いつか大人になる君たちへ。Part6
2日に一度更新になります。
正月ムードもまだ抜けぬまま、残り少ない登校日が始まる。叶のクラスメイトには推薦入試を終えて、既に余裕の態度で残りの学校生活を過ごす者もいる。
「あ、彩愛ちゃん! 学校、久しぶりに来たね」
「たまにはね」
不登校気味の──面白くないかららしい──彩愛がやってくると、教室がざわつく。その上学校の番長と同等の態度で接するものだから、それはそれでヒヤヒヤする。
「もう。たまには、って。もうすぐ卒業なんだよ?」
「わたしは別に気にしない。むしろ、義務教育がやっと終わるって気が楽だわ」
「もー、高校はどうする気なの?」
「……高校?」
彩愛は首を傾げる。
まったくもって進学する気などなかったし、そもそも行きたい学校もなかった。けれど両親もさすがに「高校くらいは」と、無理矢理にでも進学はさせるつもりらしい。
彩愛の場合、もう名前さえ書けば受かるような高校にしか行けないが……。
「あぁ、そうね。まぁ適当にやるわ」
「……わざと落ちようとしてもだめだよ?」
見抜かれていたかと、彩愛は軽く舌打ちをした。
わざとらしいその舌打ちに、叶は少し笑った。
「……叶は、どこに行くの?」
「西城高校だよ。お姉ちゃんと同じところ」
順当に行けば、彩愛よりも一足先に受験が終わる。
後は彩愛が真面目に受験を終えれば、また何も気にせずに遊べる日が来ると叶は密かに楽しみにしていた。
だからこそ、彩愛にはちゃんと試験を受けてほしいのだが……。
「高校は、別々になるのね……」
「仕方ないよ。高校が別でも、また一緒に遊べるよ!」
離れ離れになっても、今生の別れという訳でもない。
顔を合わせる機会は減るかもしれないが、その分遊んだ時の感動も大きいかもしれない。
今はまだ、それは二人にはわからないかもしれないが、友達と遊べる事は当たり前じゃない。
環境が変われば、友人関係も変わる。
それは悪いことではないし、むしろ良い事だ。いつどんな時でも、友達がいるという事は。
「……そうね、そうよね」
「だから彩愛ちゃんも、ちゃんと受験行くんだよ?」
「……叶、変わったわね」
「え? そうかな」
「そうよ。そもそもわたしは、あの頃の尖ってたあんたに……」
「私に?」
「なっ、なんでもない!」
しかしその言葉には、叶も心当たりはあった。
思い返してみれば、入学してばかりの頃は喧嘩に明け暮れていた。アキラよりも名を馳せたくて、片っ端から喧嘩を売っていた。
「うん、でも確かにそうかも。これって、少しは大人になれたってことかな?」
「……あんたは、大人になれて嬉しいの?」
「嬉しいかはわからないけど、悪いことじゃないと思うしね」
「……そう」
そっぽを向いた彩愛の顔が、どこか不機嫌そうだった。
叶にはその理由はわからなかったが、それがまさか大人になることだとは思いもしなかった。
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