勧誘。
2日に1話程度の更新頻度になりそうです。
「なぁ彩愛ちゃん。西城高校の学園祭の事は知ってるかい?」
僕はバイト終わりに可愛い後輩の彩愛ちゃんにそう訊いた。彩愛ちゃんは、ミヤの居候先の子の友達のようだから、おそらく知っているだろうけれど。
「あ、はい。知ってます……でも、学園祭がどうかしたんですか?」
「いやなに、その学園祭の催し物でバンド対決みたいなものがあってね。彩愛ちゃん、前にピアノが弾けると言ってただろ? それで一緒に出てくれないかな〜、って」
「ピアノ……でもわたし、そうは言いましたけど、そんなに上手くないですよ」
「関係ないさ。仮に下手だろうとなんだろうと、僕には弾けないからね。いや、無理強いはしないけどね」
でも、と彩愛ちゃんはすんなり頷いてはくれない。
彩愛ちゃんの過去のことは聞いている。怒髪天というレディースのトップだったと。そういう過去があるような子にはとても見えないのだけど、そうならそうなんだろう。そんな妙な嘘を付く必要も思い当たらないし。
「でも僕は彩愛ちゃんと出てみたいなぁ」
「……あまり期待はしないでくれるなら」
その言葉を待っていた。
期待しないで、なんて言わないでほしい。僕はただ可愛い後輩と一緒に想い出を作りたいだけなんだ。
それに、ミヤとの新しい想い出を作るためにも。
(僕らは、何をやるにも一緒だったのにね)
別にヤキモチを焼いているわけではない。ミヤにもそれなりの事情があったし、性格的に黙っているつもりではなかったのだろうけれど、やっぱり。
言えよ、とは思った。
ちょっと不機嫌にはなった。そりゃあそうだろ、親友のつもりだったんだぜ、こっちは。
男とか女とか関係なく、繋がりあっていると感じていたのに。僕はミヤと一緒に風呂にだって入れるのに。無論何も隠さず。
結局これはヤキモチかなにかになるのか? 僕としてはミヤに対する不満を垂れ流しているだけなんだけど。
「でも小町さん、何か楽器弾けるんですか?」
「ふふ、こう見えてそれなりになんでも弾けるんだ。今回はアコースティックギターにしようかとは考えてるけどね」
ピアノとアコギ、二人体制ならそれが一番型にはまるだろう。僕が好きなだけ、というのもあるが。
「二人で良いところ見せつけてやろうよ、なんなら僕らが優勝さ」
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!
よろしければブックマークや感想をお願いします。




