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名前だけの人生相談部に学年1の美少女が人生相談に来てしまった。  作者: 時雨白
第1章 人生相談部初めての相談
4/72

二回目

「桜木が学校に連絡もなしに休んだようだ。遊んでいた友達からの連絡も出ないらしい。どうする駿人?」


 昼休憩の時、住吉は僕にそう言った。


「そうか」


 報告を受けて僕は端的に答える。


「動揺はしないんだな」


 その様子をみた住吉は冷たい声で答える。


 住吉の言いたいことは分かる。きっとだが、桜木の行動には僕が少なからず原因があるのだろう。もしかしたら、詳しい原因まで知っているかもしれない。


 そういう訳で、僕に助けに行けと言っているのだろう。


「ある程度予測できたことだからな。まあ、外れてほしかったという所もある。」


 そう、これはある意味で予想出来たことだった。


 一か月前、あの相談をされたとき、いくつか疑問があった。


 確かに、将来と今どちらかを選ぶべきか、それは答えを出すことが非常に難しい問題だ。


 しかしながら、誰かに相談する、それも赤の他人に相談するレベルで追い込まれるようなことになるのだろうか?


 相当のことが無い限り有り得ないと僕は考えている。


 なのに桜木葵という人物はそれをした。


 その時点で、彼女にはそこまで追い込まれる何かがあったのだろう。


 そのことが分かっているのに、僕は踏み込むことを避けた。 


 理由を挙げるならいくらでも挙げれるが、そんなのは意味がない。


 要は責任が怖くてビビッて逃げましたというわけだ。


 だからこそ、僕は桜木に慎重策である、少しづつ変えていこうと提案し、その方法を全て押し付けた。


 彼女一人だけでは、失敗するかもと分かっていながらな。

 

 やっぱり、人生相談なんて簡単に受けるべきではないな。


 僕は席を立つ。


「どうするつもりだ」


「今から桜木を探しに行く。住吉は僕が急用で早退しましたと先生に言ってくれ」


 そう言いながら、僕は素早く荷物の整理をする。


「待て!今から行くつもりなのか!」


「当然だろ?」


 僕の予想外の行動に住吉は驚愕し、信じられないといった表情でこちらを見る。


「お前、優しいのか冷たいのかよく分かんない人間だな」


「自分が変な人間だというのは最初から分かっていたことだろ」


 そう言って僕は苦笑いする。


 僕が他人と色々な所でズレていることは自覚している。


「何ができるかは、分からないが。出来ることをしてくるよ」


 僕は桜木を探しに行くために荷物をまとめ、大雨の中傘を二つ持ち学校から出ていく。




 外はかなりの大雨だった。


 傘なんて気休め程度だった。


 さて、何処から探そうか。


 勢いよく学校から出たものの今、彼女がどこにいるか何て分からない。


 頼りになるとしたら、住吉から聞いた桜木さんがどのような所で遊んでいたか程度の情報だけだ。


 だから、僕はそこを一つ一つ虱潰しに探していく。


 運賃などお金もどんどん消えていく。


 そうして、学校を出てから2時間程度経った頃だろうか。


 ようやく僕は桜木の姿を見つけることができた。


 桜木はこの雨の中、傘を持たず、ブランコに乗っていた。


 もうこの状態で何時間いるかは分からないが、彼女の姿を見ていると、相当長い時間いたのだろう。


 そんな彼女に僕は近づく。


「そこにいては風邪を引いてしまいますよ」


 そう言ったが、彼女からの反応は一切返ってこない。


 なので僕は、彼女が返事が来るまで、静かに待った。


 その状態から大体1時間30分程度経ったのだろうか。


「どうして何処かにいかないんですか?」

「僕があなたのことを心配だからですよ」

「すいません、そういうの無理です」

「なん・・・・・・だと」


 こういう時にどのような言葉を言えばいいのか分からないので、今思っていることをそのまま口にしたが、ダメだったらしい。


 僕の心にぐさりと言葉の刃が突き刺さる。


 僕はかなり落ち込む。


 たとえ自分がそういう存在だと分かっていても、堂々と言われるとへこむものである。


「冗談ですから、そんなに落ち込まないでください」


 あまりの落ち込みようだったのか、励ましの言葉をくれる。


「そうか、冗談か、冗談だよな」


 そうやって自分言いかけせて、精神安定を図る。


 そして、一旦深呼吸して、気持ちを切り替える。


「取り敢えず、あそこに行きませんか?このままでは体に悪いですよ」


 そう言って、僕は公園の中央にある屋根付きベンチみたいなところ指さす。


「そうですね、私も大分頭が冷えました」


 桜木はブランコから離れ、屋根付きベンチの所へ行く。


 ベンチに着くと僕は持ってきていたタオルと暖かいお茶を渡す。


「ありがとうございます。」


 桜木はお礼を言って、それを使う。


 それから僕たちの間に静寂が訪れる。


 こういった時に気の利く言葉をかけることができない。


 住吉ならいい感じに会話とつなげることができるのかなと考えながら、彼女が落ち着くまで待った。


「それでこれからどうしますか」


 桜木が落ち着いてのを見て、次にどうするか聞く。


「そこは、隅風くんがカッコよくリードしてくれる所ではないのですか?」

「出来たらよかったんですけどね・・・・・・」


 彼女の返しに僕は苦笑いしなが力なく言う。


 というか桜木は意外とピンピンしている。


 これ僕いらなかったんじゃ。


 だんだん、自分が行動する必要がなかったように思えてきて辛くなる。


 だけど名前は憶えていてくれたらしい。


 それは地味にうれしいことだ。


「どうしてこうなっているのか、聞かないんですね」

「聞く必要がないですからね、話したかった話すし、話したくなかった話さない。そう言ったものじゃないんですか?」


 僕は基本的に自分から動くことはあまりない。


 何かを知っていたとしても出来ることはあまりないのだ。


 出来ないことを無理してやろうとしても失敗するだけ、こういうのはゆっくり取り組んでいけばいいと、僕の人生経験から学んでいる。


「なら少しだけ、聞いてくれますか?」

「どうぞ」


 そう言って桜木は語り出すのだ。


「隅風君のアドバイスを受けて、友達と遊ぼうとしたんですが、私から誘ったことなくて、どうすればいいのか最初は悩んでいたんですが、私にはとてもいい友人がいたようで、その友人が私の様子から察してくれたのか、遊びに誘ってくれました。本当にうれしかったです。そして、少しづつですが、遊ぶことの楽しさとかを知ることができました。」


 本当に楽しそうに桜木は語る。いい友人と出会えたようでよかった。


「そんな風に少しずつ、新しいことにチャレンジして、新しいことを知れて本当に楽しかったです。ただ、私はそれを楽しみ過ぎてしまいました。成績が落ちてしまって、お母様に怒られてしまいました。」


 最後の方に向けて、罪悪感と恐怖が滲んだ声色になっていた。


「隅風君、私はどうすればいいでしょうか?」


 あの時と同じ質問だ。だけど、あの時とは状況が違っている。


「逆に、桜木さんはどうすればいいと思いますか?」

「今回は聞き返すんですね」


 あの時は、余裕がなかったが、今の桜木には余裕がある。ならば、前回よりも広い視野で考えることができるはずだ。


「勉強と遊びどっちもさらに頑張る?」


 彼女は少し悩んだ後に、とてもシンプルな答えを導き出す。


 その答えに僕は少し笑ってしまう。


「何笑っているんですか?」


 そういって、桜木はこちらを睨む。


「ごめんごめん」


 といいながら桜木をなだめる。


「確かに、両方とも頑張ればいいかもしれない、だけど、桜木さんはもう一人ではないんです。友人などに助けてと頼んでみては?」


 そう言うと桜木はあの時と同じように、ポカーンとした表情になる。


 この表情を見るのも2度目だが、よく見るとかなりかわいいなと思う僕だった。


 そして、あの時と同じように僕の言いたいことが理解したのか、ほっとした表情になる。


「もう、私は一人じゃないんですね」


 考え深くと言わんばかりに桜木は言う。


「一人では分からないなら、二人で考えればいい。桜木さんには信用に足るいい友人がいるのでしょう。その人ならきっと助けてくれますよ。」

「そうだね、あの子ならきっと助けてくれる」


 彼女は確信したように言った。どうやら今回こそは上手くいきそうだった。


 そして、先程まで降っていた雨も止んだ。


「虹が綺麗ですね」

「そうだね」


 そうして、目の前にはっきり見える大きな虹を見てそう桜木を会話をした。


「葵ちゃん!こんなところにいたんだね!」


 虹を見ていたら公園の入り口から、桜木の事を言いながらこちらに近寄ってくる女子生徒がいた。

そのようすから桜木の友達なのだろう。


「それじゃ、僕は邪魔ものにならないように帰るとするよ」


 そう言って僕はそそくさとその場から離れる。桜木は何か言いたげだったが、近づいてくる友達によってそれは防がれる。

 

 ちなみに、僕がこの場から離れたのは見知らない女子と話すのが苦手だからとか言う理由じゃない。


 公園の出口まで行くと、一人の男がいた。

「逃げたな」

「逃げてない」


 愉快そうにこちらを見てくる住吉を無視して僕は公園から出ていく。


「今回こそ、上手く言ったか?」

「うまくできたと思うよ」

「そうか、それは良かった」


 そう、桜木とその友達が最初に遊んだ公園を後にする。


「それにしてもお前ビショビショだぞ」


 まあ、傘を使っていても、4時間近く大雨の中にいたのだ。まあ仕方ない事だろう。


「熱でも出さないといいな」

「そうならないように善処するよ」

「なったら、笑ってやる」


 そう言って僕たちは帰宅の帰路へと向かうのであった。、

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