発火性イエスタデイ。
短いです。
さすがに、メイド服でステージにあがると注目を集めた。その上ギターまで担いでいるんだ、そういうニッチな組み合わせは、好きなやつは好きだろうな。
仮にもこの学校で番長やってんだ。こんな姿、こっ恥ずかしいなんてもんじゃないが、こういう隙も見せてやらねぇとな。
「うーし……」
「アキラ、いけるか?」
「楓太さんこそ、ばっちり頼みますよ」
「あぁ、任された」
そしてアタシ達の演奏が始まった。
発火性イエスタデイ。
心優さんから貸してもらった大切な曲。下手な事はできねぇ。無論はそんなつもりはないが、アタシたちはプロでもなんでもない。
アマチュアですらない、ただの学生だ。
それでも、魅せられるものはあるはずだ。
始まりは、アタシから。
息遣いを感じ取った三人が続いて、それぞれの楽器に魂を乗せていく。
アタシは更に、歌声に。
人前で歌うなんて初めてだったけれど、すげぇ気持ちが良かった。
ライトに照らされるアタシはどう写っているのか。
アタシわかるぜ。
たぶん、良い顔してる。
★★★
「いやぁ〜、優勝おめでとう! 私達!」
叶がトロフィーを頭に乗せてはしゃいでいた。
その気持ちも分からなくもないが、落としたらまずいから一応は嗜める。
「ふぅむ、僕達も負けてないと思ってたんだけどねぇ」
「ていうか、来てるなら連絡すればよかったのに」
「ふふ、サプライズさ」
小町はイタズラっ子のような笑みを浮かべる。
「彩愛ちゃんもだよー、私びっくりした〜」
「びっくりさせるつもりだったからよ」
それぞれが談笑を楽しむ中、低い音が響く。
その音の発生源は随分と意外なところだった。
「うぐ……」
愛花がお腹を抑えて、腹の虫を抑えていた。
「はは、そういや昼飯とか食ってなかったもんな」
「すまない……」
「じゃあ今からみんなで回ってさ、いろいろ食べていこうよ! その途中でぜひ、うちのクラスのタコ焼きも!」
「そうだな。早速行くか!」
ひと仕事終えた後、俺たちは学校中の出店を回ることに。
食べ物関係はイカ焼きだったり、フランクフルト、かき氷、夏祭りとかでみそうなもののオンパレード。
愛花ではないが、空腹の身にはなかなか堪える香りだ。
あとはもう、食欲に任せて食べたいものを食べていくだけだった。
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!




