遊びの実力
「それで、今回遊ぶところがここか」
ひと悶着あったあと、僕たちは住吉に先導されながら、今回遊ぶところまで連れてかれる。
「そう、シューティングゲームから、カラオケにバトミントントン、それにボーリングなど遊べるのもが多い、レジャー施設だ。ここなら特に気を遣わずに遊べるだろ?」
「確かにな」
住吉の選んだ場所は、スポーツやアミューズメントを詰め込んだ、大人から子供まで思いっきり楽しめるレジャー施設だった。これならば、僕や桜木といった遊び素人でもバトミントンなどといったルールも理解できて楽しめるものがあり、何をすればいいのか分からないと言ったことはない。
よく遊んでいる組からしても、楽しめるので迷惑と言った感じはない。
それに数多くの遊びが存在するので、一日暇することなく遊べる点でも後味が悪くならないといった利点もある。
初めての友達と遊ぶとしたらかなりいい選択肢になるだろう。好き嫌いがあったとしても、これだけあれば、上手く回避することも可能。
住吉と鮎莉はしっかりとこちらの事を最大限考慮した上で上手くやってくれたようだ。朝の事もあったが、こういったことはしっかりやってくれるのでとても助かる。
それに今回の服装も納得した。桜木に少しでも楽しんでもらうため、行き先を秘密にするついでにスポーツなど動いても問題のない服装を選ぶことで、些細な事故まで防ぐことに成功している。
細かなことだが、こちらの事を本当に考えてくれているということが分かり、うれしい気分になる。
「色々あるんですね」
桜木もこういった施設は初めてなのかキョロキョロと周囲を見回している。その表情はとても楽しそうだ。鮎莉たちのもてなしが上手く成功している。
「バスケとか葵ちゃんでも気軽にできるものがあるから、今日は一緒に楽しもうね」
「うん、そうだね!」
「住吉たちもしっかりと守ってね」
「分かってるよ」
「あはは、、、」
さすが、学校一の美少女と言われるうえに、今回は鮎莉が自信を持ってコーディネートした服を着ている。普段からでも存在感があるというのに、今は存在感が数倍に増している。
つまり、現在の桜木は多くの人から注目される存在になっている。そうなるとこちらに近づいてくる不届き者がいるかもしれない。
もし、ナンパじみた事があった場合は、楽しい友達との思い出に嫌な思い出が残ることになるかもしれない。よって、僕たちがそんなもの達から二人を守る必要がある。
近づかないように警戒し、それでも近づいてくる人には地獄を見せる必要があるだろう。ていうか、先程の鮎莉の守ってねという言葉からには,「もしも何かあったらどうなるか分かってるんだろうな」といった、圧を感じた。
こちらがしくじった場合は、こちらが地獄を見せられる可能性がある。鮎莉は鮎莉で僕たちと別のベクトルで恐ろしい所がある。間違いなくこちらに地獄を見せれるほどの実力がある。
しかし、守ると言っても僕は影が薄く、抑止力としては不十分なのは明らかなので、ここはイケメンでそれなりに存在感がある住吉に任せよう。
いや、本当に物騒な方面では非常に頼りになる男だ。治安が悪い所でも住吉だけは何も問題はなさそうだ。
そんな感じで、僕たちは入場券を購入して、アトラクションなどがある場所に向かう。
道中でパンフレットとを受け取り、何があるかなどを把握する。ビリヤードなどもあり、想像以上に多くのものがあるので、本当に一日中楽しめそうだ。
特に見ていると、人気項目である、ローラスケート、カラオケ、それとドリンクバーなどの飲食スペースが隣接しており、時間帯によっては非常に人が集まりそうな場所もある。そこら辺を使用するとなるとかなり大変そうだ。時間帯は考えないとな。
「それで、最初は何処に行く?」
「最初は、シューティングエリアに行くつもりだ。」
「少し意外だな。桜木たちにあまり会わないと思う所だと思うんだけど」
「楽しみは最後の方に取っておくべきだろ。それに色々と試してみるのは大切だ」
「なるほどね、住吉はこういうの好きだから行くんだと思ったよ」
「それもある」
「おい」
そうして、僕たちはシューティングエリアに着く。
僕たちが最初に遊んだのはM1ガーランドを模した銃が置かれている、射的ゲームだった。5、10、15メートルと距離を選んで、円状の中央にどれだけ当てれるかといったものだった。
「これ、射的ゲームみたいで面白そうだね!」
「うん、私もこういうのしたことなかったから、やってみよ」
桜木と鮎莉も案外乗り気でやり始める。物は試し用だなと思いながら僕もやる。
やり方については、簡易説明があるので大丈夫だ。一応、桜木がコツなどをみんなに教えてもいる。
肘をしっかりと置き、銃を固定させ、安定させて打つ。
それを意識して打った結果、10発全てが9点エリア内のどこかに当たっており、数発は中央の10点エリアに入っている。
まあまあの結果ではないだろうか。
「隅風君凄いね、私なんか当てるのでやっとだよ」
鮎莉はこちらの結果を見て、褒める。鮎莉の的はバラバラに穴が開いている。それでもしっかりと10発当てているので、初めてとしてはいい方だと思う。
「僕なんかより、住吉の方がもっとすごいよ」
僕はそう言って住吉の方を見る。すると、そこには10点の所にしか穴が開いていなかった。
「すごいね!」
「流石」
「まあな」
こういったことも住吉はかなり得意であり、戦闘面に関するものにはほぼ何でもできることを再確認する。
「葵ちゃんはどうだった?」
「初めてなのであんまりうまくできませんでした」
そうして、僕たちに的の紙を見せてきた。そこには、住吉ほどはないが、全て球が10点の円内に当たっていた。
「すごいよ!葵ちゃん!」
「やるじゃん」
「・・・・・・」
「あ、ありがとうございます」
最近は色々あっていて忘れていたが、桜木は完璧美少女と言われいるのだ。その所以を見た気がする。
「なら次はあれをやるか」
住吉が次に選んだのはハンドガンの早打ちをするゲームの所だった。
「いいですね。やりましょう!」
住吉の提案に桜木も快諾する。というか、二人ともスイッチ入ってないか。
二人は淡々とその場所まで向かって感覚を確かめるためか、練習を始める。
「ありゃ、完全にスイッチ入っているよ」
「葵ちゃんもだよ」
元々、住吉は負けず嫌いな性格がある。ここ最近は僕と関わっていることもあり、互いに得意分野が違ったことから張り合うことが無かったので、桜木の結果に久しぶりに張り合える相手も見つけることができたと考えたのだろう。
桜木も完璧になるために努力をしていたのだ。その影響もあって、これを極めようとスイッチが入ってしまった感じなのだろう。
そのあと、二人は恐ろしいほど早く、そして正確な射撃をして見せる。ランキング一覧は二人の記録に塗り替えられていく。
ちなみに二人の勝負は今の所、住吉が勝っている。桜木もとてつもない速度で成長しているが、それと同等以上に住吉も成長している。もはや、遊びの領域を超えかけている。
「二人とも本気だね」
「まあ、楽しそうだし、いいんじゃない?」
そんな二人と遠目に見ながらこちらもやってみる。しかしながら、二人のようにうまくできる訳もなく、のんびりと行っていた。
ちなみに遊び始めて今の所いい所が一切ない。遊びについては考えたのは鮎莉たちだし、シューティングゲームも二人よりも出来ないので、ダメダメである。
どこかで挽回できるところがあるといいな、などと考えながらしばらくの間シューティングゲームを楽しむのであった。




