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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
春夏終わって秋冬編
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ファーストキス。

「キスって……叶、お前……」

 

 自分が何を言っているのかわかっているのか。

 俺達は家族同然の関係……そう言ったじゃないか。


「嫌?」

「嫌っていうか……それは……」


 叶とキスをしてしまうことは簡単なことかもしれない。

 だけど、だからって。じゃあいいよとは言えないし出来ない。

 それは確実な一線を超える、俺たちの関係は変わっていく行為だ。


「私はね。嫌じゃないよ。したいの」


 恋人繋ぎの指をぎゅっと握られる。

 ……だめだ、意識が持っていかれる。これじゃあまともな話し合いも出来ない。

 俺は叶の体を抱きかかえ起き上がる。ひとまずは離れてもらおう。


「んー……」


 けれど叶は木にしがみつくコアラのように、まるで俺から離れようとしない。むしろさらに、背中にまで腕を回せるようにしてしまった。これは完全に俺のミスだった。


「楓太兄ぃ、私とキスは出来ない……?」

「出来ないとか出来るとかじゃないんだ、叶。そういう事は、もっとちゃんと……好きな人同士、恋人同士が……」

「……じゃあ、楓太兄ぃ、私の事……好きじゃないの?」

「え……」


 叶が俺を抱きしめる力が更に強まる。

 まるで、絶対に離さないと言わんばかりに。

 そして……叶はついにその決定的な言葉を口にする。


「私、楓太兄ぃの事が好き」

「っ……」


 正直、くらりとした。

 面と向かって好きと告白されて、俺の心は簡単にぐらつく。だがやはり、無視できない疑問もある。


「い、いつから……」

「恥ずかしいから本当は言いたくないんだけど……えっとね」


 叶は照れ隠しのようにおでこを胸にぐりぐりと押し当てながら、口があまり開いていないのか、もにょもにょと話し出す。


「……一目惚れって、やつで……」


 一目惚れ。

 ……本当に、そんなものが存在するのか? だってそれは、文字通り一目見たときから惚れていた、ということだ。もしもそれが本当ならば、叶と出会ったあの日から俺は叶に……?


「でもね、それだけじゃないんだよ? ……前に風雷とかいうのと戦った時、楓太兄ぃ、ボロボロになってもアキ姉ぇのためにすごく啖呵きってたの、覚えてる?」


 もちろん覚えていた。

 確かその後に愛花と叶が助けに来てくれたはずだが……聞いていたのか。


「私ね、あの時……楓太兄ぃのこと、本当に……カッコいいって思ったの。ものすごくドキドキしたし……アキ姉ぇにも嫉妬した」

「アキラに? どうして……」

「……楓太兄ぃ、アキ姉ぇのことたくさん見てるなって。私の事もそれだけ見てくれたらいいのにっていつも思ってた」


 アキラに対する嫉妬まで吐き出す叶。

 それと同じくらい、いやそれとは比べ物にならないほど俺への想いも全てぶちまける。


「そんなことでって思うかもしれないけど、私本気だよ。本当に楓太兄ぃのことが好き、大好き! 頭を撫でてくれるところも、勉強を見てくれる事も、楓太兄ぃが作ってくれるご飯も……ずっと言いたかった、でも、言ったらきっと私、受験勉強に身が入らなくなりそうで我慢してた」

「叶……っ、え?」


 突然押し倒される。歳下の女の子に、力で負けて。

 俺の腰の上で馬乗りになり、月明かりに照らされるのは紅葉した叶の顔。


「楓太兄ぃ……お願い。一回だけでいいの、ただの記念でもいいから……キス、しよ?」

「記念にって、そんな……」

「楓太兄ぃには、楓太兄ぃの気持ちがある。それはちゃんとわかってるよ、だから……私の気持ちに、いますぐ答えてくれなくてもいいから。……ううん、本当は答えてほしい。でも独り占めも出来ないから………これは、抜け駆け。私だけの、スタートダッシュ……ずるいことだよ。今からのキスで、楓太兄ぃが私だけを見てくれるようになれば……って、願ってる」


 その瞳は真剣そのものだった。

 見れば身体もぷるぷると震えている。それだけの想いで話してくれたのだろう。

 ……俺は、その覚悟にも似た告白を、無下には出来なかった。


「……一回、だけ、だぞ」

「! ふ、楓太兄ぃ……!」

「で、でも叶。いいか? 俺は……お前の気持ちに、今すぐは答えられない。俺の気持ちもどう動くかわからない、もしかしたら、叶とキスだけして……結局気持ちを受け入れなかった、なんて事になるかもしれない……ごめん、俺、相当酷いこと言ってる」


 それこそ本当に叶の事を想っているのなら、絶対にキスは拒否すべきなんだ。ちゃんと日を改めて、また叶と話し合いをする方が正しい事は明白だ。

 でも……そうはできなかった。

 叶の、断られたらどうしよう──そんな言葉が浮かび上がる顔を見てしまえば、俺にはもうどうしようもなかった。


「ありがと、楓太兄ぃ……」


 顔にかかる髪をかきあげて、叶は俺の──唇に近づく。


「絶対、意識してもらうから……」

「叶──」


 次の言葉は続かなかった。

 叶にそれを防がれてしまった──唇で。


「ん……」

(ぅ、あ……)


 ぷるぷるとした唇が重なる。

 鳥のように、ついばむような繊細なキス。

 時折漏れる吐息が熱く、俺の口内へ入り込む。生温かい酸素を交換しあっているようだった。

 それで終わり──と思っていたのは俺だけだった。


「っ……!?」


 歯と歯の間から、にゅるりと侵入してくる異物。それが叶の舌だとはすぐに気付いた。

 

「んっ、ふぅむ……」


 舌と舌が重なり合うだけだ。

 重なり合うだけなものか、これはもはや一種のテロだった。口内を侵略されてしまう。

 叶の唾液と混ざり合い、どちらがどちらの唾液かわからなくなる。何度か飲み込んだが、もうこの際それはどうでも良かった。


「ふはぁ……!」

「はぁっ、はっ、か、叶……」


 口元を拭っている。

 まだ、あの感覚が口の中に残留している。忘れたくても、忘れようと思ってもあの感覚は一生、忘れられそうにもない。

 ボッー……としている頭で何も考えられていない俺に、叶は口元をパジャマで隠し、照れながら言った。


「えへへ……あげちゃった、ファーストキス」


 それはあまりにも、過激すぎる初めてだった。 

 

★★★


『えへへ……あげちゃった、ファーストキス』


 その言葉は確かに、楓太さんと一緒に眠る叶から発せられた。


(あ、あ、あ、アイツぅぅぅ……!)


 アタシは──悔しさと、でも怒るには理不尽だよなという歯がゆさに悶えていた。

 聞き耳を立てていたわけじゃないが、聞こえたものは仕方ない、だがその内容はアタシをひどく惑わせた。


(叶も楓太さんのこと好きで……しかもキスまで……)


 だけど、アタシは何も言えない。

 叶が楓太さんのことを好きになるのは自由だし、今回のような状況に持っていき、半端ない先手を打ったのは、アイツの作戦勝ちかもしれないから。


 だからといって、このまま引き下がるわけにはいかない。

 むしろ、逆だ。ここでなにも行動を起こさなければ、楓太さんが叶を選んでしまう。


「……やるっきゃねぇ」


 告白が、なんだ。

 キスが、なんだ。


 アタシだって──やってやる。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます。

よろしければ、感想や評価★★★★★もお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] アキラのイメージがどうしてもキルラキルの纏流子(ノ∀`)
[良い点] アキラがんばれ!
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