いつか大人になる君たちへ。Part2
ド派手なピンク色のツインテールを揺らすのは、叶のクラスメイト、西本彩愛。
「叶、友達か?」
「うん! 彩愛ちゃんは私の親友なんだー」
「何言ってんのよ、親友なんかじゃない」
即刻否定されたが、彩愛はすぐさま次のように訂正する。
「わたし達は好敵手なんだから!」
「あははっ! そうだね!」
二人の馴れ初めや詳しい関係性はわからないが、親しいようではあると少し安心する楓太。
なにせあの集団のトップを張る人物だ、受験が控えている叶に、危害を加えることはなさそうだ、と。
「ここであったが百年目! いっちょタイマンよ!」
「いいよ!」
「いやっ、だめだろ!」
問題は大有りだった。当たり前のように喧嘩を始めようとする二人の間に入り止める。
それに不満気な態度を隠さない彩愛は、楓太の胸ぐらをつかみ食いかかる。
「アンタなによ、わたし達に関係な──」
ゾクリと、楓太の背筋に寒気が走る。それは彩愛も同じだったようで、胸ぐらを掴むその手から一瞬力が抜けた事がわかった。
彩愛の視線は楓太にではなく、その背後へ向かっていた。
「おい。初対面の相手にする態度じゃないだろう」
「レディースのトップかなんか知らねーけど、潰されてぇか、ガキ」
叶の姉二人……つまりは愛花とアキラの覇気に圧倒されていた。それを感じた上で続けるほど無謀ではないようで、彩愛は楓太の胸ぐらから手を離した。
「ふ、ふん! 今日はこれくらいにしといてあげる!」
「そんなにコテコテな事言うの、彩愛ちゃんくらいだと思うよ」
彩愛のツッコミに「うっさい!」と言い返し、バイクに跨る。
「みんな待たせてるからもう行くわ──叶! 次にあった時があんたの最後よ!」
そんな捨て台詞を残して彩愛は威嚇のように爆音を響かせ、走り去っていった。
「……なんていうか、悪ぶっても根はいい子、って感じだな」
「彩愛ちゃんは良い子だよ。中学生でバイクに乗ってること以外は」
確かに当たり前のように流してしまっていたが、彩愛は中学生三年生のはずで、二輪車の免許など持っているはずがないのだ。
要は無免許運転ということだ。
「……あの子、高校は行く気ないのかな」
「無いって言ってたよ。それに、この時期に学校にも来てなかったから」
人の生き方、それも今日初めて存在を知った相手の人生に口を挟むつもりはない楓太だが、やはり思わずにはいられない。
将来、どうするつもりなのだろう、と。
(俺がとやかく言える立場ではないか)
もう見えない彩愛の背中を思いながら、楓太たちは八月朔日家へと帰るのだった。
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