オーパーツ売ります。〜時空を越える店〜
「万事屋アース」
その店がどこに存在するのか、正確な情報を持つ者はいないという。
何がきっかけで店の入り口が見つかるのだろうか…?
『必要な人や場所へ本当に必要な物がきちんと届くようにあらゆる時空を彷徨う店らしい…。』という信ぴょう性のない噂だけがまことしやかに囁かれていた。
その店の主人は、年齢不詳の女性。
出逢う人によって見た目が変わるという不思議な人。
様々な物が集まり、そして揃う店に今日もまた新しいお客様がいらしたようだ。
はたしてどんな物語が紡がれるのだろうか…?
カランカランッと音を立てて店の扉が開く。
「いらっしゃいませ。初めてのお客様ですね。何かお探しでしょうか?」
カウンターの奥から静かにゆっくりと店主の女性が出てきた。
腰まで伸びた長い黒髪がサラリと艶やかに光り、タイトスカートから見えるスラッと長細い足は美しい光沢のある黒いヒールをコツコツと鳴らしていた。
誰がどう見ても美人だ。
歳は……わからない。若く見えるが何とも言えない色気を感じるので見た目より少し上の年代のようだ。
店を訪れた客は高校生の和也だった。
和也は店主に見惚れてしまい目が離せない。
「あの…お客様?どうかなさいましたか?」
あまりにも夢中で見つめてしまい、近くまで来て声をかけられて初めて我に返る。
「えっ!あ、すいませんっ!!えっと…あ、俺が探してるのは……あのっ!オーパーツって売ってますか?」
何と説明したらいいのか迷った和也だったが、そのまま伝えた方が早いと考えて勢いのまま店主に聞いた。
勢いよくそのまま発した声は思いのほか大きく自分でも驚いた。
「……えぇ、ございますよ。」
一瞬驚いた顔をしたが、少しの間を置いて店主の女性は優しく微笑みそう答えた。
「あ、す、すみません。なんて説明したらいいかわからなくて。ってか、そもそもオーパーツって本当に存在するんですか?」
「存在はしております。ただ、お客様にとって本当に必要な物であればお売り致します。」
「え?それって駄目なら売って貰えないって事ですか?」
店主は柔らかく微笑んだ表情を崩さないまま和也の目を覗き込んでいた。美しいがどこか冷たさを感じる瞳で和也はブルッと身震いした。
「当店ではお客様が品物を選ぶのではなく、品物が持ち主を選ぶのでございます。ですので本当に必要な物しかお売り出来ません。」
にこやかに微笑むこの人との出会いがこの先の俺の人生を変えるなんて思いもよらなかった…。