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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
プロローグ
9/134

叶の放課後。

刃牙の世界の住民みたいな戦闘力と想像してもらえたら読みやすいかもしれません。

「みんなー! またあしたねー!」


 学校のクラスメイトたちに手をふる。叶は、帰るときはいつも一人。それには理由がちゃんとあります。


 登下校中、度々私に一矢報いるために襲ってくる人たちがいる。そんなことに他の誰かを巻き込みたくないから、という気持ちが一番にある。


 でも中には、()()()()()で私に勝負を仕掛けてくる人もいる。

 そのとある理由はというと。


「カッ、叶ェ! 今日こそ俺が勝ったら付き合えよ!」

「いいよー、その代わり私に勝てたらね!」


 私との交際を求めて、喧嘩をしようとやってくる人たちは毎日後を絶たない。

 

 どうしてそうなってしまったのかと言うと、学校で友達に「叶ちゃんはどんな人が好きなの?」と訊かれて「私よりも強い人」と答えた結果、「叶に喧嘩で勝てば付き合える」と都合よく解釈された噂が流れてしまった。


 でも、私としては、それはそれでいいの。  

 だって喧嘩が出来るから。


「あはははっ! 楽しいね!」

「かっ、まっぺっ、ちょっ……」


 往復ビンタならぬ往復パンチ。

 相手が悪そうな人だったら遠慮なく武器メリケンサックを使うけれど、こういう人には使わないでいる。

 今回に限っては使うまでもないだけかもしれないけど。


「も、もう無理……」

「えー、つまんないなぁ。そんなんじゃいつまで経っても私には勝てないよ」


 頬が腫れすぎてたらこ唇みたいになっちゃってる。でもなんだかどこか幸せそう。殴られて喜ぶタイプの人だったのかな? 実際今までにそういう人いたし。


 思い切り股間を蹴り上げてくれ! なんて言ってきた人が来た時は気持ち悪すぎて本気で蹴り上げて、その後救急車で運ばれた人もいたなぁ。


「うーむ、私ってそれほど可愛かったりしちゃう?」

  

 それはそれで悪い気分じゃない。可愛いと思われる事は大好きだ。でもそれと同じくらい、私は()()()()()と言われたい。


 どっちも両立させることは難しいのかな。


「あの……」

「へ?」


 弱々しい声。その声は聞き覚えがあった、確かクラスメイトの山田くんだ。

 

「ほ、八月朔日さん……ぼ、ぼくと喧嘩してください!」

「え?」


 私と喧嘩する。 

 それの意味するところは、山田くんはもしかして。それをわざわざ確認するのも意地悪かもしれないと思ったけれど、一応私は確認してみた。


「それって、私に勝ったら付き合ってほしいってこと?」

「は、はい……」


 山田くんは顔を赤くしながらそう答えた。山田くんは喧嘩どころか、人に暴力さえ振るった事もなさそうだから意外どころじゃなかった。

 だけど、そんな山田くんが私に喧嘩を申し込んでまで。そう考えると山田くんの気持ちを無下には出来ないと、私の方から一つの提案を申し込む。


「山田くんの気持ちはわかったよ。でも、正直に言うととてもじゃないけど山田くんじゃ私に勝てない」

「そ、それは……」

「だから、山田くんだけ特別ルール」


 私は自分の右の拳を固く握りしめる。

 私が提案する特別ルールは、至ってシンプルな事だ。


「私が一発思い切り殴るから、それを耐えられて立ち上がれたら山田くんの勝ち。あ! でもすごく痛くて気絶しちゃっても後で怒らないでね!」


 要は根性を見せてくれたら、オッケーという事。

 それを聞くと山田くんは是が非でもないと言った様子で「おねがいします!」と頭を下げてきた。

 これから殴られる人の態度じゃない。けどなんだかおかしくって笑ってしまった。


「よーし、じゃあいくよ! 歯を食いしばってね!」

「は、はい!」


 本気で殴るのはいつぶりになるんだろう。

 これで手加減をしたら、山田くんに失礼だから、本当の本気。体を捻らせて、反動をつける。


「気をつけてね、山田くん」


 もしかしたらその言葉はもう、山田くんの耳には届いていなかったかもしれない。


「お父さんに()()()()()()ようにって、育てられてきたから」


 女の子みたいな山田くんの頬に拳が沈む。

 そして気付いた時には山田くんはぶっ飛んでいた。2回くらい地面にバウンドして、最後は自動販売機に受け止められていた。


 たまたまそこを通りかかった知らないお姉さんが目を丸くしているのが遠くからでもわかる。一瞬私をみたけれど、まさか私が殴ったからだとは到底思えなかったのか、すぐに目線を山田くんに戻した。

 お姉さんは山田くんを抱えてどこかに電話していた。救急車か、警察か。


 はたから見れば、自動車にはねられたような光景だからそれも仕方ないか。


「……ぁ……あ……だい、じょぶ、です……」

「!」


 流石に、拳が当たる直前。どうしてもどうしても一瞬加減してしまったとはいえ。かなりの力を込めた私の拳を受けて。

 あの山田くんが、まだ動ける──そう見えたけど、起き上がろうとして、やっぱりそのまま気絶してしまっていた。


 それをみて、やるじゃんとささやかな称賛と。


「鈍ったかな……」


 近いうちに、アキ姉ぇと組み手しよう。私はそう決めてお家に帰ったのでした。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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