なんで何もしてくれなかったんすか。
叶の出番はもう少しお待ちを。
長編もまだ少し先ですが、個人回的なものがこの後に。
目を覚まして、時間を確認するともう九時だった。一瞬ドキリとしたが、今日は土曜日。アキラたちも休みだ。
だけど俺はいろいろとやらなければならない。確か真奈美さんも仕事が休みだったはずだから、洗濯物は干してくれているだろうが、シンプルに寝過ぎてしまった。
そろそろ活動を始めないと。そう思い俺は起き上がろうとしたが、左腕にくっつくアキラの事を忘れていた。
よほどぐっすり眠れたのか、開いた口から少し涎が垂れていた。乾いて跡になる前に指でぬぐってやる。さて起こすのが少し可哀想な気もするが、休みだからっていつまでもお寝坊もだめだ。
「アキラ、朝だぞ。そろそろ起きよう」
「ぅぅん……」
案の定素直に起きてはくれない。まだ眠ると言わんばかりに俺の腕にさらに強くしがみつく。
どうにかこの手を離さないと俺も何も出来ない。なんとか起きてもらわないと……。
「アキラ〜、はやく起きてくれ〜……?」
肩をポンポンと叩くがそんな程度じゃアキラは微塵も目を覚ます素振りを見せない。多少強引にでも起こすことにした。
右手をついて、アキラ毎起き上がる。これでアキラも起き上がるし、さすがに寝てはいられないだろう。
だが……。
「さ、アキラ、そろそろ本当に、うおっ!?」
寝ていると思っていたアキラが突然機敏な動きを見せ、俺を押し倒し馬乗りに。突然のことに理解が追いつかず、頭の中に大量のクエスチョンマークが浮かび上がる。
そんな俺を置いて、アキラは大層不機嫌そうな顔だった。
「……楓太さんって、本当に鈍感すよね」
「え、何、何の話だ……?」
本当に訳がわからず、脊髄反射的にそう答えた。するとアキラはさらに面白くなさそうに眉を歪ませる。
「なんで何もしないんすか……」
「な、何もって……何言ってるんだ、何もするわけ無いだろ」
それを聞くと今度こそ、怒った、という顔で俺の両手首を身動きが取れないように掴まれてしまった。
抵抗しようにも、アキラのパワーに敵うわけもなく。
「いっすよ、もう。アタシもアタシで、やろうと思えば……!」
ゆっくりとアキラの顔が近付いてくる。
「あっ、アキラ!? まだ寝ぼけてるんだよな! 早く起きてくれっー!」
「……ばか」
もうアキラの吐息が鼻に触れる、そんな距離にまで来たときだった。
乱入というか、助けの手というか。
「おい、朝から何を騒いでいるんだ。二人とも……」
部屋のドアが開き、そこには先に起床していた愛花がいた。
そして俺たち──厳密には、俺の上に馬乗りのアキラを見て目を細める。
「ふむ……」
「ま、愛花……なんだよ」
腕を組み、何かを想う愛花は独り言のように語りだす。
「いや……なんだろうな。私としては、特にお前たちがどんな事をしていようと別に構いはしないが。気にはしないんだが。何故だろうな……」
スッ……と。
予め用意していないと無理だろうという空間から、木刀を取り出した。
「──本当に理由はわからないんだがな。いま、私はものすごくご立腹だ」
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