直通電話
社長室の片隅、それはずっと置かれている。
手野グループのうち、いわゆる孫会社と呼ばれる、中間持株会者から直接子会社となっている企業群の社長室。
昔ながらのところもあり、今風のところもあり。
さまざまな形をしているが、必ず電話だけは2台置かれている。
1台はいわゆる普通の電話だ。
受付からきたり、社内や社外へと通話することができる。
しかしもう一台はそうではない。
手野グループ内で緊急に呼び出され、会合を開かなければならないとき、その電話は鳴る。
電話口の向こうは原則として手野武装警備社長、手野産業社長、春雷会代表のいずれかだ。
この電話は社長を集合させるために必要なものであり、そのため、出なければならないという義務が課せられている。
もっとも、今までこの電話が鳴った時といえば2011年が最後である。