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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
春夏終わって秋冬編
52/134

天国って案外身近にあるもの。

 

 どうしてこうなった、と俺はもう何度目かわからないその言葉を疑問符マシマシで心の内で唱えた。

 本当に何度も言っている気がするが、一体前世で何をすれば、平凡な男でしかなかった俺がこんな美少女二人と同じ布団で眠れるのか。


 その実、正直嬉しいと思ってしまう。

 女の子との距離感の測り方がわからないなんて悩んでいるような素振りを見せたが、だめだと思いつつもどうしても悪い気分には決してならない意志の弱さに少しばかりの嫌気が差したが……。

 

「おい愛花、もうちょっとそっちつめろよ……」

「これ以上はだめだ、もうギリギリなんだ」

「……やっぱり布団別々にしようか?」

「いや、大丈夫すよ。……こうやって、もうちょっと、く、くっつけば……」


 さらにアキラの体温が伝わる。

 昨日までは腕だったけれど、今日は腰にまで手が回り、もはや俺自身が抱きまくらのようになっていた。

 それに感化された愛花も反対側から腰まで抱きついてくる。

 俺は……腕を胸の前で組んでいた。そうしないと胸にあたりそうだったから。


(というか本当に……訳わからんな……)


 もう心臓の鼓動が激しすぎて両隣にまで聞こえていないか心配だった。

 もう夏も過ぎたというのに、俺の身体は火照っていた。

 ムシムシというか、悶々というか、ムラムラ──


(ふぐぅぅぅぅっ……!)


 頬の内側を思い切り噛む。

 馬鹿、馬鹿野郎! 何を考えているんだ俺は。

 この二人がどうして俺と眠れるかわかるか? 俺は自分に問いかける。そんなもの決まっている、俺を信用してくれているからだ。

 それなのに俺が変な気を起こすなんて最低だぞ!  


(そうだ、俺は仏。お釈迦様)


 開こう悟りを。

 そうだ、これを当たり前にしてしまおう。

 アキラと愛花と眠ることを特別なことじゃなく当たり前なことに。そうすれば、いつしか俺だって動揺せずに慣れていけるはずだ。

  

(よし、クールになれ宮下楓太……)


 ようやく意識も落ち着いてきた。なんとか眠れそうだと瞼の裏側の光が気にならなくなってきた頃。

 寝室のドアがゆっくりと開いた。


「え……?」


 誰だ──俺は目を開きその主を確かめた。

 

「……愛花姉ぇとアキ姉ぇだけ、ずるい」

 

 そこには、パジャマ姿でぷくっと頬を膨らませる3姉妹の末っ子……叶が立っていた。


「私も一緒に寝る!」

「か、叶、もうスペースがうひゃぁっ!?」


 足元から布団の中へ潜り込んできて、俺の胸元に現れる叶。目と鼻の先の叶は「にへへ」と笑い真正面から抱きしめてくる。


「か、叶」


 胸が──とは言えなかった。変な空気になりそうだったから。もう腕の逃げ場がなかったから、叶の背に腕が。


「ぁっ、いいな……」

「え?」

 

 さすがにこの距離じゃ聞こえないなんてことはない。今たしかに、いいなってアキラが呟いたような……。


「んふー、アキ姉ぇ羨ましい? でもだめー、今日は私! 明日は交代ね」

「き、今日はって……」


 そんな交代制みたいな。

 それにそれだと、明日俺の上にくるのはアキラって事に……。


「アキ姉ぇって結構甘えたがり屋さんだから、抱きしめてあげたらもう溶けちゃうかもよ?」

「ばかっ、叶お前本当にやめろ……!」

「お前達、あまり騒ぐな。もう夜も遅いんだから」


 もう俺は眠れる気はしなかった。これも何度目かわからない。でもこれだけは言える、何が起ころうとも強く。


 天国と言うのは、生きていても到達できる場所にあったのだと。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

明日は17時投稿になります!


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