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名前だけの人生相談部に学年1の美少女が人生相談に来てしまった。  作者: 時雨白
第4章 必要なのは広い視野と冒険させられること
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目指すべきもの

「今回はあくまでボランティアのようなものだ。俺のことは一切気にしなくていい、それにこの部活のこともある程度知っているなら、色々秘密を抱えているのも分かるだろう?」


 後ろの席に座った堀川先生は、私たちにそう言う。


 私は大丈夫なのだが、鮎莉は少し気になるらしく。あまり集中できていない様子だ。


 大友くんは一切気にしていない様子だ。


「堀川先生もこう言っている。鮎莉もとっとと授業に集中しろ」


「いや、だって気になるじゃん」


 ソワソワしている鮎莉に対して、大友くんが注意するが、それでも気になるものは仕方がない。


 最善ではないが、授業には影響がないので始めようとした時、大友くんは鮎莉に対してさらなる言葉を投げかける。


「それで桜木の足を引っ張りたいなら、そのままでいるといい」


「・・・・・・」


 大友くんは鮎莉に対して痛烈な言葉を投げかける。


 それを聞いた、鮎莉は先程までソワソワした表情から、一瞬で真剣な表情になる。


「私が葵ちゃんの足を引っ張るわけがないじゃん」


「あとちょっとで足を引っ張りそうだったやつがよく言う」


「ふん」


 大友くんの言葉は鮎莉にとって大切なラインをいい感じに踏み越えたのだろう。鮎莉と大友くんの間で火花が散るが、じゃれあいのように感じる。


「いい関係だ」


 その様子を見ていた堀川先生も二人の様子を見ていてそのように発言する。


 二人の準備も終わったことなので、私は授業を始める。


 大方の進め方などは、私が考えたのといつも先生たちがおこなっている授業を参考にしている。


 授業の進め方などは普段意識していないので、今回のことをきっかけに考えるようになったが、そこにもしっかりと生徒が分かりやすいように考えられており、学ぶことは多かった。


 先生や、鮎莉たちの視線がこちらに集まるが、立場上最も多くの人に、より重要な場面で注目されることが多いので、特に緊張することなくスムーズに授業を進めることができている。


 要点を的確に教えながら、それをしっかり理解しているのかたまに問題を出したり、質問をする。


 こう言った、生徒が何かしらするような事は非常に重要だ。授業する立場で考えないとあまり思いつかないが、人の話を聞いているだけでは、たまらなく集中が途切れやすい。


 なのでこのように定期的に当ててあげる事で、頭を動かして集中を維持できるようにすることも大切である。


 そんなことをしながら、私は無事50分の授業を終わることができた。


「今日はここまでにします」


「はー、終わった」


「とても分かりやすかったよー!」


 授業が終わり、鮎莉たちはそれぞれの感想を述べる。


 概ね、満足のいくものができたようでよかった。


 パチパチと授業を見ていた、堀川先生がこちらに拍手をする。


「流石は完璧美少女と言われている桜木だ、初めてであのクオリティーではすごい。100点ではないが90点以上のものだ。今から教師を目指してもできるかもな、それぐらいすごかった。殆どいう事はない」


 堀川先生は私の授業を絶賛する。その表情は本当にすごいと思っているような表情であった。


 私の授業は無事に成功した。みんなの反応を見てもそう見ていいだろう。


 そう、成功をしたはずなのだから何処かしっくりしていない。


 とても重要なことを見落としているような気がしてならない。


 そう思い、もう一度振り返るが、特に問題などはない。鮎莉たちからはわかりやすいと言ってもらい、堀川先生も私の授業を褒めてくれている。


 問題はないはずなのだ。十分な結果は出せているし、この勉強の意味を見出しているはず。


 やっぱり私の気のせいだと思い、次のための準備をしようとした時だった。


「本当にそれでいいのか?」


 私の中の何かが、そう問いかける。


「私が見てきた隅風は言ったことをただその通りするだけでいいことをした事はあったか?」


 その言葉に、私は今までの隅風のことを振り返る。


 何処か達観していて、あまり運がなくて、いつも優しい表情をする彼だが、誰かを助ける時、特に私自身の問題の時、彼は大まかな道筋は教えてくれるが、決して答えまでは教えてくれない。


 常に重要なピースは私に考えさせる。


 ならば、今の私はなにかを見逃している。


 この時、隅風ならどうするか。隅風なら、物事の本質を振り返り、明確にして、自分のしていることが本当に正しいのか、確認する。


 今まではなんとなくしか分からないかったが、授業の準備を通して、役割をしっかり理解することの大切を知ることができた。


 だからこそ考える、この授業の目的とは。


「これは一気に点数を伸ばすものではない。これは90点から100点へ、100点から120点へ、1点1点を地道にあげる作業だ。簡単に言うなら詰めの作業だ」


 そう、これは詰めの作業。最善ではなく最高を目指す作業なのだ。


 だからこそ、必要なものがわかる。


 違和感の原因を理解した私は堀川先生に向けて問う。


「堀川先生、私の授業を100点以上にするにはどうすればいいんですか?」


 それを聞いて堀川先生は嬉しそうな表情をする。


「隅風の言っていた通りになったか。桜木、合格だ。俺なりの授業へのアドバイスをするとしよう」

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