僕らの一日だけの戦争 Part2
「楓太、怪我が治ったからってそんなにいろいろとしなくてもいいんだぞ?」
「いやいいんだよ、動けるなら動いていたほうが落ち着くからさ」
骨折も治った楓太は本格的に家事を再開した。姉妹たちに心配されながらも、まるで何かを紛らわせるように掃除に洗濯に勤しんだ。
「何かあればすぐに言ってくれよ? なんでも手伝うからな」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
気遣いも少しだけ、何かを勘ぐってしまう。本当に善意からの物なのはわかっているのだけれど、いかんせん小心者ゆえなかなか気持ちよく受け取れない。
「よし、なら買い物は私が行ってこよう。その間に楓太も家のことが出来るだろう?」
「そうだな、じゃあお願いできるか?」
「任せてくれ」
楓太から今夜夕食に使う食材のメモと、必要な分のお金を貰いスーパーへ向かう。
夏休みももう終わり、二学期が始まっている愛花たち。叶は受験勉強、アキラはまた何か不良たちに絡まれているらしい。
平凡なスタートを切ったのは、愛花だけだった。
「さて、今夜は……」
もらったメモに目を通す。
キャベツに玉ねぎ、シチューの元。他にもいろいろとあるが、最後に短い文章があった。
『なにか一つ、愛花の好きなアイスを買ってきていいよ』
お駄賃のようなものか、お使いに行ってくれた愛花にそんなご褒美。些細なものかもしれないが、愛花の口角は少し上がった。
甘い物が大好きな愛花には十分なご褒美だった。
「何にしようか……」
早速どれにしようかを迷っていた。ある意味姉妹の中で誰よりも子供っぽいのかもしれない。
最終的に選んだものは、定番のチョコでモナカなバニラアイス。
頼まれた物を全て買い揃えて、愛花はアイスが溶ける前に早く帰ろうと店を出た。
しかしそんな愛花の足を止める者が現れた。
「八月朔日愛花だな」
「そうだが。なんだ、お前たちは」
三人組のいかにもガラが悪い男たち。
「俺達は『羅生門』。我らが花谷武尊が仕切るチームだ……今日はおまえに話があってやってきた」
「手短にしてくれ、アイスが溶ける」
そう言って手に持つ買い物袋を胸の位置まで持ち上げる。
「八月朔日愛花、『羅生門』に入れ。俺達のリーダーはお前を欲しがっている」
「そうか。だが断ろう、わざわざ出向いてくれたが、悪かったな」
当然断るが、早々に立ち去ろうとした愛花を素直に帰すわけもなく、愛花の肩を掴んで引き止めた。
「お前、拒否権があると思ってんのか?」
「……お前たち、いいんだな? お前たちから仕掛けてきたんだからな」
「あ? お前なにいっぃ……」
「あ!?」
瞬速。
乾いた音が響いたかと思えば、肩を掴んでいた男はコンクリートに倒れていた。
「目が覚めたら、その花谷とかいう奴に言っておくんだな。誰かは知らないが、お前のチームには絶対に入らないと」
その言葉を最後に、残りの二人も意識を飛ばされる。
だがこの一件が、さらなる騒動を引き起こす事になるとは、愛花は想像していなかった。
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