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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
プロローグ
6/134

忘れ物。

「……あ! いけない、アキラったら」

「どうしたんですか?」


 三姉妹達が学校へ行き、真奈美さんと家の掃除をしていた時、テーブルに置かれたその包を見て言った。

 それは今朝作ったばかりのお弁当だった。 


「忘れて行っちゃったのね、持っていってあげないと」

「真奈美さん、それなら俺もって行きますよ」


 真奈美さんもこれから仕事だ。

 昼前にアキラの通う西条高校に向かうのなら、俺しかいない。


「ごめんねぇ、ありがとう」

「ぜんぜんいいんですよ。これくらい」


 俺がこの家でやることは、料理や掃除、その他諸々。

 洗濯に関しては真奈美さんに任せている。目のやりどころに困るからな……。


 一先ず、スマホでアキラに「お弁当忘れてる」とメッセージを飛ばし、昼休みに合わせて持っていくことを伝えた。

 返事は「あざっす」とだけ、だいぶ砕けた内容。叶が言っていたように、他人行儀な空気は無くしていこうを実行している結果だ。


 それは良い事だけど、それとは別に一つ気になることがあった。

 アキラが通う西条高校がどのような校風なのかが、だ。

 番長としてアキラが君臨しているらしいが、わざわざ番長と名乗るくらいだ、ちょっと荒くれているのかもしれない。

 

 それに関しては愛花も叶も同じなんだけど。


「さて、とりあえず残りの事をするか」


★★★


 しばらく家のことを済ませて、時計の針がどちらも上を指した頃。

 俺は弁当箱片手に西条高校へやってきた。

 のだが、まぁなんだ。


「テメェこら何見てんだオラ」

「部外者が入ってきてんじゃねーぞゴラ!」


 不良1号、不良2号みたいな男子生徒に絡まれた。

 それこそ俺が思い描くような、番長のようだった。鍛えているのか、かなりがたいが良い。

 俺がこの二人と喧嘩でもしようものなら、あっという間にやられてしまうのは目に見えていた。


「いや、あの……これを八月朔日アキラって子に届けに来ただけで……」


 アキラの名前を出すと、1号と2号は信じられないと言った様子で。


「な……なんであんたみたいなのが、アキラさんに……」

「まぁ、少し事情がややこしくて……」

「い、いやまて。弁当を届けに来るような関係だぞ?」


 コソコソと二人で話しだした。

 疑っていたわけではないが、やはりアキラはここの番長なのだ。こんなに強そうな男二人がアキラに対してさん付けをしている、それだけでも異質さがわかる。


「……なぁ、一ついいか?」

「な、なんだよ」

「アキラが番長ってのは知ってるけど……あの子、そんなに喧嘩が強いのか?」


 それはただの興味本位だった。

 知らないなら知らないといえばいいし、強いなら強いぜの一言だけで良かったのだが……。

 どうやら、この発言がこの二人のなにかに火をつけたようで。


「あったりまえだ! アキラさんは強すぎる! 意味わからねぇくらい!」

「男とか女とか、喧嘩にゃ関係ないんだって思い知らされたくらいだ! 常識を曲げられちまった。だが! それもあるがっ! アキラさんは──」


 そこで1号2号は息を揃えて言い放った。


「「めちゃくちゃ可愛いんだよ!!」」


「へ?」


 予想していなかった言葉に間抜けな声が出てしまった。

 ……それが番長であることと何か関係があるのか?


「番長ってのはカリスマ性もいるんだよ! 実際アキラさんの下にいるのは、実質ファンクラブみたいなもんだ」

「そしてこれが、女子生徒の協力により手に入れられたアキラさんの生写真だ」

「ばか! 殺されるぞ!」

「構いやしねーよ! みろ! これなんか体操服に着替える途中の──」


「へぇ、そりゃ私も気になるな」


「そうでしょう!? ほら、この汗拭いてるところペッ」

「あっ、アキラさん! これはちがっ、すんまポッ」


 その小さな拳が不良たちの顎を的確に捉えた。

 ヒートアップする背後から迫ってきているのは、わかっていたけど教えなかった俺は悪いやつなのかな。

 

「ったく、こいつらはホント……」

「良いことじゃないか、慕われてるってことは」

「盗撮じみてることは事はごめんすよ」


 それもそうだな、と笑い俺はアキラに弁当箱を手渡す。

 アキラはそれをまじまじと見て、俺を見上げた。


「これ、楓太さんが作ったんすか?」

「そうだね。口に合えばいいんだけど」

「作ってくれたものに、文句なんか言わないすよ」


 時折見える礼儀正しさになんだかほのぼのとする。

 カリスマ性、とさっきの1号達は言っていたが、確かにそうかもしれない。

 強さだけじゃ、誰もついてこない。だからアキラを慕う人もたくさんいるのだろう。


「アキラさーん! お昼にしましょーよー!」


 遠くでアキラを呼ぶ女子生徒。

 アキラは手を振り「すぐ行く」と応える。


「じゃあ、楓太さん。また家で」

「あぁ、午後も頑張ってな」

「ははっ」


 おかしかったのか、アキラは笑った。

 

「たぶん、寝ちゃうっす」


 それもある意味、高校生らしいさと俺も笑った。


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