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名前だけの人生相談部に学年1の美少女が人生相談に来てしまった。  作者: 時雨白
第4章 必要なのは広い視野と冒険させられること
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考察

「まず最初に聞かせてくれないか?どうして私がスタッフを呼んだと思ったんだい?」


 イケメンの人は単刀直入に聞いてくる。


「色々とありますが、1番の要素は勘ですね」


「勘か、確かにそれは1番の要素かもしれないが、私自身、君との少ない時間だが触れ合って多少なりとも君のことを知っているつもりだ。君は非常に合理的な人間だ。勘に頼るとしてもだいたい7割が8割ぐらいは私だといえる理由があるんじゃないか?」


 僕の意見に対して、足りないと答えるイケメンの人。この人と喋ったのはレジャー施設の時と、今の雑談だけだ。


 その少ない時間の中で僕の性格や考え方を見抜き指摘してきている。イケメンの人もやはり優秀なのだろう。


 鋭い観察力もそうだが、イケメンの人の姿や声からは確かなる強い意志みたいなを感じる。


 言い換えるなら、強いカリスマ性や彼ならどうにかしてくれると思える求心力を感じさせる。


 何事もなければ大物になるのは間違い無いだろう。


 そんな人に勘と言い張る選択肢もあるが、それではきっと納得はしてもらえないのだろう。


 そう考えて、僕は素直に答えることにした。


「確かに、ある程度の考えはありました。」


「その考えとは?」


「まず最初に考えたのは行動力という面です。隣が少々危ないプレーをしていたからと言って、スタッフに言って注意してもらうなどといった行動が出来る人はあまりいません」


「なるほど、なら私も行動をしないとは考えないのか?」


「その可能性は低いかなと考えました。一つ目に手洗いの場所などを他の人に聞くなどは、相当切迫詰まっているならするかもしれませんが、余裕がある段階ではすることはありません。私に聞いた時あなたはまだ余裕があったはずです。そこから見て、あなたが普通の人よりも知らない人と会話することへのハードルが低いことがわかります。」


 大抵の人は本当に困っていないと知らない人に頼るということは全くしない。そこには知らない人という未知の恐怖があるからだ。


 その恐怖を乗り越えて話し掛ける人はそうそうにいない。


「なるほど、確かに私が知らない人と話すことに抵抗をあまり感じないのは認めるけど、それだけでは勘で断定できないんじゃないか?」


「はい、そうです。これだけでは勘でそうだとは言えません。二つ目にあなたはただ聞くだけではなく、聞いたことをしっかりと考えることができる人です。」


「ふむ」


「人はあまり問題がないのであれば、些細なことで疑問を持つことはあまりありません。あなたは僕が一つ下の階にあると答えた時、ここの階にないのかと聞きました。私が言った場所が遠かったりして問題があれば聞くのは納得しますが、あなたのその後の行動から問題はなかった筈、つまりあなたは僕の解答に何かしら疑問を感じた。例えば、これほど人気な所であれば、手洗いの場所があってもおかしくないか」


「まあ、それがあっているとして、それが私が質問したことに何の関連性があるんだ?」


 イケメンの人の言う通り、考えることができることは一見関係ないように見えるが、しっかりと物事を細分化すれば非常に大切な要素にある。


「先程と同じですよ。もしあのような行動をする時に必要になってくる事とは、一つは行動力という面、そしてもう一つは、サッカーをしている人たちのプレーが危険ではないかと疑問に思えることです」


 根本的にサッカーをしていた人たちのプレーが危険だと疑問に思わなければ、あんなことはしない。


 そして、危険だと察知するためには一つ一つの物事をしっかりと考えることができる必要がある。


 それをできる人は多くいない。


 明らかに危ないものならまだしも、隣がしていたことは、上にボールを蹴っていたことだけ、そこからネットを超え隣に被害を与える可能性を遊びという意識で来ている時に考えれるだろうか。


「言いたいことは分かる。確かに疑問を抱くことができるような人物でなければいけないだろう。しかしながら、あの会話だけでそれができる人物とは分からないんじゃないか?」


 イケメンの人が言っていることは正しい。あの会話だけでそこまで考えられる人とは分からない。


 だからこそ、もう一つの要素が必要だった。


「3つ目です。勘を抜きにするなら、これが決め手になったと言えます。あなたのした質問は僕のことを警戒して言いましたよね?」


 これが最大の決め手だった。イケメンの人は僕を警戒していた。


 それが意味するところはイケメンの人は出来事に対して、危険性などを考える人だということ。


 それも自分から聞いた質問に対して。


「私が警戒していたと言える根拠は?」


「僕の解答に質問を覚えること自体がおかしいです。あなたは言いましたよね。手洗いの場所が分からないと。そして僕は、下の階にあると言っただけです。それなのにどうしてこの階にはないのかと言うのですか?」


 僕はあの状況でのイケメンの人側の視点で考えを述べる。


「僕の言葉にあんな疑問が覚える可能性があるのは大きく分かるなら3つ。一つ目はこの階に手洗いがあると思っていた。二つ目は手洗いがあることを知っていた。3つ目に下に行くことで一目で荷物の安全が確認できなくなることなど、何かしらのことで危険を考えた」


「・・・・・・」


「どの理由であろうと、あなたが普通の人ではないことは明確。今までのことを考えるなら、広い視野と考えを持ち、先を考えることもできる先見性も持ち合わせている人になる。そんな人物なら可能だと思いませんか?」


 そう、あの短い会話ととった行動からでもしっかりと分析して、考えていけばかなり多くのことが分かる。


 ただ、問題があるとするならば。


「これはあくまでも可能性の域を出ないことです。だから、最後は自分の勘を信じました」


 僕の解答を聞いたイケメンの人は、とても満足そうな表情をする。


「その年でそこまで考えられるなんて、将来有望だね」


「僕の考えは合っていたということでいいですか?」


「ああ、合っているよ。確かに私が呼んだよ。」


 イケメンの人は完敗したような感じで言った。


「そうですか、あの時はありがとうございます。」


「別に構わないよ。するべき事をしただけだ」


 僕のお礼の言葉に、大人の対応をするイケメンの人。


「何かお礼がしたいので、僕に出来ることがあったら教えてください」


「なら、ウチの会社に来て欲しいな。」


「それは少し厳しいですね。」


 僕の言葉にイケメンの人は少しがっかりした表情をする。


 冗談かと思ったが、割とガチで言っていたようだ。


「なら、あの時遊んでいた君の友達のことを教えて欲しい。あの後は上手くやれたのかい?」


「知らない人に僕の友達の情報を伝えるような事は出来ませんね」


 僕の言葉に、一瞬フリーズするイケメンの人、そしてすぐに僕の言葉の意味を理解して大きなため息をつく。


「あー、もしかしてある程度予想ついている感じ?」


「はい、そうでないと知らない人について行くわけないじゃないですか」


「それもそうだよね。」


 今までしたことがバレていたことにショックを受けたせいか口調が砕けるイケメンの人。


「因みにどこがダメだった?」


「やり方自体は良かったと思いますよ。普通の高校生なら警戒が薄いですから、多少強引なところがありますが、気にはされません」


「つまり、君は警戒していたと」


「はい、本格的に関わろうとした時からこの可能性がある事は見えていましたから」


「なるほどね」


 そうして、少し疲れたように座り直すイケメンの人。


 そして、僕はイケメンの人の正体について聞く。


「葵さんのお兄さんである桜木竜馬さんでよろしいでしょうか?」


「ああ、私が葵の兄である竜馬だ。よろしく」


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