです。」
「やっぱりそうだよな!僕の体力が少ないて・・・・・・」
僕は隣を振り向くと、そこにはすました顔で桜木がいた。
「おはようございます。隅風君、大友君」
「おはよう」
「お、おはよう」
爽やかな笑顔をこちらに向けながら、こちらに挨拶してくる。それに一斉動揺しないで返事をする住吉、僕はいきなりの事で少しぎこちない挨拶になってしまった。
こういった時に、女性経験の差が明確に出るなと思う。
「大友君、昨日はありがとうございます」
「親友のためだからな、当然のことをしたまでさ」
やはり、桜木さんに僕の家やしたことを教えた奴は住吉だった。
こいつ、何が親友のためだからなだ。いつもは平気で仕事とか押し付けてくるくせに、どうせ今夏も面白い玩具を見つけたな程度しか考えていない。
「隅風君と大友君はいつも一緒に登校しているのですか?」
「いいや、気分が向いた時ぐらいしか一緒に登校しないな」
住吉と桜木が話し合う。
僕はいまだにこの空気に慣れることができず、会話に入ることができていない。自分のコミュニケーション能力のなさを見せつけられて悲しくなる。
気が付けば、横並びから、僕だけが先頭に歩いてる。僕はそっと歩く速度を落として合わせようとする。
いつも気が付けば、こんな感じで一人になっている気がする。ダメだな、自分の悪い癖が出てきたいる。
「そう言えば、今日も人生相談部はあるんですか?」
「やるか、やらないかは部長である、駿人が決めることだから。それで部長、今日はどうするんだ?」
突然会話を振られて、一瞬反応が遅れる。
「そうだな、今日はやるとしよう。」
ここ最近は、色々やっていてあまり部活動もしていなかったし、そろそろ報告書なども仕上げておいた方がいい。それにあそこは何だかんだ落ち着く場所でもある。最近色々あったからな、今日はゆっくりと整理する日にしよう。
「だそうだ」
「分かりました」
それで会話が終了する。何というか、本当にこういった雑談を続けるようなことは僕には出来ない。そういう風に考えていると、ふと疑問に思う。
「桜木さんはどうして、部活が今日あるのか知りたいんだ?」
その質問に桜木は少し悩んだ後に言った。
「なんとなく、ですかね?」
「なるほどね」
特に理由はないらしい。まあ、そういうときもあるよね。
何でもかんでも理由があるように考えるのも悪い所だ。こういった考え方をしているからこそ、住吉から考えすぎだと注意されるんだ。
そんな感じで会話をしていると、学校が見えてくる。それと同時にこちらを見てくる視線が増えたのを感じる。
それは自分たちと同じ学校の生徒だった。
こちらに視線が集中している理由は隣にいる桜木が原因だろう。学校一の美少女が同性ではなく異性と一緒に登校していることに違和感があるのだろう。
そのことに、二人は特に気にしている様子はなかった。桜木さんはこう言ったことが日常茶飯事だから慣れているのだろう。住吉の奴は、同性よりも異性の方が話しやすいタイプなので、日頃から多くの人からの反感を買っていることもあって、この程度では意味がないのであろう。
むしろ、この後で僕に悔しがってるのホント笑えるよな、みたいな感じで笑いに来るのだろう。
僕の予想では、何も起こらない日常が帰ってくる予定だったはずなのだが、朝からその予想が音を立てながら崩れていくのを感じる。
この後、何も起きなければいいんだけどな。そんなことを思いながら、僕たちは学校に着くのであった。
「おいおい、今日は最高だったな。あの、なんで一緒にいるんだといったあの視線、不満があるなら堂々と言いにこればいいのに、あんな愚図みたいのことしかできないからな」
現在は人生相談部の部室だ。高校生の中で噂とは広まるのがはやいもので、学校1の美少女が異性と一緒に登校しているとのことで、今日一日様々な視線にさらされることになった。
視線に敏感な住吉は、気が散って仕方なかったのか、そこそこ不機嫌である。今も、僕の前で愚痴を言っている。
「ほどほどにしておけよ、僕は荒事が嫌いなんだ。」
僕は、住吉をなだめる。ちなみに、住吉はかなり強い。住吉は細マッチョみたいな感じだが、住吉の父は正反対でゴリゴリのマッチョであり、見た目通りに強く、格闘技にもそれなりに通じている為、数人程度なら簡単にボコボコにしてしまうほどには強い。
「分かってるよ、さきに殴ったらまずいからな。あっちから殴ってきてくれないかな?」
「おまえ、絶対に分かってないだろ。とか、殴ってきてもやりすぎるなよ?」
感じな時はとてもいい奴なのだが、平常時は闘争を求めているやばい奴になってしまう。まあ、これでも昔よりは大分マシになった方だ。
昔は、どうにかこうにかして、先に手を出させて、それを返り討ちにするということをやりまくっていた。あの時に比べれはいい意味で口だけになったので本当によかった。
だからといっても、相手からホントに手を挙げたなら、間違いなく再起不能にするまでボコボコにするのだろう。
そう言ったことを周囲の男たちも分かっているので、直接言うようなことなく視線などで些細な文句を言っているのだろう。
住吉とくだらない話をしていると、部室のドアがノックされる。
一か月前もあったが、この部室でノックするとしたら、こんなところに人生相談をしに来るやつぐらいしかいない。
チラッと住吉の方を見ると、お前が行けという目でこちらを見てくる。それにため息をつきながら僕はドアを開ける。
そこにいたのは、茶髪で少しギャルっぽくてあざとそうな女子と桜木さんだった。
そして桜木さんは言うのであった。
「人生相談をしにきました」