特訓の成果
あれから2時間ぐらい過ぎただろうか、僕が今回用意した確認テストは無事に終了した。
「もう30分あれば、結果を伝えることができるが明日にするか?」
「いや、今日で頼むわ」
「私も今日がいい」
「私からもお願いします」
「分かった、少しだけ待っててくれ」
現在は午後6時もあり、いい具合の時間だったので明日にするかと聞いたが、3人は今日がいいと即答してくる。
やはり、モチベーションが高いのだろう。3人からは早く結果を見て、成果を確かめて、更なる向上のために明日から動きたいという気持ちがよく伝わる。
僕もその期待に応えるために出来るだけ早く正確に答え合わせをする。
20分後、答え合わせと記録などやることを終わらせて、テストを3人に返す。
「いつもより10点も高くなってる!」
「俺もだ」
「二人ともよかったね!」
返されたテストの結果がよく、3人とも喜んでいる。
「今回のテストに関してだが、国語、数学共にテスト範囲の半分の範囲で出題した。難易度で言えば、国語は実際のテストと同じレベルで作成しており、数学は少し難しく作成した。」
僕は今回のテストの概要と作成した側からの意見を述べる。
「住吉、鮎莉共に両方とも80点台を取れており、数学に関しては問題次第では90点台も目指せるだろう。桜木に関しては、数学は100点、国語も92点と、今までのデータと比較しても、上がっている。」
今までのデータからこの問題を作成するときに桜木が取るであろう点数の予測は、数学が90点前半、国語が80点後半だったが、その予測を超える結果を桜木は叩き出していた。
「正直言って、予想以上の結果だ。よく頑張っていることがしっかりと伝わる」
「まあ、俺たちだからな」
「いやいや、葵ちゃんのやる気があってこそのものだよ」
「私だけじゃなくて、大友くんや鮎莉が一生懸命に取り組んでくれたお陰だよ」
僕の率直な褒め言葉に、3人は互いを褒め合う。その様子はとても楽しそうだ。
「今回のテストにおける解説と間違えやすいポイントを が書いてある紙を渡しておく。これもWebサイトから入手可能になっているから、電子上で欲しいならそこから入手しておいてくれ」
「分かった」
「ありがとうございます」
「お礼はいらないよ」
復習などをしている時間は流石にないので、必要な資料だけは配っておく。
「時間も時間だし、今日はここまでにしておく。部室の後片付けは僕がしておくから、頑張った3人は早めに帰って休んでくれ」
「分かった」
「任せた」
「ありがとう」
そう言って、3人は自分の荷物などをまとめ始める。
僕は部室の窓を閉じたり、軽い清掃をして、部室の鍵を職員室まで返しに行った。
やることも終わった僕は、学校から帰ろうと校門の方へと向かうとそこには先に帰ったはずの桜木が一人待っていた。
「僕のことは置いて、3人と一緒に帰っていてもよかったのに、今回のテストで話すことは多くあっただろう」
「それはいけませんよ。私たちの為に一番頑張っている人を蔑ろに出来るわけないじゃないですか。それにこうやってすぐに一人になるあなたを見ているとなんだか心配です。」
僕の言葉に桜木は少し拗ねたように言い返してくる。
ここで一人は慣れているとか言うことがダメというのは今までの経験上ダメなことは理解しているので別の言葉で返答をする。
「心配してくれてありがとう、だけど僕は一人だと思ってないから大丈夫だよ」
「無理はしないでくださいね」
「それはこっちのセリフだよ、桜木こそ無理をしないでね」
そう言って僕たちは笑い合う。
「時間も遅いし、電車のところまで送るよ」
「なら、お言葉に甘えることにします」
そうして、僕たちは夜道を二人で歩いて帰る。
「なんだかワクワクしますね」
「そうだね」
「どうしてワクワクするんでしょうか?」
「さあ、確実なことは言えないけど僕視点で考えたら初めてのことだからかな?」
「確かにそうかもしれませんね」
隣を歩く桜木の表情は何処か嬉しそうだ。
やると言うこともあり、いつもと少し違う桜木を見れていいと思う。
その後も様々な雑談をしながら、電車の場所まで向かう。時間のこともあるので、他の生徒に見られる可能性が低いので気楽に話せる。
桜木と話した内容は、この1週間で起きた事が中心だった。
鮎莉と住吉がいい感じに失敗したり、堀川先生が見た目にそぐわず、バリバリなんでもできる人だったりとこの1週間本当に濃厚な時間だったことを知ることが出来た。
気がつけば僕たちは駅前までついてたい。
「あっという間でしたね」
「そうだね、友達と喋ると時間が過ぎるのは早いね」
「また、こんな時間を過ごしたいです」
それを言う桜木の姿は夢見る少女みたいだが、そのままのイメージと違い、ささやか過ぎる夢だし、その表情は現実を少々見過ぎている。
「これからでもこう言った機会はいくらでもあるよ、ないなら作ればいい」
「ふふ、そうですね」
僕の言葉に桜木は同意した後に笑う。
「今日はありがとう。また明日」
「こちらこそ、また明日」
そうして、僕たちは別れて家に帰るのであった。




