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楽しかった1日

「それで昼ごはんはどうする?」

「あーそれどうしようか」


 しばらく喋ってから昼ごはんをどうするのか聞く。


「バトミントンも中途半端で終わってしまったしな。」

「まあ、それぞれで買う形でいいんじゃない?」


 取り合えず無難な選択肢を挙げておく。そこで住吉に何か思いついたのか、表情がにやける。


「ここはジャンケンで決めようじゃないか?」

「私は賛成ー!」

「みんなに任せます」


 じゃんけん、それは僕にとって最大の天敵。負けたくない時は必ず負け、勝ちたくない時は必ず勝つ。


 とても負けそうに思えるが、ここで拒否して雰囲気を壊すのも嫌だ。つまりここは賭けなければいけない。


「よし、やろうではないか!」


 僕は重く、一つの覚悟を決めた表情をしていう。今回は桜木を助けた時のように、直感が働くかもしれない。


「それじゃ、やるか」


「最初はグーじゃんけんぽい!」


 僕は直感に従い戦った。


「いやー、人の金で食べるご飯は美味しいな」


 このフードコートで最も高いステーキ丼を食べる住吉の表情は本当に美味しそうに食べている。ちなみに値段は2500円だ。


「そりゃ、よかったですね!」

「私が代わりに払いましょうか?」

「桜木、これ以上僕を惨めにしないでくれ」


 じゃんけんの結果、僕は一人だけグーを出し、みんながパーということで見事に一人負けをした僕は気分が沈んでいる。


「葵ちゃんも私に遠慮しないでどんどん食べて!」

「ありがとう、鮎莉」


 一人で全員分の奢りは酷なので、もう一人じゃんけんで決めた。その結果、負けたのは鮎莉だった。


 と言ってもあれは完全にわざと負けにいっていた。


 やはりこういった所の運のなさはどうにかしたいものだ。遊ぶ前より随分と軽くなった財布のことを思いながら、僕たちは昼食を食べるのだった。


 昼食を食べ終わった僕たちは、そのあとはカラオケにビリアード、ボーリングなどで遊んだ。


 誰も僕はあまりやったことが無く、どれも散々たる結果になったが、桜木がとても楽しそう過ごしていたので、結果的には良しである。


 そうして、時間も過ぎ僕たちはレジャー施設から出て帰りの電車へと向かう。


「今日は本当に楽しかったです。一緒に遊んでくれてありがとう」

「それはこっちもだよ!」

「ここまで遊んだのは久しぶりだな」

「そうだね」


 それぞれが今日1日を振り返る。色々とあったが終始楽しめたので、鮎莉と住吉が考えた遊びプランは成功したと思える。


 それぞれが今日の感想で話していると、駅へとつく。


「それじゃ、また学校で」

「はい」


 最後にお別れの言葉を言ったあと、僕たちは解散する。なんだかんだあったが楽しかった遊びも終わりを告げた。



桜木葵視点


 私たちは電車の席に身を預け、静かに過ごしていた。


 これは鮎莉が今日沢山遊んだ私のことを気遣って、寝てもいいよ。起こしてあげるからと言ってくれたからだ。


 こんなに遊んだことがなかった私はそれなりに疲れており、眠たかったこともあり、鮎莉の言葉に甘え、休んでいる。


 私のために色々と考えてくれた3人には感謝が尽きない。鮎莉も大友くんも非常に楽しんでくれてとてもよかった。


 隅風も楽しんでくれたのかな。


 私は隅風のことを思う。


 なんだかんだいって、私たちの中で一番頑張っているのは隅風だ。プレゼンの時だって、一切休まず、誰よりも長く活動をしていた。


 だからこそ、今回、私的には一番労われて欲しかったのは隅風だ。


 バトミントンの件など色々あったが、遊んでいる時の隅風は楽しんでいたように見える。ただ、心の底から楽しんでいたと言われると、断言はできない。


 隅風はどこか達観しているところがある。そのこと自体はいいことだと思うが、そのせいか常に先のことを考えており、今を純粋に楽しめていないような気がする。


 ある意味で隅風は私より楽しいということを知らないかもしれない。もしそうなんだとしたら、私は隅風に知ってほしいと思う。


 この感情がなんなのかよく分からないが、ただひたすらにそう思うのだった。


 だが、それをするならまずは、自分の問題を片付けなければならない。差し当たっては1ヶ月後に控えているテストでしっかりと結果を出さないといけない。


 いい結果を出せるよう、3人は私のために頑張るだろう。ならばそれに応えないといけない。


 私は今後に向けて決意を決める。3人の努力を絶対に無駄にしない為にも全力で頑張ると、そして自分の問題を解決したならば、私を助けてくれた3人に恩返しをするのだと。


 私は新たな目標を見つけた。



桜木竜馬視点


「この度は、誠に申し訳ございせんでした。この度の事件は私たちの管理ミスです。」

「落ち着いてください、今回の私たちは次に企画のための参考にするために軽い視察に来ただけです。このような形になってしまいましたが、大きな過ちではありません。今回の件については軽い処分で終わると思います」


 次期社長候補と言われている俺が来たことから、何かしら厳しい処罰されると考えたのか、かなり怯えていた。本当は別の目的で来たわけなのだが、想定以上に問題が多く、大きな問題になる前に対応する必要があるだろう。


 ある程度の対応を終わらせた俺は、フードコートに待たせている秘書の所へと向かう。


「あー、終わりましたか!これ、お会計です。よろしくお願いしますー!」


 俺の秘書である、青木実(あおきみのる)こちらを見つけるなり、レシートを渡してくる。合計金額は1万円ほど、ここは高くても3千円程度のものしかないのだが、何を頼んだことやら。


「会計を主にさせる秘書など聞いたことないぞ」


「私たちはこれでいいんですよ!それに今回は竜馬とのデートだと思っていたんですが?」


「確かにそういう気分でいいとはいったな」


「竜馬の頭が固すぎなんですよーだ」


 そういって、実は美味しそうにステーキ丼を食べる。


 天真爛漫なこいつに幼い頃からどれだけ振り回されたか、思い出すだけもため息が出る。それでもこの子犬みたいに愛くるしい容姿と、どんな時でも明るく接してくれるところは全体の雰囲気が明るくなるので、とても助かっている。


 しばらくすると、実はステーキ丼を平らげる。丼はとても綺麗な状態だ。


「この後はどうしますか?竜馬の家に行って熱い夜でも過ごします?」


「今回は完全なプライベートでもないんだ。やるべきことをしないといけない」


「それだから、竜馬は頭が硬いんだよ。仕事仕事、全く付き合わされる私の身にもなってよね!」


「毎回、ウキウキでついてくるし、今回みたいに散々強請ってくる癖に何を言っているんだ」


 その上、勝手に行動したら後から散々問い詰め、駄々をこねるのだから理不尽というものだろう。


「それで、実から見てどうだった?」


「いいんじゃない?葵ちゃんとても楽しそうにしてたよ。色々問題があるかもしれないけど、しっかりとカバーも出来ていた。特にバトミントンの所とかは凄かったね!実力もそうだけど、助けた所、あれ凄すぎるよ、よく気付いたなという感じ、私みたいな、いい友達を持てたと思うよ」


「最後の所で、自分の事を入れなければ、いい解答だったなのにな」


「なにそれー?私はいい人じゃないと!?」


「どちらかと言うと、手間のかかるペットだな」


「ヒドイ!私、とても頑張ってるのにペットだなんて、ある事ない事会社の中でいいふらそー」


「実が言うと、いつも収拾がつかなくなることの方が多いんだからやめて欲しいな!」


 俺と実の関係は周囲から散々茶化されるので対応するのが地味に辛いのだ。


 だが、実から見ても、妹は楽しそうに過ごしていたらしい。そのことを聞けて安心する。家族の事は色々あり、俺だけではしっかりと判断できるか不安だったので同じ女性としてからの意見も聞けて良かった。


「そんなに心配するなら、葵ちゃんにハッキリ言えばいいのに、「俺は葵の事が可愛くて仕方がないんだ。父も母も厳しいかも知れないが、お前の事を愛しているんだ。何か困った事があったら言ってくれ、竜馬お兄ちゃんが絶対にどうにかしてやるぞ!」みたいな感じでね」


「そんなこと言う訳ないだろう!」


「えーーー、この意気地なし、ビビりー」


 実はあのように言っているが、実際のハードルはかなり高いのだ。現状の葵を作り出した半分ぐらいの責任と原因は俺にある。


 それに今は会社としての立場がある。よって下手な手を打てず、遠くから見守る感じで、動ける時に動けれる立ち位置を維持している感じだった。


「それで、調査はどうするの?」


「疑う要素も殆どないし、白を出してもいいかもしれないが、もう少しだけ続けることにする」


「竜馬がそう決めたなら私はそれに従うよ」


 実は何も聞くことなく、俺の意見に賛同してくれる。


 たま、お会いしたらか。先程、対応をしていたスタッフから伝えられたものだ。


 この言葉を彼は一体何を思っていったのかは分からない。ただ、何かは起こるのだろう。そんな予感をしながら、俺たちはレジャー施設を後にする。


「この後は高級ディナー行った後ホテルですかね?」

「いや、行かないからね!?」

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