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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
春夏終わって秋冬編
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ずっと我慢してた、だって私は。

「ふー……」


 長い息を吐きながら帰ってきた叶と、付添の真奈美さん。

 二人は三者面談へ行っていた。内容は受験に向けての話し合いと、志望校の決定。

 叶はもちろん、以前話してくれた時から変わらず志望校はアキラの通う西条高校だ。


 担任の先生曰く、成績については特に問題もなく内申点も申し分ないほど、らしいが。

 ただ一つ、注意されていることがあるらしい。


「喧嘩はするなって」

「そりゃあそうだ」


 基本的に、叶が喧嘩する時は対多数との事がほとんどらしく、先生たちもそれが理由で問題児扱いするのも違うだろうと思っているらしい。

 そもそも叶から喧嘩を売る事もないから、自己防衛と言えば聞こえはいいのだろうか。


「まぁ、ここまできたらあとは問題なく、受験の日を迎えればいいんじゃないか?」

「うん! もうあと少しだなぁ……」

 

 叶もどこかほっとしたような顔をしている。 

 ある程度の目安がわかると、やはり安心できるのだろう。

 一番最初に訪れる、競い合いの世界。

 誰かが受かる裏で、かならず誰かが不合格。先輩面をするわけじゃないけれど、あの緊張感はやはり特別なものだ。


 努力をしなければ報われない世界だ。

 だが叶なら心配ないだろう、努力をしている姿は間違いなく俺たちは見ていた。


「よしよし、頑張ってるな叶」

「えへへ……」


 頭を撫でてやると嬉しそうに向こうからすりすりと手にあたってくる。

 

「ねぇ楓太兄ぃ。私、頑張ってるご褒美が欲しいな」

「お、なんだ? 俺に出来ることならなんでも言ってみな」

「いいの? ……なら、今夜は楓太兄ぃと二人だけで寝たいな」


 一瞬アキラの眉間にシワが寄ったが、すぐに「まぁ今日くらいは……」と元に戻る。

 真奈美さんも、ソレについては特に何も言わない。

 

 ──というのも、既に話はついている。

 俺が皆と一緒に寝ることについては。

 真奈美さんが考えるには、皆、ただ甘えたいのだろうと。

 真奈美さんは仕事で忙しく、峰十郎さんもたまに帰ってくる程度。思い切り甘えられる人が、今までいなかった3姉妹達のそういう物を刺激してしまったのかもしれないと。


 要は皆、俺に対して何かしらの感情は持ちつつも、それとは別に甘えたいんじゃないのか……と。

 俺としてもそれは構わなかったし、それで皆がリラックス出来るなら俺もその気持ちに応えたい。


「いいぞ。今までがんばってたもんな。それくらいお安い御用だ」


★★★


 お安い御用と言った手前、全然平気、平常心ですと時分に言い聞かせる。

 愛花とアキラとはふたりきりで眠ったことはあるけれど、叶とは初めてだ。四人で眠ったときは胸の中に潜り込んできていたが、さて……。


「おじゃましま〜す」

「うぉ……」


 今回も俺の胸に抱きついてきた。頬を擦りつけてきてまるで子猫がじゃれついているようだった。

 

「ね、楓太兄ぃ。いま頭撫でて?」

「お、おう」


 言われるがままに、俺は叶の頭を撫でる。

 すると「ん〜♡」と甘い声を出してさらにぎゅっと胸に顔を埋める。


「……叶?」

「やっぱり、楓太兄ぃにこういう事されると……ドキドキしちゃう」


 上目遣いの視線が、いつもよりも熱を帯びていた。

 普段とは違う、物腰落ち着いた声色と、子供じゃない表情。

 明らかに、いつもの叶じゃない。


「叶、お前……って!?」

「ほら、楓太兄ぃ、わかる? 私こんなにドキドキしてるんだよ?」


 手を掴まれて、胸に押し当てられる。

 一瞬で鼓動が早くなる。手のひらに力を込められない、せめて握ったり揉んだりしてしまう事は避けないと……!


 しかし、確かにその()()()は凄まじかった。


「え……」


 俺も大概だと思っていたが……叶の心音は比にならなかった。


「か、叶」

「本当はね、ずっと前から……こんな気持ち、覚えてたの」


 胸に押し当てた俺の手を離し……自身の手のひらと合わせ、指を絡ませる──俗に言う恋人繋ぎという奴だった。


 なんだ、本当に何が起きている。 

 ほんの少し前まで、いつもの幼くて、純粋活発な女の子だったはずの叶が、今は。

 明確な()()を放っている。


「でも、ずっと我慢してた。私は末っ子だし、受験生だから、勉強しないとって……でも、今日は楓太兄ぃがご褒美をくれるって言ったから、私もう我慢しなくても、いいのかなって」

「ご褒美……い、今がそうじゃないのか?」

「……もう一個くらい、叶えてほしいな」


 あざとくおねだりをしてくる。

 一緒に寝る事が、1つ目のご褒美。だとしたら、あともう一つのご褒美というのは。

 

「私も、もしそれをしたときに。どう気持ちが動くのかで自分に確認したいから……楓太兄ぃ、おねがい」


 それは。

 してしまえば、もうただの同居人ではいられなくなる行為だった。


「キスしてよ、楓太兄ぃ」

一番惚れやすそうですからね、叶が。

今回もここまでお読みいただきありがとうございます!


近々、男子高校生×OLお姉さんの短編を投稿します。投稿したときは後書きにURLとか堂々と載せるので、その時はぜひ読んでみてほしいです。

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