3人全員でも構わんぞ。
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「ふぅ……飲みな」
「い、いや未成年なんで……」
峰十郎さんとの対話が始まる。
さっきまでは、皆が居たから普通に話せていたが、やはりいざこの人を一人で相手にすると、その威圧感は凄まじい。その体から発せられる圧だけで、俺が潰されてしまいそうだ。
グラスに注いだ40度もあるウイスキーを一気に飲み干す。やはりお酒にも強いらしい、これで3本のウイスキーの瓶が空になった。
「さっきは悪かったな。気を悪くしたなら謝ろう」
「え?」
思いがけない言葉に俺は面食らった。それは俺が峰十郎さんがそういうことを律儀に謝るような人じゃない……と決めつけていたからなのだが。
更に言うなら、俺に頭を下げていた。
「い、いや俺は別に……」
大人に頭を下げられることに慣れていない俺はしどろもどろになる。それもよりによってこんな人に。
「真奈美にもよく言われる。俺は人に対して優しさが無いと」
峰十郎さんはどこか淋しげな表情をしている。昼間は化け物としか思えなかった峰十郎さんも、今だけは世間一般的な悩める父親のようだった。
峰十郎さんはそのまま続ける。懺悔のように。
「実を言うと、俺が家に帰らないのは強くなるためだけではない」
「……じゃあ、他にはなにが?」
「真奈美に追い出されたと言えばいいか……色んな人と会って勉強しろとな。あの時の真奈美はブチキレていた」
一体峰十郎さんが過去に何をしたのかはわからないが、だとしても真奈美さんがそんな事を? と俺は内心驚く。ほわほわとした人だから、そんな風に物を言うところを想像できないし、なによりこの人にそれだけの事を言えるとは。
だからこそ二人は結婚して子どもを授かっているのかもしれないが……。
「あいつらは、俺が一人で自由にしていると思っている事だろう。本当は、ただ追い出されているだけなんだがな」
最強を目指しているのに、妻には勝てねぇやとクツクツと喉で笑う。もしかしたら、真奈美さんと出会ってから一切峰十郎さんの話をしなかったのは、こういう理由があったからなのかもしれない。
峰十郎さんが家になかなか帰らない──帰れないが正しいか──理由もわかったが、俺は個人的に気になっていた疑問を投げかけてみた。
「峰十郎さん、俺気になることがあるんですけど……あの、愛花達は、どうしてあんなに強く育てたんですか?」
それに対して峰十郎さんは強く答えた。
「いざというとき、絶対に負けないようにだ」
「いざというとき?」
「俺も昔、それで後悔したことがあった。君も思い当たることがあるんじゃないか?」
そう言われて俺は自身の右腕が疼いた気がした。
「大切な誰かを守るために、金も権力も必要だろう。だがその時の俺に足りなかったものは、そんな大層なものじゃない。至ってシンプルな腕力だった」
その言葉は今の俺にもぐさりと刺さる。
「それが俺の始まりだった。……それと同時期に追い出されてしまったわけだ。これでは本末転倒だがな……」
「本末転倒……あぁ」
そういうことか。
峰十郎さんが守りたい人。
「峰十郎さん、真奈美さんのために強くなっているんですね」
「ふん……」
照れ隠しか、ぐいっとウイスキーを飲み干す。長い息を吐いたあと、「しかしなぁ」とぼやいた。
「側に居られないんじゃ、あまり意味はないがな」
「確かに、はははっ」
俺も峰十郎さんも笑った。
時刻は24時になろうかという頃だった。ここで新たな話題が飛び出す。
「娘たちも君をずいぶんと気に入っているようだな」
「仲良く、させてもらってます」
「ふふ……そうかそうか。……どうだ、誰か一人嫁にでももらうか?」
お茶を吹き出した。
「おいおい汚ねぇなぁ」
「い、いや……だって……」
突然そんなデリケートな話題を持ってくるものだから。
冗談でも答えにくい。返事もし辛い!
「なんなら3人全員でも構わんぞ」
「ここ日本ですから……」
だいたい、この手の話題を冗談で出されることは得意ではなかった。どうしても真面目に捉えてしまうから。
「ふっふっふっ、まあいい。俺は娘はおまえにはやらんとか、面倒なことは言わん。その気になったら、好きにすればいい」
「は、はぁ……」
豪快に笑う峰十郎さんにたじたじにされながら、俺たちは夜が更けるまで話し続けた。
その翌日、峰十郎さんはまた旅立っていった。その時に面倒なものを残していくのだけど……。
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