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居候高校生、主夫になる〜娘3人は最強番長でした〜  作者: 蓮田ユーマ
『羅生門』VS愛花編
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もう離さない、絶対に。(物理)

ランキングに少し戻ってきました!ありがとうございます!

 楓太が目を覚ましたのは、手術が施された翌日だった。

 腹部がまだ痛むと、どうやら生き残ったらしいという安堵と、あれから何が起きたのかという疑問。


 だがまぁ、それはそれだ。


「あれ……」


 楓太のベッドの周り──右手側には愛花。左手側にはアキラと叶が、楓太のそれぞれの手を握りながら眠っていた。

 眠っていた、というより寝落ちしてしまっているという方が正しいか。

 後にわかることだが、愛花たちは楓太が目覚めるまでここにいたわけではない。当然自宅に帰されるわけだが、自宅に帰ったところで眠れるわけもなく。それは愛花から事の一部始終を聞かされたアキラと叶も同じだった。


 部屋に入る事ができる時間になれば、全員すぐさま向かった。だがそこで、穏やかな寝顔の楓太を見て、張り詰めていた集中の糸が切れてしまったのか、一気に睡魔が3姉妹を襲った。その結果、楓太の両手を握りしめて眠りこけてしまったわけだが。


「……また心配かけちまったな」


 まだまだ暑い日差しが病室に差し込む。

 その眩しさに目を閉じる。両手に伝わる三人の体温が心地よく、そのまままた眠ってしまいそうだったが、新たな来訪者がやってきた。


「楓太くん、良かった……! 目が覚めたのね……」 

 

 八月朔日家の母、真奈美。長い出張が終わりついに帰ってきたわけだが、早々に彼女の胃を痛めつけてしまった。

 

「真奈美さん、……なんというか、久しぶりです」

「……私はもう、正直なところなんて言えば良いかわからないけど……とにかく、無事で良かった」


 愛花からの連絡を聞き真奈美も心底肝を冷やした。

 友人から預かった子どもが、死の間際にいたのだから。


「愛花たちも、すごく心配してて……それは伝わってそうね」


 楓太の側で眠る娘たちがそれを物語っていた。

 一先、楓太たちは日常を取り戻した。

 はやく、何事もなく退院していつものように生活できるようになればいいなと楓太は心から願った。


★★★


 一方その頃、御剣恭弥はというと。


「そうか、あいつらそんなせこい真似してやがったのか……」


 羅生門の残党をとっ捕まえ、あの日の作戦を聞き出した。

 花谷が人質を取っていたこと、そして愛花はそれを知りつつ真正面から向かってきたことを。


「やっぱり属したらダメだな、俺は一匹狼が一番楽だ」


 煙草の煙が傷口に染みる。

 その痛みが、敗北の痛みだと思い知る。


「また喧嘩してみてぇなぁ」


 後日、案外ソレは簡単に叶うのだが、少し先の話である。

  


★★★


 そしてそれからしばらくが経ち、楓太の退院日がやってきた。

 何も問題はなく……というわけにもいかなかったが。

 左手の人差し指の感覚がかなり鈍くなっていた。日常生活に支障はないが、その違和感に楓太もまだ慣れてはいない。

 


「おい、愛花……そんなにひっつく必要もねぇんじゃねぇのか?」

「ダメだ。転んで怪我でもしたらどうする」


 ひっつく、というほど大げさでもないが、愛花は楓太の手を握り先導していた。

 

「ま、愛花、大丈夫だよ。普通に歩けるから」

「ダメだ! このまま帰る!」


 ぎゅっと更に強く握る。絶対に離すつもりはないとでも言わんばかりに。


「だっ……だったらアタシだって……!」

「あっ、アキラ!?」


 手を握るどころか腕を組んで楓太にくっつく。それを見ていた叶が面白がって「私もー!」とはしゃぎながら楓太の胴に抱きついた。


「お、おいおい……! もう逆に歩きにくいぞ3人とも……!」

  

 まだ暑さが残る9月。  

 なにはともあれ、また新しい季節がやってくる。


「楓太、何が起ころうと私が護るからな」

「……あぁ、ありがとう。愛花」

  

 これ以上ないほどに頼もしい言葉だった。

 楓太はその言葉を素直に受け取り礼を言った、のだが。


「──これからは風呂場で転んだりしないよう毎日一緒に入るぞ」

「へ?」

「アァ!?」


 楓太とアキラが驚いた声をあげても愛花は何食わぬ顔でさらに続ける。


「眠るときもそうだ、何かがあったときのために毎日一緒の部屋で寝るぞ。いや、これから冷える時期もやってくるし、いざ敵襲が来たとしてとすぐに対応できるように、同じ布団で寝よう。それがいい」


「いいっ、わけっ、あるかぁっー!!!」

 

 アキラの怒号が近所中に響き渡る──だが、そこは姉妹としての、長女としての圧や、文字通りの力の差で黙らせてしまい、風呂も睡眠時の約束も全て実行されることになるのだが……それは、その日の夜からだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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