表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
春夏終わって秋冬編
59/134

河川敷、夕焼けと君が待っていた。


 叶の想いを知り、キスまでしてしまった夜から、三日が経過していた。

 俺はといえば、なんだか身体に力が入らない日々を過ごしていた。このままではいけないという低迷感と、どうすればいいのだろうという不安。いや、不安というよりも、怖いのかもしれない。これがきっかけで何かが変わってしまうのではないかという、恐怖だ。


 それは俺の考え過ぎで、何も起こりはしないのかもしれない。だがこんな経験、俺の人生に起きたことなど一度もなかった。

 知らない、ということは何が起きても不思議ではないということ。


「楓太兄ぃ……ふふ、行ってきます」

「あ、あぁ……いってらっしゃい」


 そんな俺の気も知らず、叶は上機嫌に学校へ行く。

 あの日からの叶は、今までよりもスキンシップが増えた。腕に抱きついてきたり、背中からハグしてきたり……俺も単純なもので、好意全開のそれに俺はわかりやすく狼狽える。


 俺に意識してほしいからなのだろうが……それは効果抜群だった。めちゃくちゃに意識してしまう。

 というか無理だろう、あんな事があった後にこんな風にアピールされたら。  


(無理だろぉ……)


 洗濯物を干していく手も、どこか覚束ない。 


(はっ……!?)


 ふと気付く。今自分が干しているものに。

 それは今まで散々、意識することなく触る事が出来ていた……叶の下着だった。


(う、うぅ……! まさか今さら……こんな……!)


 薄い水色のパンツ、結構大きいサイズのブラ。

 やめてくれ……精神攻撃だこんなの……! 俺はなんとか手触りとかを考えないようにしながら、苦しいながらもみんなの分の洗濯物を干し終える。


「いかん……こんな事じゃ、何もままならないぞ」


 俺は居候、ここではしっかりやらなくちゃいけないことがある。それを怠るわけにはいかないんだ。

 よし、と息を深く吸い込み、気を集中させる。

 アルバイトの時間だ、早く向かおう。仕事をしていれば気もまぎれるさ。


★★★


「お疲れ様でしたー」


 集中してしっかり働くと、時間はあっという間に流れた。

 退屈よりも、多少忙しい方が仕事というのは、案外その方がいいのかもしれない。


「さて、これから帰って洗濯物畳んで、晩飯……あれ、アキラから……」


 仕事中で気付かなかったが、アキラからLINEのメッセージが送信されてきていた。

 内容はシンプルで、「話したいことがあるからアルバイトが終わったら、帰り道の途中にあるはずの河川敷に来てほしいです」との事。


 話したい事……なんだろう。

 家じゃ話しにくいことなのだろうか、だとすると何か悩みや相談事かもしれない。俺はすぐに「今から向かう」と返信する。すぐに既読がつき、「ありがとう、楓太さん」と「アタシ、勇気出します」の二言。


 勇気?


「なにかよっぽど話しにくい事なのか……? とにかく早く向かおう」


 もうこの季節は日が落ちるのも速いし、かなり冷え込んでくる。俺は小走りで河川敷へ向かう。

 

 夕焼けが、紅く街を染めていく。

 寒さをものともしない子どもたちがサッカーボールを追いかけている。買い物帰りの主婦が子供の手を引いて歩いている。

 そして、河川敷で待っていた、アキラを。

 染め上げていた──真っ赤に。


「楓太さん」

「ごめん、ちょっと待たせたかな。寒かっただろ」

「いや、全然。アタシもちょうどついたくらいなんで」


 そう言うが、誤魔化せないほどアキラの両手は赤くなっていた。夕焼けのせいじゃない、冷えすぎてそうなっているんだ。


「バカ、こんなにして……」

「あ……」


 アキラのかじかんだ手を、両手で包むとびっくりするくらい冷たくなっていた。これじゃいつから待っていたのかわかったものじゃない。

 

「ほら、カイロ。ちょっと使いかけだけど、店出るときに開けたからまだ全然温かいぞ」

「……ありがとうございます」


 カイロを受け取り、手を温めるアキラ。

 話があると言っていたが、先に家に戻ったほうが良いと俺はアキラに伝えるが「今がいい」と首を横に振る。


「聞いてくれる、すか?」

「あぁ。アキラの相談なら、いくらでも聞くぞ」

「ははっ。相談とかじゃ、ないんすよ──ねぇ、楓太さん」


 紅い髪が風に揺れる。

 夕焼けと、頬と。どれも熱く赤い、が。

 最も熱く滾り、燃え上がっていたのは……目の前の──


「アタシ、楓太さんの事が好きです」


 八月朔日アキラ。

 彼女の……心の炎だったのかもしれない。

なんだか終わりへ向かっている風ですが、まだだいぶ続きます。

今回もここまで読んでいただきありがとうございます!

もしもよろしければ、感想や評価★★★★★やブックマークをお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ラブコメらしくなってきた
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ