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名前だけの人生相談部に学年1の美少女が人生相談に来てしまった。  作者: 時雨白
第4章 必要なのは広い視野と冒険させられること
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いつもの日常

「階段革命、八切で終了と」


 流れるようなコンボで自分の手札を使い切り、大富豪になる。


「強い」


「また駿人の勝ちかよ、何かズルをしてないか?」


「ズルなら住吉の方だろ。大貧民がワンターンで上がるなんて反則に等しい」


 あれから十何試合か大富豪をやっている。


 勝率は僕が4割で他は2割といったところだった。


 大富豪は運の要素もそこそこあるが、しっかりと考えてやればある程度何とかなるので、僕はそこそこ大富豪は強かった。


「住吉はカード運に頼りすぎているよ、もっとカード管理しな」


「運がない駿人に言われると説得力あるな」


「おい」


 僕の手札が大富豪の割に弱いこともあって、毎試合接戦になるのでかなり盛り上がっていた。


「次だ次」


「負け続けの住吉は必死だね?」


 鮎莉は悪女がしそうな笑みを浮かべて住吉を煽る。


「大貧民の鮎莉が何か言っているな?」


 住吉も負けずと言い返すが、鮎莉は余裕の表情だ。


「今のことだけ見てもダメだよ。総合的に見ないとね?」


「僅かな差なんてすぐにひっくり返してやるから、呑気に踊ってろ裸の王様」


 鮎莉と住吉の間で激しい火花が飛び散る。


「残り時間も考えると後2試合かな」


「そうだね」


 そうして、僕はカードを配り、大富豪をした。


「いや、大貧民は大変そうですね?」


「くそ、どうしてこうなった!」


「調子に乗らないで、堅実にやれば勝ててたじゃん」


 2試合した結果、1回目は貧民なのに運の力により圧倒的な手札を手に入れた住吉が大富豪になり、2回目は住吉が調子こいて革命で終わらせようとしたところを鮎莉に潰され、そのまま鮎莉が大富豪になり、都落ちで住吉は大貧民になるという面白い結果になった。


 鮎莉が住吉をオモチャにしているところを片目に、トランプなどの片付けをする。


「私も手伝います」


 そう言って、桜木も片付けを手伝ってくれる。


「ありがとう」


 そうして、二人で片付けろしている時、ふと桜木の姿を見る。


 桜木の片付ける姿は、雪のように真っ白い素肌、よく手入れされているであろう黒蝶真珠のような美しい髪、それを桜木本人の大人しいイメージが綺麗にまとめ上げることで、片付けをしているだけだというのに自然と美しいと思ってしまうほどのものだった。


 見るだけで、どこか心が落ち着くようなその姿と、高い成績に性格もいいと来たら、桜木が完璧少女だと思ってしまうのも仕方がないかもしれないと思う。


 そして、普段は考えようとしなかったことを考えていたことに気が付く。


 目の前にあった大きな問題が片付いて心の余裕が出来たからだろうか、それによって客観的に桜木の容姿を見ることができ、みんなが見ている桜木葵の姿はこのように見えているのだと再確認する。


 どうして、今このタイミングでそんなことを考えたのか、自分でも分からない。


 考えたも答えが出ないことが分かっているので、不思議な事もあるものだと思いながら、片付けを済ませて、部室を後にする。



 校門でいつものように別れようとした時だった。


「私、寄りたいところあるから住吉借りていくねー」


「は?」


 住吉は辛い作業を終わらせてやっとこれから解放されると思った矢先に、これ追加でやっておいてねと言われたときのような表情をする。


 その様子を見ると、住吉はそのような話を聞いていなかったようだ。


 桜木もこの話を聞いていなかったのか、驚いている。


「そんな話聞いてないぞ!」


 勿論のこと、住吉は抗議の声を上げる。


「当たり前じゃん、今話したから」


 その言葉を聞いて住吉は絶句する。


「もしかして、断るつもりじゃないよね?」


「いや、普通に断りたいんだが」


 今日一日、散々鮎莉に弄ばれているので、これ以上弄ばれてなるものかと必死だ。


 しかしながら、こういったパターンにおいて、抵抗が無意味であることまでは学んでいなかったらしい。


「いや、拒否権ないから」


 鮎莉はそういって、住吉の首根っこを掴んで連行していく。


「駿人!た、助けてくれ!」


「たまにはやられる側の気持ちでも味わっておけ」


「そんなー!」


 最後の希望も潰え、まるで親鳥に見捨てられたひな鳥のような表情をしながら、住吉は鮎莉に連れていかれる。


「また、明日」


 格好の獲物を捕まえて、これからどのように食してやろうかと捕食者の表情を見せながら、鮎莉は別れを告げる。


 僕たちはその光景に苦笑いしながら、「また明日」と答えた。


「すごかったですね」


「そうだね」


 鮎莉の行動力の前に、僕たちはただただ、すごかったという感想しか出てこない。


「それじゃ、私たちも解散しますか」


「あ、言い忘れていたけど、今日、桜木の家の近くのお店に用事があって行くことになってるんだ。良かったらでいいけど一緒に帰らない?」


 僕がそう言うと、桜木は驚いた表情をするが、すぐに落ち着きを取り戻して「いいですよ」と一緒に帰ることを了承してくれる。


「ありがとう」


 そうして、僕達は一緒に帰り始めるのであった。

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