友達のお父さん。
ジャンル変更すべきは迷っているこの頃。するとしたら何になるのでしょうか。
今回はすごく短いです。
「信じろ……って」
「彩愛にとって、私はそんなに信じられない?」
「それは……」
言葉に詰まる。
今の叶のことは、いくらでも信じられる。
いや、きっと大人になっても信じられはするはずなのだが、だとしても心は動かない、動けない。
それだけ、心に抱えた傷が大きすぎた。
簡単に拭えないトラウマが、ずっと胸に残り続ける彩愛には、それがどれだけ難しいことか。
彩愛だって信じたい、信じたいが身体が、心がそれを拒絶する。
「わたしだって……信じたいよ、でも、わたしのこの気持ち、屈辱は、あんたにはわかんないわよ……」
どれだけ優しくされても、その人が本当に悪意のない大人であっても、どうしても吐き気を催す。足が震える、冷や汗が流れて、頭の中が真白色になる。
嫌い、なのではなく──怖いのだ。
怖くて怖くて仕方がないのだ。
強気な態度も、バイクを走らせるのも、怒髪天を作ったことも。
全て、恐怖を紛らわせるためだった。
「だからもうっ、どうしたらいいかなんてわかんない──」
「彩愛っ……」
「力ずくで自分を誤魔化すしか、もう……っ!」
一度は踏みとどまったが、再びブレーキを外してしまった彩愛は叶に襲いかかる。
「くそ、このっ……わからず屋ぁっ!」
応戦するしかない、諦めのように拳を握りなおす──その時だった。
後頭部に重い、あまりにも重い衝撃。一瞬で視界がぐらついた。それは何度か感じたことのある、馴染みのある一撃。
「だ、誰っ!」
彩愛が突然の乱入者に当然に疑問を投げかけた。
彩愛もすぐに、叶のようにではないが、首元を軽く手刀で叩かれ気絶する。
「喧嘩両成敗だ、バカ者」
「お、父さん……」
彩愛と叶を担ぎ上げる峰十郎は、いつもよりもどこか──穏やかというか。
なにか、可哀想なものを見る目をしていた。
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!
恋愛要素、もう少しお待ちください……!




