学園祭。
「お〜、すごい賑わってるなぁ」
西条高校学園祭。
在校生のアキラと叶は先に学校に来ていて、俺と愛花は後から入場。
出店を開いている叶が、たこ焼き片手に迎えに来てくれた。
「やっほー! やっと来たねぇ愛花姉ぇ、楓太兄ぃ」
「お待たせ……たこ焼きの出店か」
「そうとも! くるくるっとね、最高の焼き加減で提供しちゃうよー」
タコの被り物をした叶が言うと、なんだか不思議な感じだ。
たこ焼きを受け取り、一つ口の中に放り込むと出来立ての熱さですぐには噛めなかったけれど、大きめのタコの歯ごたえが良くて好みのタコ焼きだった。
「ありがとな叶。ライブまで頑張って」
「タコ焼きながらイメトレしておくよ〜」
まだまだ忙しい叶と別れ、次はアキラのクラスの出店に行きたいんだけど……。
「アキラ、なんの出店かは教えてくれなかったな」
「あまり乗り気では無さそうだったからな。とりあえず教室に行けばわかるんじゃないか?」
「そうだな、そうしよう」
アキラがいるはずの2年生の教室へ向かう。
ここは食べ物系ではなくて、教室で作るプラネタリウムや、お化け屋敷。そういうものが多くあり、来場者を楽しませる。
「えーと……アキラの教室だと……ここになるんだけど」
「……もしもアキラがこれをやるのなら、確かに教えたくはないだろうな」
カタカナと漢字。
合わせて読めば、それは……メイド喫茶と書かれていた。
そんなコテコテな……!
「いやでも、だからってアキラが素直にこれやるのかな」
「どうだろうな。はいってみればわかるんじゃないか?」
愛花が先に中へ入る。するとメイド服に身を包んだ女の子たちが元気よく迎え入れてくれる。
おかえりなさいませお嬢様、と。そして俺の姿を確認すれば、ご主人様と。
「……やっぱり居なさそうだな」
「まぁ、柄でもないだろうし……ん?」
教室の隅、見覚えのある子がいた。
確か……アキラの友達の華子……とかいう子だったか。
「もー! アキラさん、もう観念して出てきなって!」
「い、いやでも……こんなのマジで恥ずい……」
「もう……あっ! アキラさんっ、ほら、きてるよ……!」
「っ!」
陰でコソコソと、どうやら居るらしいアキラに華子ちゃんは耳打ち。
すると何かを決心したらしいアキラは、遂に姿を見せた。
「……ど、どもっす」
フリフリのメイド服。
カチューシャがいいワンポイントになっていて、可愛らしさが全面に出ている。
「……ど、どうすか?」
「可愛いぞ、アキラ」
「……」
……いや、素直に褒めて正解の場面だったはずだ。
そんなに真っ赤になられてしまうと、こっちも頬の内側がくすぐったくなる。
「……え、なに?」
「……」
華子ちゃんに耳打ちをして、何かを告げたかと思うとアキラは別教室に逃げ込んでしまった。
「あ、アキラはなんて?」
「え、えーと……何言ってるかはよくわからなかったんですけど……とにかく、お昼あとのライブには間に合わせる、と……まぁ、多分。嬉しかったんだと思いますよ、可愛いって言われて」
……答え方間違えたかな、とは思わなくもないが、そういうことなら……いいか。
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!




