僕らの一日だけの戦争 Part1
求めているものでは無い気がしますが、書きたいものを書こうと思います。というわけで愛花編です。
ここにうなだれている男の子が一人。
それは宮下楓太。
骨折も回復し、ギプスが外れて一人で買い物へ向かって帰る途中だが、未だに彼の心は晴れていない。
数週間前、楓太は共に生活をする愛花、アキラ、叶に己の半身とも言える──息子ともいうのか──存在を確認されてしまった。
事故とは言えやはり年頃の男子にとっては、恥ずかしくてたまらない。それ以来3姉妹たちもどこかよそよそしい。
それは決して楓太に対して何かを思っているわけではなくて、むしろ普通に接したいと思っているのだが。
「はぁ〜……」
この男、本当にいつまでも引きずっているのである。
あれは悪い事故だったと、笑い話に変えてしまえばいいのだが、そうもいかないのかもしれない。
確かに、そのような事故は相手の女の子もトラウマになるかもしれない。今回に限ってはそれはないのだけれど、楓太の性格的に、それがありえるかもしれないと考えていた。
「やっぱりあんなのはまずかったよなぁ……」
なにを考えたところで全てはたらればなのだが、そうも簡単に吹っ切れないのは人間らしい。と言うよりも子どもらしい。
「はぁ……」
そうして下ばかり見て歩いていれば、人にぶつかったって当たり前だった。
「あっ、すいませ……」
ん、と続けようとしたがその前に怒号が飛んできた。
「アァァん!? テメェ兄貴になにしてくれてんだ!?」
「兄貴が怪我したらどーすんだよオイ!」
よりにもよって不良たちと出会してしまった。
ぶつかってしまった人物の取り巻き二人が唾が飛ばそうな勢いで捲し立てる。
終わった、と頭を抱えかけたのだが。
「やめやめ、お前ら。そんなに怒鳴ってどうすんのよ」
その、ぶつかってしまった当の本人は落ち着いた様子の男だった。
黒いオールバックの威圧感はなかなかだが、その顔には怒りやそういうものは感じられなかった。
「兄ちゃんごめんなぁ、こいつらパチンコで負けてイライラしてるだけなんよ。許してやってくれ」
「あ、い、いえこっちこそ……」
逆に謝られている事に戸惑う楓太。どう考えても非があるとするならばこちらなのにと。
「はんっ、おまえ御剣さんに感謝しろよ、本当ならただじゃっ、いてててっ!?」
「だぁからいちいち威圧しようとするんじゃあないよ! このまま耳引きちぎるぞ!!」
取り巻きの耳を上に引っ張り、十分に威圧的な姿を見せつけられる。
「あぁ、悪いな兄ちゃん。気にせんでくれ、じゃあな〜」
「御剣さんっ、耳離してください〜っ!?」
そのまま耳をつかんだまま立ち去ってしまった御剣という名の男。
「な、なんだったんだ……」
★★★
「……で、花谷さん。この女がそんなにやばいんですか?」
「そうよ。私が思うに、この地域じゃ最強じゃないかしらねぇ……」
女性のような言葉遣いで話す、花谷と呼ばれた男はとある人物の写真を見ながらそのような評価をした。
彼は不良グループ『羅生門』のリーダー、花谷武尊。
羅生門は彼と、彼を守る3人の幹部がトップに立ち活動している。
「確かに俺もやばい話はきくけどよぉ、金田。噂に尾ひれがついているってことはねぇのか?」
「まぁ、花谷さんの目に間違いはないから、チームに入れることに異論はないけどな」
そう言って、名前に違わぬ金髪の金田は手元の写真を、共に幹部の小田切に手渡す。
「八月朔日愛花ねぇ……」
「なんや、誰の話ししてんの?」
3人目の幹部が現れる。それに気づいた花谷は集会に遅れてきたその男を咎める。
「遅いわよ御剣。どうしてあんたはそんなに時間にルーズなのよ」
「わり、パチンコ。勝ったからみんなで飯でも行こうや」
羅生門最強の幹部と呼ばれる男。
それが、御剣恭弥だ。
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