意外な訪問者
次の日、僕は無事、熱になった。
自分の体力の無さに悲しくなる。
ベットの上で自分の無力感を実感していたら、ドアが行きよく開けられる。そこには僕の妹である隅風優香がいた。優香は現在は小学6年生だが、僕と違い何かと頭がいい。
「まったく、何熱になってるのよ。駿人兄さん」
「ごめんて」
僕の家庭は共働きなので親が帰ってくるのが遅い。なので、家事などは兄妹で分担して行っている。その上で、一番家事の仕事量が多い僕が熱で倒れているので、その負担は勿論、残りの二人に向くわけでそれが不満なのだ。
「まあ、僕の仕事は綾斗にでもさせおけばいいよ」
「綾斗兄さんはいつも家に帰るの遅いから当てにならないよ」
隅風綾斗現在は中学3年生で、僕と違って容姿端麗、運動神経抜群、頭もいいと完全に僕の上位互換の人物だ。今は何とか兄の威厳を保っているが、それが無くなるも時間の問題だった。
そして、綾斗と優香はいつもくだらないことで喧嘩をしているので口調自体は少しキツイ感じだが、なんだかんだで、喧嘩していると思ったらその次には一緒に遊んでいることもあるので、兄弟間の関係が悪い訳ではない。
「綾斗はなんだかんだ、しっかりと考えて行動できるから、今日ぐらいは早めに帰ってくるよ。」
「まあ、駿人兄さんがそういうなら、そうなんだろうと思うけど」
少々納得がいかないと感じだったが、これ以上の不満は言わなかった。
「昼食はここにおいておくから」
優香は、昼食など僕は困らないように色々と用意してくれた。本当にいい妹だ。自分の誇りでもある。
「それじゃ、私学校にいくから。くれぐれも安静にしておいてよ。」
「分かってるよ」
そう言って、優香は僕の部屋を後にする。
学校への連絡は親がやってくれている。
しかし、今回倒れたことはやはり反省するべきことだ。いくら優秀だとしても、まだ中3と小6だ。子供だからこそ出来ることをしてほしい。倒れた兄を心配して行動させるようなことをあまりさせたくないのだ。
今後の事を考えて行動することは、自分を強くするかも知れないが、同時に自分の心を追い込むことになる。その辛さを僕は知っている。
いつかは必要なことかもしれないが、少なくとも今はまだ必要ではないはずだ。優香と綾斗が大人になるまではそう言ったことは全て僕が引き受けれるようにしておかないといけない。
今回の自分の失態を強く反省した後、僕は暇になった。
安静にしておく必要があるので、特にできることもなくとても暇である。
暇なので、僕は昨日の事を考える。
昨日取った僕の行動は正しかったのだろうか。少なくとも最後に見た桜木の表情を見るに、良かった可能性は高い。
しかし、将来のことまで考えると、そうと言いきれない可能性がある。この世の中絶望という闇にはそこがないのだ。それを考えるとどうしての心配な点が出て来てします。
そして一度思考をリセットする。あり得るかもしれない可能性を考えたとしても疲れるだけだ。考えすぎて病んでしまいましたなどは笑い話にもならない。
それに、桜木葵はもう一人ではない。頼れる友人がいるのだ。きっと彼女の事だから、上手く現状の問題と友達と協力しながら乗り越える事が出来るだろう。
ならば、僕の存在は彼女にはもういらないだろう。
桜木葵はもう僕に相談することはない、それは僕の平穏な日常が戻ってい来ることを意味する。彼女が初めて人生相談しに来てから一か月、その間は彼女がどう遊んだとか聞いたり、上手くいっているのかなど考えることが多くて大変だった。
色々なことがあって飽きない日々だったが、僕には荷が重すぎる。身分相応な生活の方が安心するのだ。
そして考える、明日からどうしようかと。まず、明日間違いなく、住吉に馬鹿にされる。当分はこのことで弄られるだろう。そう考えるとため息がでる。
次に授業だ。昨日の後半と、今日一日分僕は休んでしまっている訳だから、それに追いつけるように勉強をしないといけない。僕は頭がよくはない。周囲に追いつくためには人の何倍の努力をしないといけない。
ここから復活してもやることが多いのだ。嫌になってくる。
そんなこんなで、様々の考えながら時間を潰した。
それ数時間経った頃、家のドアが開かれる音がする。そして、ここのドアが開かれる。
「駿人兄さん、生きてますかー」
「これぐらいで死ぬわけないだろー、妹よ」
優香は軽いノリで聞いてくる。
「それは良かったです」
そう言って、少しほっとした表情を浮かべる。
「綾斗兄さんから連絡です、今日の食事当番はしてやる、軽いものでいいよな。あとこれ貸しだから」
「相変わらずだな」
「ホントだよね、細かいところで何か要求してくる。それぐらい無償でやってあげればいいのに」
優香は少し怒ったように言う。その怒りは僕に対してではなく、綾斗の守銭奴みたいなところに怒っている。
さて、今回の貸しをどのように返そうか、そんなことを考えていたら。
家のチャイムが鳴る。
「駿人兄さん、何か買った?」
「いやなにも、きっと父か母が何か頼んだのだろう、悪い受け取ってくれるか」
「仕方ありませんねん」
そういって、優香は僕の部屋から降りて、対応しに行く。
しばらくして、こちらに向かってくる足跡がする。それも二人分。
あのチャイムは宅配ではなく、優香の友達だったのだろうか。ならば、迷惑が掛からないようにおとなしくしておかないとなと考えていたら、僕の部屋の扉が開かれる。
そこには、面白いネタを見つけたといわんばかりの表情をしている優香と、こういったことが初めてなのか少しだけ緊張している桜木の姿があった。