物事を上手く進めるために大切な事
「よ、駿人」
「おはよう、住吉」
次の日の朝、登校中に住吉と出会う。住吉は少々眠そうな表情をしている。
「疲れているそうだが、大丈夫か?」
「その原因は、あんなことを始めたおまえが原因だけどな」
「まだ、勉強は始まっていないんだから、そんなに疲れるような事はない筈だが」
その原因について、聞いたらこちらをうらめしそうな目で見つめ返してきた住吉に違和感を持ち聞いた。
住吉は生徒側である為、あの後は普通に範囲を確認するだけの筈だ。疲れるよほどのことではない。
それとも、桜木の授業準備を手伝ったという線もあるのだが、それではこの勉強法の効果を薄める結果になってしまう。
教えてもらう側は分からない状態でいることが望ましいのだ。だからこそ、教えてもらう側が授業準備を手伝ってしまうと、ある程度の内容が分かった状態からになってしまう。
それはあまり望ましくない事なのだ。
しかし、そのような単純のミスを鮎莉たちがするとも考えにくい。
「俺もそう思っていたんだがな、桜木の成長のためには俺たちが鍵なんだろう?だから、鮎莉がより桜木が成長できるために、どのような生徒がいいのかを調べようと言い始めたんだ」
「ああ、なるほど。」
「だから、あの後時間ギリギリまで鮎莉と調べた後、それでも完璧ではなかったから、家に帰ってから電話で夜中まで二人で考えたから眠いんだよ。」
そういって、住吉は眠そうにあくびをする。
教えてもらう側がどうすればいいのか、それを考えるのは意外と難しい。なぜなら、一度もそのようなことを考えたことはないからだ。
桜木の授業を楽に進めるのであれば、予習をして、手間がかからない生徒になればいいのだが、今必要なのは、丁度よく手間がかかる生徒であり、その定義はかなり難しい。
「鮎莉は桜木の事になると、無限のやる気が湧き出てくるから、それに付き合う側のこちらも結構大変なんだ」
「あははは、、、、」
昨日の様子から見て、住吉に拒否権などなかったのだろう。いつもすかした感じでいる住吉が鮎莉に弱腰で付き添うイメージが思い浮かべ笑ってしまう。
その姿を見るために、昨日は部室にいた方がよかったかも知れない。
惜しいことをしたなと考えていると、そろそろ学校が見えてくる。
「そういえば、駿人は昨日何をしていたんだよ」
「昨日は、もしやることが無くなったように追加の範囲を作成していた」
「は・・・・・・?」
僕の言葉に衝撃を受けたのか、ポカンとした表情になる住吉。
「どうしたんだ、そんなに驚いて」
「いやいや、それはこっちのセリフだ。あれだけの量を終わると考えているのか?」
「出来るとは考えているよ、だけどかなりギリギリを責めたはずだから。これを作る必要なないかもね」
「なら、他にやることがあるんじゃないか?」
今回、桜木が出来ると考えられる最大量をそのまま活用して、やっている。一応、全てできなくとも八割ぐらい出来れば、十分な効果を得ることができるようになっている。
正直、昨日はクレームの連絡が来ると考えていたが、それは一切なかった。
「僕もそう思うが、昨日クレームがなかったのと、遊びの時に所々で見せたチャレンジャ―て言えばいいのかな、逆境であればあるほど、燃え上がるような所あるじゃん、ワンチャンこれを超えたいとか燃え上がっている可能性も感じて用意したんだ。」
「あーーー、確かにそう言った所あったよな。普段の様子からだとあまり想像が出来ないが、遊んでいたからこそ気が付いたことだな」
「全くだ。あの時遊んだのは確かに友情といった面でもよかったが、それ以上に桜木の新たな面を知れたことが大きかった。」
「ホントそうだな」
あそこで、桜木の本当の性格を少し知れることができたからこそ、より桜木にあったレベルに合わせることができた。
ただ、問題があるとしたら、そのチャレンジャー気質がこちらの想像以上の可能性があることだ。あれはある意味爆発力がある。昨日みたいに変な方向性に爆発すると非常に厄介なことになる。主に僕が、それに簡単に乗り越えられるのはあまり気に食わないので昨日は、もしもの場合に向けて差ならる準備をしていた。
「大変そうだが、なんだかんだそれを楽しんでいるんだろ?」
「それは確かにあるな。じゃないと夜中の2時までどう桜木の授業を受ければいいのか考えたりしたりはしないからな」
「それは良かった」
何かをなすためには、能力や手腕、チームワークなども必要だが、最も必要なのはそれをしたいと思う気持ちだ。
やりたくないと思っていると、その質は半減する。
自分でやりたいと思って行動するのが、物事を上手く進めるための、大切なキーだと僕は考えている。
「それに今回は体育があるかなら、そこで鬱憤を晴らせるしな」
「住吉が活躍するのは期待しているよ」
そうして、僕たちは自分たちの教室に着いた。




