遊びのベテランと素人
「さて、隅風君がどれぐらい遊んだことがあるのか聞かないといけませんね」
いつぞやの会議の時と同じく、鮎莉が司会件書記となり始まった。
もう鮎莉が部長でよくね?と思ってしまうがこの部活にも入っていないし、本人も楽しそうにしているので口には出さないでおく。
「あまり遊んだことないよ」
「うん、まあ予想通りだね」
「もう少しぼかしていって欲しいな」
「あはは、、、」
鮎莉のドストレートの言葉は僕のHPをかなり削る。桜木の苦笑いも地味にキツイ。
勿論、遊ばなかった理由位はある。昔は色々忙しく遊ぶ機会は少なく、あらかた落ち着き始めてからは遊ぼうという意欲もなく、そのころには住吉と知り合っていたのでそちらのこともあり、全くと言っていいほど遊んでいない。
てか、それだけ聞くとかなり寂しい奴じゃないのか。悲しい現実に僕は見なかったことにする。
「葵ちゃんも私と遊んだことはあるけど、こういった複数人で遊ぶことはしたことないよね?」
「うん、鮎莉以外には遊んだことはないかな」
「そうなると、私と住吉ぐらいしか経験ないのか。ならしっかりサポートしないとね!」
どうやら今回は鮎莉と住吉がメインで動いていくらしい。まあ、僕自身あまり遊んだ経験もないので今回は2人に任せよう。
桜木も同じ感じだ。
2人は遊びのことで話し始めたので、2人に任せて僕も少し離れた場所に座る。
あそこにいても特に出来ることもないのだから、完全に2人に任せてこっちは別のことをしておくべきかな。
そう考えて準備しようとした時、桜木もこちらに座ってくる。そういえば桜木も同じ立場だった。
遊びについて話し合う2人に対して、こちらは互いに何を話せばいいのかわからずに気まずい雰囲気が流れていた。
何か目的があるときは、一切問題なく会話ができていたはずなのに、普通に過ごすとなると途端にどうすればいいのか分からなくなる。
役割が決まっているならば、いくらでも雑談をできるので完全に悪いところが出ている。
しばらく沈黙が続いた後、先に桜木が話し始める。
「とても楽しそうですね」
桜木は悩みながらも話し合う鮎莉たちを見ながら言った。
「今から楽しいことを始めようとしているんだ。2人の性格的に絶対に僕達の反応とかを楽しもうといろいろ画策しているはずだ」
「ふふ、確かに2人ならやりかねませんね」
そう言って僕達は互いに苦笑いする。最初は気まずい雰囲気だったが、住吉達のことで会話が続き、それなりに良い雰囲気になった。
「鮎利達は何をしてくるんでしょうね?」
「さあ、そこに関しては疎いからなー」
「なら、2人が何をしてくるか考えてみない?」
「いいねー」
そうして僕達は2人が何をしてくるのか考える。しかしながら、そう言ったことを考えたこともない僕達はすぐに浮かばなかった。
再び、僕達に沈黙の時間が訪れる。だが、さっきみたいな気まずい雰囲気はなく。僕ならどうしようか、何をしたら面白そうなのか、考えたことを聞いてくれる人がいるからこそ、この沈黙の時間が苦しくなかった。
「ジェットコースターとかだったら嫌だな」
「ジェットコースターですか?」
僕がポツリとこぼした言葉に桜木は反応する。
「いや、そういった系統は苦手だからね。無理やり乗らせなダウンする僕を楽しむなんか住吉が考えそうなことだし」
「大友くんなら考えそうですね。」
桜木は想像ができたのかクスッと笑う。
普段は猫をかぶっている住吉は周囲からは異性に友達が多いやつとして、周囲などの嫉妬を買っているのだが、少し嫌なやつということで、腹黒のイメージはないのだが、この部活では一切猫を被らないので、僕の扱いから桜木は住吉の本性を見抜きつつあり、こんな感じで住吉の腹黒さに2人で笑う。
「それにしても意外ですね。隅風ならそういったことに関して大丈夫そうなイメージがあったんですが?」
桜木が不思議そうに聞いてくる。
「必要なものであれば大丈夫なんだけど、それ以外だと基本ビビリだから、ああいった心臓に悪いことは出来るだけしたくないんだよ」
そう言って初めて乗ったジェットコースターを思い出す。すごい速さで体感したことがない感覚が自分を襲い、途轍もない恐怖を感じだ。
そのときは親と言っていたので、泣くことは出来ず真顔で乗り切った。しかしながら、そのことをしっかり見られており散々弄られた。
ちなみに全てのジェットコースターが嫌いというわけではない。小学3年生用ぐらいのジェットコースターならばちょうどいい感じのスピード感もあって非常に好きだった。
まあ、対象が小学3年生なのでこんな話、恥ずかしくて言えるわけもないのだが。
「なるほど、もし次にそういった機会があるなら一度はダウンする隅風を見てみたいですね!」
「おいおいやめてくれよー!される方は気がきじゃないんだかなー!」
一生懸命に訴えるのだが、桜木は華麗にスルーする。最近は住吉達に影響されたかこんな感じでいじられることが多くなっている。こっちとしてはハラハラするようなことが増えるので出来るだけやめてほしい。
そんな感じで話していると、住吉がこちらに視線を送っていることに気がつき振り向く。
「何があったか?」
「駿人、今週の土曜日は空いてるか?」
「空いてるけど」
基本的に1人なので休日はほぼほぼ空いている。僕が答えらと同時に鮎莉も桜木に同じ質問をする。
「葵ちゃんも空いてる?」
「空いてるよー」
桜木も大丈夫なようだ。それを聞いた2人はよしといった感じで頷くと言った。
「それじゃ、明日の放課後服を見にいくぞ」
「葵ちゃんも私と見にいくよー」
「「え」」
それは僕達が予測していたものよりも斜め上のものだった。




