好きになってみよう。
「はぁ〜、まさか小町の友達ってのが兄ちゃんとはな」
「いや……こっちもびっくりしてます」
驚きでしかない。
まさか小町のお兄さんが御剣だなんて思わない。どう考えても思いつくわけがなかったけれど、そういえばと以前した御剣との会話を思い出した。
確か、妹に会いにいくと……その妹が小町とも、あの時は思うはずもない。
「というか、名字が違うのは」
「あぁ、御剣って俺が勝手に言ってるだけだからな」
「そうそう。お兄ちゃん、両親ともに絶縁状態なもんで」
「絶縁? どうしたまた……」
思わず訊いてしまったが、あまり踏み入ったことは訊くべきではなかったかと。
気まずくなり言葉に詰まっている俺を見て気を使ってくれたのか、小町がその理由を話してくれた。
「このバカ兄はね、スリルがある喧嘩がしたいからって理由で暴力団に入った大馬鹿だからね」
「暴力団……ヤクザってこと? じゃあ羅生門もその傘下に入ってたってことか」
「今はもう抜けたけどな。指詰めさせようと追手が来たって全員ボコボコにして返り討ちにしてっから、退屈しなくてちょうどいい……つか、したいのはそんな話じゃないだろ?」
追加で頼んだコーラを飲み干した御剣は話の軸を元に戻す。確かに御剣のその話も気にはなるけれど、そのために呼んだわけではなかった。
「実は……」
俺は小町に話したように、俺が抱える悩みについて御剣に話した。それを聞いた御剣は即座に答えを提示した。
「俺ならどっちも取る。だけど、兄ちゃんの場合は……まだ保留でいいと思うぞ」
「保留……でもその間は……」
「結局、一人しか選ばねーんなら、本気で考えて選んでやったほうがその子らも報われるだろ」
想定外にも的確なアドバイスに少し戸惑う。
失礼な事だけど、そんなにまともな事を言ってくれるとは思っていなかったから。
「まぁ、一旦深く考えすぎるのもやめときな。ゆっくり分かっていけばいいんじゃねぇのかな、どっちが好きかは」
「……そう、ですね」
そうだ、結局はそうなのだ。
どうしようどうしようと悩んだところで、俺が最後に決めなければこの問題が解決することはない。
なら、御剣の言う通り、これからは二人の事を……居候先の同居人としてではなく、一人の女の子として、異性として意識してみよう。
後で悔いが残らないように……俺も本気で好きになろう。
★★★
だけどこの時の俺はまだ知らなかった。
選ばなければいけないのは、二人からではなく──三人からだということを。
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