命知らず共よ。
みんなと楽しく遊び回る西条高校学園祭の途中。
校庭のあたりがざわざわと何やら騒がしい。それとバイクのエンジン音。
「八月朔日ィ〜! 今日がおまえの命日じゃあ!」
そこには金属バットや木刀を武器に抱えたチンピラたちが、八月朔日……つまり、アキラたちを狙ってやってきていた。
「んだぁ? イキがってんな」
「みんなのいる前でアキ姉ぇ潰せば、注目の的だ、っていう考えでしょ」
「命知らずだな……ここに誰がいると思っている」
愛花の言う通りだった。
今ここには、アキラだけでは無く、三姉妹全員が揃っているのだから。
けれどチンピラ軍はそれでは怯むことはなく、むしろ「全員捻り潰せ!」も更に息巻いていた。
確かに、チンピラ軍はざっと見て100人はいた。それだけの数がいれば、普通の相手ならばまさか負けるときのことなんて想定しないだろう。
だけどこれまでも、何度もこう言ってきた。
それが通用するのは、普通の相手だけだ。
「せんせーもこの数だと流石に警察とか呼んでるだろうけど、着く前になんとかしちまいますかねぇ」
「最近体が鈍っていたしな、ちょうどいい」
「私もー!」
いつかの日以来にみた、三姉妹全員の戦い。
不思議なことに、俺自身も特に何も心配はしていなかった。
それどころか、あの相手、武装しているはずのチンピラ達の心配をしていた。あまり痛い目にあわないといいね、だとか。
同情にも近いかもしれない。
それだけ俺の、この姉妹たちに対する信頼が厚いのかもしれない。
事実それは間違っていなかったし、その争いは警察官が来る前に全てカタがついていた。
「えぇ……と。この、数を……?」
「正当防衛すよね?」
到着した警察官が困惑していた。
それもそうだろう、たった3人の少女が100人相手を制圧したのだから。それもわずか数分で……。
「いやはや、噂では聞いてたけど、まさしく鬼神のような強さだね」
小町も驚きを隠さず、目の前で繰り広げられた戦いに、初めて万華鏡を覗き込んだ子供のようになっていた。
「いろいろ助けられたよ。今までもな……」
しかし、このチンピラたちも妙なタイミングで仕掛けてきたもんだ。
「特に理由なんてないんじゃないか? こんなことしてくる連中だし」
「……それもそうか」
★★★
「やっぱりあの単細胞たちじゃなんともならんか」
安物のキャンディーを噛み砕きながら、部下からの連絡に光島はため息をついた。
光島は、西条高校にあのチンピラ軍を送りつけた張本人だ。藤城組の構成員であり、光島も坊っちゃんの命令により、楓太を追っていた。
「だりぃ〜よぉ〜、でも自分で出るのこえぇしよぉ〜」
光島は臆病な男だった。
自らが傷付くことを恐れ、他者を使って敵を追い込む。
今回もそのやり方が行われた訳だ。
「あんなのじゃもうどうにならんか……だったら……あ、そうだ」
光島は新しいいたずらを思いついた悪ガキのような表情を浮かべていた。
「もうめんどいから問答無用でさらっちまおう! まっ、理由はどうあれ暴力団を敵にしちゃったこと、震えて後悔してくれよな〜、どこの誰かはしらんけど」
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!




