ぜってー嫌だ!
西条高校、学園祭。
アタシ、八月朔日アキラは大ピンチだった。
「あぁ……なんでこんなことに……」
「いいじゃんアキ姉ぇ。みんな可愛いって思ってくれるよー」
「そういう心配をしてんじゃねぇよ……」
叶は馬鹿みたいなタコの被り物をして、呑気に構えていた。一応は、学園祭ライブの本番前だってーのに。
ソレに比べて、わたしはといえば……。
「なんだってこんな格好でやんなきゃいけないんだよ……」
「サービスだよアキ姉ぇ」
「誰に対してだよ!」
遡れば数時間前。
クラスの出し物、メイド喫茶。そこでアタシも渋々メイド服着て接客してたわけだが、どういうわけだかこのこっ恥ずかしい格好でライブをする流れになっていた。
メイド喫茶の宣伝と、その方が可愛いからやろうよと叶や華子に推されて、仕方なく……。
どうやらアタシたちの出番は最後のようで、この待ち時間がそわそわとした落ち着かない気持ちを増幅させる。
「ったく、これならいっそ一番最初がよかったぜ」
そんなアタシの気持ちの事なんか考えず、最初のグループがステージに上がってきていた。
「……あれ、あいつ、なんで」
「彩愛ちゃん?!」
楓太さんがステージ上の誰かを見て驚いていた。
一人はわかる。
叶も言っている、彩愛という叶の友達。もうひとりは……誰だ?
「あいつ、俺の友達なんだ。花咲小町って言うんだ」
「ふーん……」
楓太さんの友達……か。
そういえば、楓太さんからそんな話、聞いたこともなかった。……小柄で可愛らしい人。アタシとはだいぶタイプが違う。
「お、始まるぞ」
照明が暗くなり、演奏が聞こえ始める。
彩愛はピアノを、小町さんはアコースティックギターを。
素人目線から聴けば、繊細な音だと感じた。爽やかなメロディと、歳よりも幼い声色がよく合わさっていた。
「彩愛ちゃんすごーい……」
実際、このコンビのスタートダッシュは、後々のグループのハードルを上げていて、別に悪くはないのだけれど、物足りなさを感じるのも事実だった。
その物足りなさを、アタシ達も感じさせなければいいのだけど。
「よし、次はもう私達だ。アキラ、いけるか?」
「ココまできたら、もうウダウダ言ってらんねーか……」
腹くくるか、それに。
こんな格好なんか、目に入らないくらい聴かせてやればいいか。
「よっしゃいくか!」
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