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名前だけの人生相談部に学年1の美少女が人生相談に来てしまった。  作者: 時雨白
第2章 自由を獲得するために
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作戦前日

 あれから数日、僕の学校生活はかなりの変化を遂げていた。


 何しろ名前だけだった、人生相談部が本当の意味で活動を始めたのだ。ここ数日は時間ギリギリまでこの部室にこもり、作業をしている。


 あれからというもの、作戦の成功率を上げるために、様々な可能性を考えて対応策を考えていく。住吉と鮎莉は、僕の方へと次々と情報を持ってきてくれる。そして、桜木は明日の作戦のために僕の資料を読んでいる。


「とうとう明日だな」

「こんなにも疲れたのは久しぶりだよ」


 住吉と鮎莉は自分たちの仕事をある程度、休憩する。僕も一休みをする。


 今回の作戦は、休日で場所は桜木の家である為、僕たちが桜木のカバーすることができない。今日の部活動が終われば、後は待つだけである。


「うまくいくかな?」

「いかなかったら駿人を締め上げるだけだ」

「それは嫌かなー」


 住吉が物騒なことを言う。それを実行を出来るほどの実力を持っており、酷かった頃の住吉を知っているので、冗談に聞こえずらいのでやめてもらいたい。


「ここ数日、本当にありがとう」


 桜木も資料を読み終えてこちらにやってきて、お礼をいう。


「葵ちゃんの為に当然のことをしたまでだよ」

「やるなら最後までやるタイプだからな」

「まあ、これが終わったら、次は成績上げに取り組まないといけないからな。これからだよ」

「それもそうだね」


 僕は次の事を考えていく。これが終わっても次があるのだ。寧ろ、次の方が非常に重要だ。ここで失敗しても次がある。まダ打つ手がある。しかしながら、これが上手く言った場合、次の工程で失敗すれば、次への立て直しはかなり難しくなる。


「隅風、私はうまくやれそうかな?」


 次の事で考えていると、桜木がこちらを見ながら聞いてくる。


「その答えは最初から言っていますよ」

「私が決めるだよね」


 分かっていたと言わんばかりに桜木は答える。ただ、その表情には少し寂しそうに思えた。ここは何か言っておく必要があるか。


「ただ、僕は出来ると確信してます」


 それを聞いた桜木は驚いた表情をする。そんなことを言うとは思っていなかったのだろう。


「どうして?」

「だって、諦めないのでしょう?ならいつか必ず出来る」

「なにそれ」


 桜木は僕の言葉を聞いて微笑む。どうやら、僕の言葉に満足してくれたらしい。


「これが上手く言ったら、葵ちゃんの時間が増えるて訳だよね?」

「そうなるね」

「なら、ここのみんなでどこかに遊びに行かない?」


 遊びにいくか、鮎莉の提案に住吉はいいねと賛同し、桜木もそれはいい案ですねと乗り気だ。


 僕がそれを聞いて最初に考えたことは今後の予定にどういった影響を与えるのか、それをすることで起きる可能性が問題だった。そして、賛同をする声を聴いて、ハッとする。


 遅れて僕もいいと思うよと答える。


 いけない、昔の癖が出てしまっている。遊びに行くと聞いた瞬間、そのリスクを考えるなんて、そんな切羽詰まっている訳ではないし、息抜きも重要だ。目的だけを見ていてもダメなのだ。


 危ない危ないと反省する。


「これで決まりだね!どこに遊びにいこう?」

「どこがいいかな」

 

 住吉と鮎莉はどこに遊びに行くか、考え始める。だが、明日の事もあるので解散の時間だ。


「もうそろそろ時間だし、今すぐ決める必要もないし、後でゆっくり決めるのもまた一つの楽しみでしょう」

「確かに」

「言うね!確かに選ぶ楽しみを今いただく必要もない」


 二人も納得して、片付けをする。そして、校門を出ると、桜木はこちらを振り向く。


「私、頑張るよ」

「おう、頑張れ」

「葵ちゃんなら出来るよ」

「待ってる」


 桜木の言葉にそれぞれを言葉を送る。僕が送った言葉は待ってるだった。特に考えてなくて、気が付けば言っていた。どうしてそんなことを言ったのだろうかと思いながら、最初の僕の戦いは終わるのであった。









桜木葵視点



 校門で私たちは解散した。そう言っても鮎莉とは途中まで一緒なので今もお喋りをしながら一緒に帰っている。


「だけど、ここ数日は凄かったよね」

「そうだね、まさかこうなるとは考えもしなかった。」


 鮎莉と一緒にここ数日の事を振り返る。


「隅風君のギャップがすごかったよね。見た目はパッとしない感じだし、普段は存在を忘れそうなほど影が薄いのに、やることが決まると、まるで別人のように活発に行動するし、考えもかなり鋭い。全くあんなの予想できないよ」

「そうだね、私も本当にそう思う。」


 ここ一か月、隅風と関わって分かることがいくつかあった。その中でも大きいのが隅風はオンオフの落差がかなりあると言うことだ。


 普段は省エネモードの如く、何もしないし、存在感もない。だけど、何かの拍子でスイッチがオンになると、別人の如く活動を始める。その行動力は常人を数倍だと思う。


 それに彼は達観している所がある。それは私のお父さんと重なる所がある。どこかとても落ち着いているのだ。


「それに、二人とも気配りも出来るし、いつものイメージが音を立てて崩れたよ」

「まったく違ったよね」


 普段の二人の評判と実際に関わった印象はかけ離れている。一癖も二癖もある二人だが、全然いい人だし、相性もかなりよく、互いの良い所と悪い所をいい感じにカバーしている。


「それに何だかんだ、あの場所も、居心地がいいからな。静かだし、遊び道具あるし、今回みたいに仕事もあればやりがいもある。後は私たちのスペースを作り出せばいいのでは!」

「あはは、ほどほどにしなよ」


 目をキラキラしながら人生相談部の改造案を考える鮎莉に私は苦笑いする。


 居心地がいいか、鮎莉の言葉にここ数日の生活を思い出す。今までに経験したことないような、ある意味で濃密な時間だった。


 みんなで一つの目的のために活動して、たまにゲームをしたり、静かにそれぞれのことをしたりと、居心地がとてもよくて楽しかった。


 何というか、あそこは自由な所だ。みんなの迷惑になるようなことさえしなければ、どんな人でも受け入れる。そんなところだと、自然に感じてしまっている自分がいる。そう思う理由は分からないが、分かることがある。


 私はあそこにもっと居たいと思っていること。あの場所が気に入ってしまったのだ。


 まだ隣で、人生相談部の改造案を考えている鮎莉の姿を見て決意する。


「鮎莉の為にも、今回の作戦は必ず成功させないとね」

「違うよ、みんなの為でしょ!」

「そうだね」


 私は自分の自由以外にも頑張る理由が出来た。

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