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名前だけの人生相談部に学年1の美少女が人生相談に来てしまった。  作者: 時雨白
第4章 必要なのは広い視野と冒険させられること
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駿人の勉強法

「私も葵ちゃんに何か教えることはできないかな」


 鮎莉はしゅんとした表情をして落ち込む。


 そんな鮎莉に桜木は「大丈夫だよ」と言って慰めている。


「それでどうするんだ?もしかして、駿人は実は超頭がいいタイプでしたみたいなパターンか?」

「もしそうなら、僕はもう少し別の道を歩んでいたよ」

「それもそうか」


 住吉が納得したような表情をする。自分で言ってはなんだが、こうも納得した表情を見るとなんだが複雑な気分になる。


「それで本当にどうするんだ?まあ、どうせもう何か考えついているんだろ?我らが参謀さん」

「勝手に役職を押し付けるな。まあ、今回はその立場になるつもりだったからいいんだが、それにやることは既に住吉が言っただろ?」


 僕の言葉を聞いた住吉は、はてなマークを浮かべる。


 別に頭が良くなくても協力出来ることなんていくらでもある。それに気が付き、最大効率にすればいくらでも使える。


「言っていたじゃないか。桜木に教えてもらうんだよ、勉強をね」

「教えてもらう?」


 僕の言葉の意味が分からなかったのか、まだしっかりと来ていない表情をする。


「桜木に質問だが、桜木は人に何かを教えたことはあるか?」

「何回かはあります」

「人を教える時に必要だと思ったのは?」

「相手に理解してもらえるように、そのことに関して深く理解して、比喩とかを活用して分かりやすく伝えることです」


 桜木は僕の質問の真意を理解したのか、納得した表情で答える。


「二人だけ分かったような顔をしてないで、俺たちにも教えてくれ」

「簡単な話だ、人に何かを教えるとなると、そのことに関してより深く理解する必要がある。そして、理解が甘いと相手は分からないと、こちらの理解が甘いことを教えてくれる」

「なるほど!そういうことね」


 鮎莉も理解したようで成程と感心した表情をしている。しかし、住吉はまだしっかりと来ていないようだ。


「もっと分かりやすく伝えてくれ」

「住吉は前回のバトミントンで見せた、鋭いスマッシュをどうやって打っているんだ、鋭いスマッシュを打つ参考にしたいから教えてくれ」


 そのように聞くと住吉は少し考える上で答える。


「落ちてくるタイミングを見極めて、タイミング良く助走をして、体全体を使うようして、勢いよくラケットを振り抜く」


「落ちてくるタイミングの見極め方が分からない、タイミング良くというが、具体的にはどのように判断すればいい?体全体を使うというが、それが出来るようになる為にはどのような事を意識すればいいんだ?」


「あ、、、お前の言いたいことが分かったわ」


 僕は住吉の説明から自分の感覚では分からないところを質問した。その質問によって住吉も理解してくれた。


「住吉も理解してくれたと思うが、人に教えるには自分達が持つ、感覚を排除もしくは、相手でも分かるように何かしらの言葉で伝える必要がある。ある意味で基本と応用の関係に近いと言える」


 そうして、僕はホワイトボードを使いながら、出来るだけ理解してもらえるように伝える。今回の作戦においての教えるという行為の意味を理解することが非常に重要になってくるからだ。


「基本をしっかりと理解していなければ、応用は難しい。それは何故か、応用に必要なのは基礎となるものの、特性や構造、どうしてそうなるかを知り、それを上手く活用する必要があるからだ。だからこそ、基礎は非常に重要だ。教えることに関しても全く同じだ。僕達が無意識の間に感覚に頼ってしまっている。別の言葉に変えるなら才能と言ってもいい。」


 出来るだけ分かりやすく伝える為に比喩を活用する。


「普段から無意識に才能に頼っていることにより、僕達が理解していると思うのは、基礎+才能=>理解できるラインになっている。」


 さらに分かりやすく、ホワイトボードに数字を書く。


 理解できるラインが10として基礎が3、才能を13とする。


 先程の式に当てはまると


 3 + 13 =>10


 になる。


 数値という視覚化することでよりイメージしやすくなる。


「これを応用するとなると、理解のラインは大体2倍になってくる。それと同時に、活用の方法というもう一つの要素も入る」


 基礎 + 才能 + 活用の方法 => 応用ライン


 3 +  13 +  4 = > 20


「これはあくまで例であり、数値は実際とはそこそこ異なるから、そこは意識しておいてね。そして、これを教える場合に当てはまるとこうなる。」


教える人


3+13=>10


教わる人


2+4 =>10


 そして、教える人は基礎の数値しか上げられず、自分の数値より上げることは殆どの場合できない。


「これじゃ、教えることは出来ないね」


「そうだ、教える人と教わる人で才能差が9あり、さらに言うと自分と同じ数値まで上げる事も難しい、大体−2ぐらいを想定するべきだ。」


「そうなると、教える側その分基礎を鍛える必要がある、教わる人が理解できるラインに届くためには最低でも8以上にしないといけない」


「そう、教えようとなるとこの様に、才能で賄っていた所が明確分かると同時に、教えるために基礎を鍛えることになる、そうなると結果的にこうなる」


教える人


8+13 => 10


になる。


「基礎のやつだけで応用に対応できる様になるか」

「正確に言えば問題を解く速度が上がる。この数字がラインよりも上であるほど、解くスピードが速くなり、また総合的な実力が上がるからより高度な問題も解ける可能性が高くなる」


 数値で表したことで、客観的な視点で考えられるのか理解も早い。


「教えるやり方といい面として、才能に任せて疎かになっている基礎の所を気が付ける上に、他人のために教えることもあって、高いレベルで基礎を身に着けることができる。ただ、悪い面もある。それは基礎を出来ていることを前提にしているから、この勉強は一定以上の実力が必要にされるのと、結局やることは詰めの作業に変わらない。ゲームでいうエンドコンテンツに近く、手間も時間もかかり、すぐには成長は見込めない」


 これは地道な作業だ。多くの時間を使い一点一点積み重ねていく作業である。


 時間も手間もかかるが、それによって作られた土台は固く丈夫なものであり、今まで足りていなかった所を解決し、今まで不安定な土台で発揮されていた才能は、安定した土台の元、その真価を発揮するだろう。


 今の桜木において必要なのは、新たなる力ではなく、自身が持っている、完璧とまで言わしめる才能と今まで頑張ってきた努力が全力で活躍出来る土台を作ること。


 一点の差が関わってくる桜木にとってこの手法は考える限り、最適解になりうる筈だ。


 これが僕が考えた勉強法。

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